L→R 本多響平(Dr&Cho)、諒孟(Gu&Cho)、宮原 颯(Vo&Gu)、井口裕馬(Ba&Cho)

L→R 本多響平(Dr&Cho)、諒孟(Gu&Cho)、宮原 颯(Vo&Gu)、井口裕馬(Ba&Cho)

【irienchy インタビュー】
みんなで戦っているような
気持ちが芽生えた

ライヴに来てくれる“あなた”に
歌っている曲にしたかった

「ずっと」は夢の実現を強く信じるポジティブなリリックと朗らかなバンドサウンドが印象的でした。そもそもは颯さんが高校時代に作った、亡くなられたお父さんとのエピソードがもとになっている曲だそうですが、昔懐かしい曲を今リアレンジしようと思ったきっかけは?

宮原
何だったんかな? 引き出しの奥に眠っていた感じじゃなくて、常に頭の片隅にあった曲なんですよ。スタジオでもたびたび触ってはいたよね?
諒孟
そうだね。irienchyを始めた頃から聴かせてもらっていた曲だし。
本多
初ライヴで密かにやっていたりもするんです。アレンジは今と全然違うけど。
宮原
やったわ! まだ曲数がなかったもんな。
井口
でも、それ以降にライヴで演奏する機会はなくて。
宮原
活動初期から試行錯誤していたものの、なかなか自分たちに馴染まなかった曲なんですよ。やっぱり、ライヴを重ねてバンドが固まってきたのがきっかけなのかなと。“今ならできるんじゃないか?”っていうタイミングが来た感じ。
諒孟
持ち曲のバリエーションとして、ちょうど今こういうテイストが欲しい気分だったのもあったしね。それで改めてアレンジに取りかかってみました。

これまでのirienchyになかったタイプの曲だと思います。

諒孟
小学生や10代の頃に描く将来のイメージを活かした曲ですよね。夢がまだくっきりとは見えていない状態で、だからこそ無限大に感じられる素敵な青さがある。この青さをアラサーの僕らがね(笑)、どうアプローチすれば魅力的になるのか。そこはめちゃくちゃ考えました。
井口
高校生の颯くんが描いた世界観と大人になった僕たちのアイディアが、不思議とマッチしているのが聴きどころです。
宮原
さすがに今リアレンジしたら自分の中で多少は違和感が出るというか、歌詞の意味合いが変わって聴こえたりもすると思っていたんですけどね。
本多
過去の自分を俯瞰で見ちゃうような?
宮原
うん。でも、ライヴで演奏していくにつれて、高校生の自分も今の自分も根っこはそんなに変わっていないと気づきました。あと、《ずっと夢を見てればきっといつかは叶う》と信じて歌っている一方、親父に対しての皮肉が少しだけ顔を覗かせている感じもあるんです。“そう言ってたけど、本当なの?”みたいな(笑)。そこは大人になった僕が歌うことで、より味が出たと思います。

リアレンジはどのあたりがポイントでしたか?

本多
ピアノとアコギが軸でポップス色が強かったもとの音源を、irienchyのギターロックでどう表現すればいいのかっていうところですかね。
宮原
そこだよね。ゼロからじゃないだけに難しかったです。
諒孟
再解釈のキーになったのはリズムだと思います。シャッフル寄りの4分音符を強調したリズムをメインに据えたことで、行進っぽい雰囲気が出たし、歌詞にもすごくフィットしたので。

少年のキラキラした目が思い浮かぶようなギターリフもインパクトがあります。

諒孟
リフのキラキラ感は『ドラえもん』のテーマ曲のイントロをヒントにしました。Aメロの歌詞に《メジャーリーガー》が出てくるんですけど、そこのフレーズは映画『メジャーリーグ』の「Wild Thing」をオマージュしていたりもします。

わんぱくな響きのリフとは対照的に、間奏のギターソロはウェットで大人っぽさがあって。そのへんも美しく混ざっている感じがしました。

宮原
あそこはめっちゃ諒孟さんらしいところです。“こういうギターソロが来るとは思わないだろ?”みたいな感じが出とる(笑)。
井口
あははは! レコーディングの最後でいきなり変えてきたんだよね。
宮原
それまでのテイクでは、わりと激しめで弾いていたのに。
本多
“やってきたなー!”っていう感じでした。
諒孟
驚きってテンションが上がるじゃないですか。曲を壊したらもちろんダメだけど、そうならない範囲でメンバーを驚かせたいんです(笑)。

そして、最新曲の「ソルジャー」は特にグッときました。各パートの演奏がパワフルなのと歌詞も力強さを増していて、irienchyの中でもひとつ抜けた曲になった気がしませんか?

宮原
はい。「スーパーヒーロー」(2020年4月発表のミニアルバム『START』収録曲)や「ドリームキラー」(2021年10月発表のミニアルバム『◯◯者』収録曲)との共通項もありつつ、僕の中では別の手応えがあります。というのも、これまでは自分のために書いていた部分がほとんどで。とにかく自分に自信がなくて、そんな弱い自分をなんとかして鼓舞する感じの曲ばかりだったんですけど、やっぱりライヴで得たものが大きいんでしょうね。いつからか少しずつ自信が持てるように変わっていきました。

ここでもライヴの影響が。

宮原
最近はライヴをやって曲ができることが本当に多いですね。そんな中でハッとしたんです。俺は自分に向けた曲ばかりを書いているなって。だけど、ライヴにはいろんな想いを持った人が来るじゃないですか。ステージからお客さんを見ると、それが伝わってくるんですよ。“この人、もしかして悲しいのかな?”とか。すごく楽しそうでいながら、心の奥に悔しさがあるような表情をしていたり。そういうさまざまな喜怒哀楽が集まるからこそ、ライヴは温かくなるとも感じていて。

なるほど。

宮原
そう思ったら、みんなで戦っているような気持ちになったんです。目線が少し外向きに変わったのは、そこが大きいかもしれません。僕らもうまくいかないことは日々あったりするし、ひとりひとりが主人公として自分の物語を生きていて、それぞれの物語の中でライヴを通してこうやって奇跡的に出会えた。“せっかく出会えたんだから一緒に戦おうぜ”みたいな。「ソルジャー」の取っかかりはそんな感じですね。
諒孟
irienchy史上、ここまで強気な歌詞は初めてです。サウンド的にもかなりロックに攻めているし。
宮原
《そうだよな 負けたくないよな?》という歌詞が後半に出てくるんですけど、最初の段階ではそれを冒頭にも入れていたくらいですからね。明らかに言葉の向きや強さが変わったのは、メンバーも感じていたと思います。
井口
自分を奮い立たせるような姿勢は伝わってきていました。
本多
言ってみれば、今までの曲は独りよがりなところもなくはなかったよね。ん? これだとちょっと語弊があるか(笑)。
宮原
いいよいいよ。言ってくれよ(笑)。
本多
決して一方的というわけではないんだけど、自分の思想を吐き出す感じがベースだった気がするのね。「ソルジャー」は“悩んでいるなら一緒に頑張っていこうよ”みたいに、聴き手との距離感が横並びになったイメージがあります。

変わってきてますよね。だって、初めてインタビューした時には、irienchyは誰かの背中を押すとか“俺についてこい!”みたいなバンドじゃないという話をされていましたけど、この前の3周年ワンマンでは、スタートから颯さんが“しっかりついてこいよ!”とオーディエンスに呼びかけていたので。

全員
あははは!
諒孟
変わってきたなー。気づいてなかったわ(笑)。
宮原
確かに言いましたね。無意識で出たから自分でもびっくりでした! “人って変われるんだな”と思ったりします。

さっき話に出た《そうだよな 負けたくないよな?》と歌うEメロもすごく効いていて、このブロックがあるのとないのとでは聴後感がまるで違うと思います。

井口
作っている途中でカットしようかみたいな話も出たけど、颯くんは入れたいと言っていましたね。
宮原
その部分は何回も書き直しました。どう表現すれば、言いたい内容がズバッと伝わるかなって。やっぱり自分だけが戦っている感じにはしたくなくて、ライヴに来てくれる“あなた”に歌っている曲にしたかったんですよね。2番の歌詞にあるような、傷ついた時に自分を守るために笑ってみるとか、平気じゃないのに平気なふりをするとかは、僕自身にも痛いほど当てはまることなんですけど、“そうやって立ち向かっているあなたはカッコ良いんだよ!”という想いを込めて歌っています。

「ソルジャー」はMVも面白い仕上がりでした。

諒孟
事務所のスタッフがアイディアをくれて、ボクシングジムで撮影をしたんですけど、4人ともボクシングジムに行くのは初めてだったんです。出演していただいたプロボクサーの大久祐哉さんが超カッコ良くて、思わずボクシングを始めたくなりました。
宮原
生のミット打ちがすごかったです。俺たちの下手くそなシャドーボクシングとは大違いで(笑)。
井口
格闘技を観るのは普段から好きな4人だし、ああいう現場が見られてとにかく感激しました。
本多
僕もAmazonプライムやdtvでボクシングの試合とか、YouTubeで京口紘人選手のミット打ちをめっちゃ観ていたりするので、とても嬉しい経験でした(笑)。ぜひ、MVをチェックしてみてください。
諒孟
そう言えば、MVの撮影中に俳優の柄本 明さんがふらっと通りかかったよね。犬の散歩をされていて。
宮原
“撮っているところごめんねー! NGになっちゃったかな?”みたいに声をかけてくださって。自分たちなんかが演技をしていて恐縮でした(笑)。

3月と4月には、「ソルジャー」のリリースを記念した『僕らの闘いは続いていく』ツアーも開催されます。

宮原
irienchyがライヴを大切にしているバンドなのが今回のインタビューで伝わったはずなので、僕らの生き様を観に来てほしいですね。「ソルジャー」で歌ったとおり、日頃のしんどいこととかも含めて生きていて良かったと思える、そんな時間が共有できるツアーを全力でやります。

取材:田山雄士

配信シングル「ソルジャー」2023年3月1日配信リリース BIGRANDE MUSIC

『irienchy Digital Single『ソルジャー』リリース記念〜僕らの闘いは続いていく〜ツアー』

3/22(⽔) ⼤阪・⼼斎橋Live House Pangea
3/23(⽊) 福岡@・LIVE HOUSE Queblick
4/13(⽊) 愛知・名古屋CLUB UPSET
4/16(⽇) 東京・Spotify O-Crest

irienchy プロフィール

イリエンチー:2020年1月、元MOSHIMOの宮原 颯(Vo&Gu)と本多響平(Dr&Cho)が新たに結成。同年4月に1stミニアルバム『START』、23年12月に1stフルアルバム『MISFIT』リリース。恥ずかしいほど正直な心の声や日常に潜んだセンシティブな感覚を紡いだ詩と、どこかほっとするメロディー。ポップにまとまりながら攻撃的な一面のあるテクニカルな演奏など、4人それぞれの感性が絡み合い、先が読めない非凡な可能性と美学を秘めた4ピースバンド。irienchy オフィシャルHP

「ソルジャー」MV

「ずっと」MV

「ドリームキラー」「バイバイ」
ライヴ映像

OKMusic編集部

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