トム・ジョンストンの
パワーが炸裂する
ドゥービーブラザーズの
『キャプテン・アンド・ミー』
スリーマイル島の原発事故と
ノー・ニュークス
(ミューズ・コンサート)
中でも、俳優やミュージシャンたちは熱心に反核・反原発運動を展開し、さまざまなイベントを繰り広げていた。アメリカ西海岸を中心に活動するミュージシャンたちが集結した『ノー・ニュークス(ミューズ・コンサート)』は、スリーマイル島の事故からわずか半年後にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催されることになる。1979年9月19日から5日間にわたって行われたこのコンサートは、ドゥービーブラザーズ、ジャクソン・ブラウン、ボニー・レイット、CS&N、ニコレット・ラーソン、ジェシ・コリン・ヤング、ジョン・ホール(オーリアンズ)、ポコといったウエストコーストロックを代表するアーティストのほか、ブルース・スプリングスティーン、ライ・クーダー、ジェームス・テイラー、カーリー・サイモン、チャカ・カーン、ギル・スコット・ヘロン、レイディオ、スイート・ハニー・イン・ザ・ロックなどの大物アーティストが参加した強力なイベントとなり、同年末に早くもリリースされたアルバムは3枚組のボリュームとなった。
余談だが、このレコードについていたブックレットには、原発の危険性についてはもちろん、原発施設の安全規則違反を訴えたカレン・シルクウッドが謎の交通事故死を遂げたシルクウッド事件(83年に映画化されている)にも触れており、当時興味深く読んだものである。
さて、このコンサートでオープニングとエンディングを務めたのがドゥービーブラザーズで、インターネットのない時代の日本人にとって、この時期の彼らがいかにビッグアーティストであったか、このアルバムのおかげで認識できたのだ。この時期のドゥービーブラザーズはマイク・マクドナルドがリーダーであり、いわゆるウエストコーストロックのバンドではなく、AOR寄りのアダルトグループに変わってしまっていただけに、トム・ジョンストンがリーダーシップを発揮していたかつてのドゥービーブラザーズを愛する者にとっては残念に感じたものだ。
では、ウエストコーストロック時代のドゥービーブラザーズとはどんなグループであっただろうか。