ロックアーティストの
テクニック向上に
大きな役割を果たした
『スーパー・セッション』

『SUPER SESSION』(’68)/MIKE BLOOMFIELD、AL KOOPER、STEVE STILLS

『SUPER SESSION』(’68)/MIKE BLOOMFIELD、AL KOOPER、STEVE STILLS

1968年にリリースされた本作『スーパー・セッション』こそ、ジャムセッションという概念をロック界に定着させた最初の作品であり、実際にジャムセッションを通して、後のロックアーティストたちの演奏技術が大幅にレベルアップすることになった。仕掛け人は天才アル・クーパー。これまで、このコーナーでは彼が関わった数枚のアルバムを取り上げてきたが、60年代後半から70年代中期にかけて彼がロック界に残した功績は非常に大きい。それまで歌のバックを務めることがメインであった楽器群にスポットを当て、各プレーヤーに演奏することの重要性に気付かせ、即興演奏や高い表現力を求めることになった。本作の存在によって、ロックの進化の方向性が決まったと言っても過言ではない。ロック史に残る最も重要なアルバムのひとつだろう。

ジャムセッションについて

70年代には、すでにロック界でもジャムセッションは普通に使われる言葉になっていたが、60年代後半までこの言葉はジャズの専門用語であり、ロック界で使われることはあまりなかった。ロックのアーティストたちはオリジナルの楽曲を演奏することが多く、即興で合わせることには向かなかったのだ。また、所属するレーベル(レコード会社)やグループの枠を超えて他者と演奏することが少なかったこともジャムセッションが広まらない要因であった。

一方、ジャズ界はオリジナル曲にさほど重きを置かず、誰もが知るスタンダードナンバーをアーティストなりに如何にアレンジするかのほうが重要であった。何より名演を生み出すこと、これこそがジャズアーティストにとって最大の命題である。有名なところではミントンズ・プレイハウスのアフターアワーズ・セッションがある。仕事で組んでいるグループとは違ったメンバーと、楽器のテクニックを磨いたり、新たな表現法を生み出したりするために、毎夜セッションが繰り広げられていた。それまでリズム楽器でしかなかったギターをサックスやピアノのようにソロを弾くことで新たな可能性を見出した天才ギタリストのチャーリー・クリスチャン、変わったコード進行の名曲を数々生み出したセロニアス・モンク、モダンジャズの父のひとりディジー・ガレスピーらが、毎夜のようにジャムセッションで名演をものにしており、それらの一部はライヴ盤の『ミントンハウスのチャーリー・クリスチャン』(‘41)に収録されている。クリスチャンはフランスのジャンゴ・ラインハルトやレス・ポールと並んでギター界の巨人であるが、1942年に25歳という若さで亡くなっている。

OKMusic編集部

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