ロックの原点に立ち返り
全米1位に輝いた
バッド・カンパニーの
『バッド・カンパニー』
また、今年の7月6日から9月にかけて、北米ツアーが行なわれることもあって、今回はバッド・カンパニーのデビュー作『バッド・カンパニー』を取り上げる。このグループはロック界屈指のヴォーカリストであるポール・ロジャース、ドラムのサイモン・カーク(ともに元フリー)、元モット・ザ・フープルの名ギタリスト、ミック・ラルフス、ベースのボズ・バレル(元キング・クリムゾン)といった面子で結成されたいわゆるスーパーグループなのだが、彼らはグループの統一感を大切にし、時代に媚びず奇を衒ったことはしなかった。それだけに今聴いても古くなっておらず、ストレートなロックが持つ醍醐味が味わえる名作となった。
新しいサウンドが生まれにくかった
1974年
イギリスではプログレの多様化やハードロックの様式化などが起こり、商業的にも成功するグループが増えていた。74年のロック界は、ボブ・ディランがザ・バンドと再タッグを組み『プラネット・ウェイブス』(全米1位)と、ツアーの模様を収めた『偉大なる復活』をリリースしている。アルコールやドラッグの依存症に苦しめられたエリック・クラプトンは『461オーシャン・ブールバード』(全米1位)で4年振りにロック界に復帰し、ボブ・マーリーのカバー「アイ・ショット・ザ・シェリフ」(全米1位)をヒットさせている。ピンク・フロイドは前年に『狂気(原題:The Dark Side Of The Moon)』(全米1位)でプログレを商業ベースに乗せることに成功、グランド・ファンクは『輝くグランド・ファンク(原題:Shinin’ On)』(‘74)でオールディーズのカバー「ロコモーション」(全米1位)を大ヒットさせ、ハードロックグループからの転身を図るなど、商業的な成功を得るために、スタイルの洗練化がロック界全体で意識的に行なわれたのが74年頃ではなかったかと僕は考えている。
この1、2年後には、純粋にロックを愛する当時の若者たちは、そういったロック界の大人の事情に対して、パンクロックを通じて“ノー”を突きつけることになるのだが、大人たち(かつてのロック少年たち)はAOR、フュージョン、ディスコといった音楽へとシフトしていき、世代間の壁がどんどん大きくなっていく、そんな時代であった。