オジーが永遠の盟友とともに描いたH
M/HRの決定盤『ブリザード・オブ・オ
ズ~血塗られた英雄伝説』

 この秋、ヘヴィミュージックの祭典、『OZZFEST』が再び日本にやってくる。1996年から全米各地やヨーロッパで開催、2013年には初の日本公演が2日間に渡って開催されたことも記憶に新しい。その主宰であるオジー・オズボーンは、かつては「生きた鳩の頭を食いちぎった」「ステージ上で生きたコウモリの頭を食いちぎり入院した」といった奇人変人的なイメージばかりが先行したが、近年は『オズボーンズ』でのコミカルなキャラクターで一般層にも親しまれている。本稿で取り上げるのは、そんな彼のソロデビューアルバムにして代表作である『ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説』。ヘヴィメタル/ハードロック史上、5本指に入るであろう名盤だ。

 1979年、ブラック・サバスというスーパーグループを追われるように脱退したオジーは、一時は引退を決意するも、ほどなくして新バンド結成へと動いた。当初バンドは“ザ・ブリザード・オブ・オズ”と名付けられたが、後にレコード会社の意向によって、“オジー・オズボーン”へ。そのラインナップは元レインボーのボブ・デイズリー(ベース)、元ユーライア・ヒープのリー・カースレイク(ドラムス)、そして新人ギタリスト、ランディ・ローズという顔ぶれ。ボブとリーはシーンにおいてすでに実績のある知られた存在で、スターバンドのフロントマンであったオジーをバックアップするメンバーとして申し分ない顔ぶれだ。そんな中、ランディの存在は異色だった。オジーがアメリカで行なったオーディションでそのプレイに一目惚れし、即決。この大抜擢はオジーの後のキャリアばかりでなく、その後のヘヴィメタル/ハードロックの歴史における重要な道筋を描くこととなる。
 “捨て曲なし”とは、このようなアルバムのことを言うのだろう。シンプルなリフでグイグイ引っ張る「アイ・ドント・ノウ」、リフの疾走感が小気味良い「クレイジー・トレイン」、ブラック・サバスのメンバーへの決別のメッセージを綴った泣きのメロディーが心に染みる「グッバイ・トゥ・ロマンス」、ランディのクラシカルな側面が出た短編ギターインスト「ディー」、サバス時代のヘヴィネスを彷彿させる「スーサイド・ソリューション」、荘厳なイントロからミステリアスな哀愁へと導く「ミスター・クロウリー」、アルバム随一のブライトなロックンロール「ノー・ボーン・ムーヴィース」、悲哀と破壊のメロディーが壮大なドラマを描く「レヴェレイション(マザー・アース)」、そして一転して爽快なロックへと転じアルバム終盤を飾る「スティール・アウェイ(ザ・ナイト)」。
 少年時代の筆者が本作に抱いた第一印象は「オジーっていうから、もっとおどろおどろしい曲ばかりかと思った」であった。曲調はさまざまだが、いずれの曲においても良質なメロディーが冴え渡っている。作曲にまつわる正確なクレジットには議論の余地があるが、ランディの貢献が大きかったことは明白だ。その後のヘヴィメタルのテンプレートとなったと言えるリフのスタイルや、ネオクラシカルなメロディーを用いたギターソロは、まさにヘヴィメタルの新時代の幕開けを象徴するものであった。
 彗星のようにシーンに姿を現したギターヒーローは、本作リリースのわずか1年半後、小型飛行機の墜落事故によって、25歳というあまりにも短すぎる生涯を終える。ランディがオジーとともに世に送り出したアルバムは、本作を含めわずか2枚。まさに“これから”のタイミングだったのだ。
 33年という月日は、人々からランディの存在を消え去らせるどころか、いっそう強烈に輝かせるばかりだ。オジーは現在でもランディの存在が彼にどれほど大きな影響を与え続けているかをことあるごとに語っている。その後も数々の才能あるギタリストに恵まれたオジーだが、ランディの存在は永久欠番なのだ。

著者:金澤隆志

OKMusic編集部

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