ブリットポップ・ブームを巻き起こし
たブラーの代表作『パークライフ』

1994年にリリースされた当時、街を歩きながら、電車に乗りながら何回もリピートして聴いたのがイギリスのバンド、ブラーの3rdアルバム『パークライフ』である。このアルバムは全英1位の大ヒット&ロングセラーを記録。のちの“ブリットポップ・ムーヴメント”を巻き起こすトリガーとなった本作は“ブリットポップの金字塔”という高い評価を受けることになる。ブレイク後にオアシスとの対決論争が巻きおこるのは、あまりにも有名なエピソード。洋楽雑誌にしょっちゅう特集が組まれていたが、その一挙一動が気になるほど両バンドが注目を集めていたということだろう。そして『パークライフ』はあれから20年以上の歳月がたった今、聴いてもポップでウィットに富んでいて英国臭さがプンプンする中毒性の高いアルバムであることに変わりはない。

停滞していた英国のロックシーンに風穴
を開けたブラー

 1990年にロンドンで結成されたブラーのメンバーはデーモン・アルバーン(Vo&Gu&Key)、グレアム・コクソン(G&u Vo、Sax)、アレックス・ジェームス(Ba)、デイヴ・ロウントゥリー(Dr、Per )の4人。デビュー当時から“新世代による新世代ポップ”、“ザ・スミス以来の期待のバンド”とメディアから高い評価を得るもののブレイクには至らず、ヴォーカルのデーモンのキュートなルックスのイメージや育ちの良さを感じさせる佇まいもあって、アイドルバンドとして見られることも多かったように思う。1991年にリリースしたニルヴァーナの『NEVER MIND』が空前の大ヒットを記録したアメリカの音楽シーンはグランジブームで盛り上がりに盛り上がっていたが、イギリスのシーンは鳴かず飛ばず。そんな中で、あえてイギリスのロック、ポップスの持つ魅力や特質にこだわったのがブラーというバンドである。1993年にリリースした2ndアルバム『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ』はブリティッシュロック、ニューウェイブの影響を濃厚に感じさせる作品で、英国人気質全開のシニカルな歌詞とひとひねりあるサウンドでバンドのアイデンティティーを明確に打ち出す。先ほども触れたオアシスとの争いは、“よお!ニイちゃん!的なノリの労働者階級出身のオアシスと知らない人には気軽に話しかけられない(実際には知らないが)シャイな中産階級出身のブラーという社会の構図があって生まれたものだが、“永遠の学生バンド”的イメージだったブラーは歴史を振り返るとイギリスの音楽シーンに風穴を開けた挑戦者でもあったのである。ちなみに『パークライフ』がリリースされた1994年にオアシスは1stアルバム『オアシス』(原題/DEFINITELY MAYBE)をリリースし、頭角を現していく。
イギリスの伝統ロック&ポップ直系のバンドという意味では、両者とも共通しているが、ビートルズに通じるメロディーとストレートでオーソドックスなバンドサウンドを全面に押し出したオアシスに対し、ブラーはときにエレクトロニクスを駆使し、時代の空気を取り入れ、ポップで躍動感のあるサウンドを生み出していった。なお、ブラーは2004年に活動を休止。2009年には再始動を果たし、ロンドン五輪閉会記念コンサートに出演。2014年には15年ぶりの来日公演を日本武道館で行なうなどオリジナルメンバーで活動を再開していたが、最近はデーモンがソロライヴ(グレアムがゲスト参加)を行なったり、1990年代から始動させていたゴリラズとして動くなど、今後のブラーとしての展望はまだ未定のようである。年月を経ての世界的評価においては、オアシスに抜かれてしまった感のあるブラーだが、このバンドの類い稀なる楽曲のセンスの良さや功績はもっと評価されるべきだと思っている。

アルバム『パークライフ』

 全英チャート1位に輝き、1995年のブリット・アワードでベストアルバム賞など4部門を受賞したブラーのヒストリーを語る上で欠かせない重要なアルバム。いかに彼らがポップセンスに長けていたかは、ディスコビートを取り入れたダンスロック「ガールズ&ボーイズ」(当時のブラー史上、最高のシングルヒットを記録)を聴けば一発で伝わるはずだ。難しいことは考えずとも単純に歌えて踊れて(アウトドアというより、密室で踊るイメージではあるが)、キュンとする甘酸っぱいメロディーを堪能できるナンバーでもある。楽曲は実に多彩でマシンガンのごとく言葉が連射されるパンクチューンもあれば、ワルツを取り入れた夜の遊園地を思わせるインストゥルメンタルもーー。
 フレンチポップの大御所、フランソワーズ・アルディとデュエットしたヴァージョンもリリースされた甘美なメロディーが秀逸な「トゥー・ジ・エンド」や、モッズファン必見の伝説の映画『さらば青春の光』で主役を務めたフィル・ダニエルズをゲストヴォーカルに迎えたブラーのひねくれポップ魂が炸裂するタイトルチューン「パークライフ」など、聴きどころ満載。デヴィッド・ボウイなどのグラムロックの影響も匂う「トラブル・イン・ザ・メッセージ・センター」やデーモンの皮肉っぽいヴォーカルスタイルがいかにも英国人な疾走感たっぷりの「ジュビリー」も素晴らしく、アルバム単体で一気に聴かせる吸引力を持っている。
改めて本作を聴いて思うことは、このアルバムが中毒性を持つ秘密のひとつはサウンドに隠されているということだ。不思議な浮遊感を持つフレーズがあちこちに散りばめられていて、ざっくり言ってしまえば、サーカスチックな魅力があるのである。この幻想的で快楽的なサウンドワーク、ニューウェイヴを通ってきた世代ならではのセンスが本作の大きな魅力のひとつとなっている。また、中産階級の暮らしや人々をシニカルに描いたストーリー性のある歌詞は国は違えど、日本の新興住宅街に暮らす人たちの心情ともどこかリンクするのではないだろうか。プロデュースはザ・スミスとの仕事でも知られるスティーブン・ストリートなど。その後、ブラーがミュージシャンに(日本も含め)与えた影響ははかりしれない。名盤!

著者:山本弘子

OKMusic編集部

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