ゆっきゅん

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【ゆっきゅん インタビュー】
“私ってDIVAだったんだ”と
気づいてほしい

繰り返すだけの帰り道を
歌姫が彩ってくれた

ここまでうかがった曲のように主人公像が思い浮かぶ曲もありますが、「歌姫」はゆっきゅんさん自身の曲に感じました。また、《言えたいんだけどな》は“癒えたい”にかけているような、言えない状況を不自然な日本語で表しているようにもとらえられますし、《渋谷まで来てやることですか?》という歌詞には、渋谷で何をするでもなく無意味な時間を過ごしている様子が受け取れます。でも、その時間が曲になることで報われるというか、そういう時間も抱きしめて『DIVA YOU』が出来上がったように思いました。

確かに「歌姫」は一番自分のことを歌っている曲ですね。私自身が学生だった頃の、青山の大学から渋谷駅までの道のりを歩くような歌詞を書きたいと思いました。上京してきたからには東京の歌を歌いたい気持ちがあり、自分が上京したのは渋谷の街だったので、J-POPの中で幾度となく描かれてきた渋谷スクランブル交差点を、自分の学生時代の視点からとらえ直してみたかったんです。私はよく“孤独”という言葉を使いますが、それは“寂しい”という意味ではありません。私自身が寂しがり屋じゃないんです。だから、この曲では“寂しがりやではない人の孤独”というものを歌ってみたかったというのもあって、繰り返していくだけの帰り道を彩ってくれた歌姫たちの音楽に感謝を込めて作りました。

「歌姫」のような平凡な時間を過ごしていたゆっきゅんさんが、「DANCESELF」で“今はこうなっている!”という変化を感じられます。ゆっきゅんさんにとっての“踊る”ことの原点にあるものって何ですか?

ハロプロやPerfumeやAKB48やでんぱ組.incなどのアイドルのフリコピですかね。中学生や高校生の時、友達とカラオケに行くと、みんなはみんなが知っているヒット曲を選んで歌うことが多かったのですが、私は自分の好きな歌をどうしても歌いたくて。そこで、せめて振付けを完璧に覚えて歌えば、ショーとして成立させることができて面白くなると思ったんです。歌いたい歌を歌うために、カラオケの前には動画を観て踊りを練習するのが習慣になっていました。

「DANCESELF」はさまざまな感情を噛みしめるような包容力もあるダンスチューンですが、歌詞はご自身にとっての“踊る”という表現について書かれている?

ここで歌っている“踊れる”“DANCE”というのはダンス自体だけを指しているのではないんです。生きていくことや、表現をする…創作という意味だけではなく、発言をすることなどを包括して歌詞にしているつもりです。

そう聞くと、何となく《白湯もDIVA》(「DIVA ME」)と重なるような、ささやかなことでも“自分がやりたいことなら何だっていいんだ”と思える身近な曲に感じますね。自分が好きなものを誰かに伝えることが最初にできる表現であり、DIVA Projectもご自身で作家さんや周りの人に“こういうことがしたい”と伝えたところから始まったものだと思います。そんなゆっきゅんさんにも好きなものをうまく言葉にできなかった時期があったのでしょうか?

好きなものを好きと言えない時期はなかったのですが、20歳くらいまでは自分の言葉で話せていなかったと思います。友達と話したり、些細なことをツイートしたり、あとは大学で鍛えられた気もしますね。それからも、言葉だけではないですが、少しずつできることを試して増やして、その全てがDIVA Projectにつながっていると思います。

リミックス曲を除いて、今作の最後に収録されている「NG」ですが、歌詞は別れを想起するような展開で、今作の中で一番想像を膨らませました。

曲順については感覚的に“これしかない”と思ったとしか言いようがないのですが、この曲だけアルバム全体のテーマである“ワンルーム・ディーバ”から独立してしまっているのも、最後に持ってきた理由かもしれないです。でも、フェイクで本編が終わるDIVAのアルバムになったと思って気に入っています。この曲は人と人が一緒にいられなくなる時のことを描きたかったんです。《何の変哲もないズドスイミング》はさておき、普遍的な言葉で繊細な感情をスラスラ描けたように思っています。楽曲は湖から月に昇っていくイメージでアレンジを進めてもらいました。制作の中でも最後にできた曲です。

DIVA Projectは、ゆっきゅんさんの中にあった情熱みたいなものが爆発したプロジェクトという印象もあったのですが、アルバム『DIVA YOU』を聴くと自分が励まされていくような感覚があり、決して独りよがりなプロジェクトではないことを痛感しました。DIVA Projectや『DIVA YOU』を作るにあたって、聴いてくれる人にどんなことを伝えたかったのでしょうか?

聴いてくれる人に“あなたの孤独、面白いよ”ということを伝えたいし、“私ってDIVAだったんだ”って気づいてほしいです。日常を踊らせたいです。たくさんの人に聴いてもらえるようにこれからもっと頑張ります!

取材:千々和香苗

アルバム『DIVA YOU』2022年3月30日発売 GUILTY KYUN RECORDS
    • GKR-002
    • ¥2,420(税込)
ゆっきゅん プロフィール

ユッキュン:1995年、岡山県生まれ。歌姫と映画を愛する“BRAND NEW DIVA”。サントラ系アヴァンポップユニット・電影と少年CQのメンバーで、同ユニットのライヴでは音楽×毎公演書下ろしの芝居を披露。個人では映画雑誌『キネマ旬報』、芸術総合誌『ユリイカ』での執筆や、演技、トークなど活動の幅を広げている。2021年からセルププロデュースで“DIVA Project”を始動。22年3月に1stソロアルバム『DIVA YOU』をリリースした。ゆっきゅん オフィシャルHP

「DANCESELF」MV

「DIVA ME」MV

「DIVA ME」初披露LIVE

OKMusic編集部

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