ロックの進化にも
多大な貢献を果たした
キング・カーティスの
『ライヴ・アット・
フィルモア・ウエスト』

『LIVE AT FILLMORE WEST』(’71)/King Curtis

『LIVE AT FILLMORE WEST』(’71)/King Curtis

ロバート・ジョンソン、マディ・ウォーターズ、ジェームズ・ブラウン、マイルス・デイヴィスなど、ロックの進化に多大な影響を与えた黒人アーティストは星の数ほどいるが、キング・カーティスも大きな影響をロックに与えた人物のひとりだ。中でも、彼のバックバンドで知られるキングピンズが繰り出すグルーブは、ロックにおけるリズムの可能性を広げることになった。彼らのプレイは現在の若いアーティストにも影響を与え続けている。そんなわけで今回はキング・カーティスが71年にリリースした『ライヴ・アット・フィルモア・ウエスト』を取り上げる。特に本作に収録されている「Memphis Soul Stew」は50年近く経った今でも全く古びておらず、いつ聴いても鳥肌が立つ名演中の名演だ。

音楽のいろいろな聴き方

音楽を聴いていると、その時の感情によって受け取り方が変化する。喜怒哀楽など、その時に置かれた状態で、聴きたい曲が変わったりするものだ。音楽はかなり抽象的なメディアでもあるから、リスナーそれぞれがどんな受け取り方をしても自由である。僕の場合はジャンルを問わずに聴くタイプなので、怒っている時にはハードロックが、焦っている時などはフリージャズが無性に聴きたくなる。また、気分に余裕がある時には、コーヒーを飲みながらシンガーソングライター系の優しい曲が聴きたくなったりする。

逆に、どんな時でもと言うか、心の状態に関係なくいつでも受け入れられる曲もある。よく知られている曲を思いつくまま挙げてみると、カーリー・サイモン「You’re So Vein」、アレサ・フランクリン「Baby, Baby, Baby」、スージー・ボガス「Someday Soon」、キャロル・キング「It’s Too Late」、ジャクソン・ブラウン「Rock Me On The Water」、バッド・フィンガー「No Matter What」などがある。

もうひとつのタイプとしては、そんなに数は多くないが、いつ聴いても何度聴いても鳥肌が立つほど感動する曲である。ここにはタワー・オブ・パワー「What Is Hip」、ジェームズ・ブラッド・ウルマー「Black Rock」、リトル・フィート「Dixie Chicken」、ベック・ボガート&アピス「Superstition」、レッド・ツェッペリン「Whole Lotta Love」、イエス「Round About」、クルセイダーズの「Spiral」、そして、このタイプにキング・カーティスの代表作として知られる本作『ライヴ・アット・フィルモア・ウエスト』に収録された「Memphis Soul Stew」も入る。

良い曲だと感じるのか、すごい曲だと感じるのかは、もちろん人によって違うだろうが。僕にとってはメロディーが良い曲と演奏が良い(すごい)曲に分かれるようだ。よく考えてみると、鳥肌モノのほうはベースとドラムを担当するミュージシャンがどちらも抜きん出た存在であることと、グループのコンビネーションが素晴らしいものばかりである。

OKMusic編集部

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