L→R 太田 旭(Ba)、日野遥希(Vo&Gu)、阿部千樹(Dr)、下橋場舞人(Gu)

L→R 太田 旭(Ba)、日野遥希(Vo&Gu)、阿部千樹(Dr)、下橋場舞人(Gu)

【シロとクロ インタビュー】
ひとりぼっちから始まる
“出会い”の物語

暗めの表現の歌詞もあるけれど
決して諦めているわけではない

シロとクロは歌モノとして成立するポップセンスと、緻密なアンサンブルで魅せる側面を兼ね揃えていますが、下橋場さんのカラーが出ていることもあってか、今作はよりロックバンド感が増した印象があります。

3人時代に“ポップで可愛らしいバンド”と言われることが多かったんですけど、自分たちとしてはロックバンドとしての意識が強かったんですよね。今回はそれをちゃんと届けられるサウンドにできたと思う。舞人のルーツが70~80年代のなので、僕から“ほとんどの曲の間奏とアウトロにギターソロを入れろ”と命じました(笑)。3人時代にやりたかったことができるようになっているんです。ちょうどシティポップにハマっていたから「Hey Lady」とかにはそのテイストを用いて、初めて管楽器のフレーズも考えました。

長さが短めの楽曲、インパクトのあるイントロ、シティポップ的なサウンド感などのトレンドを取り入れつつも、全曲がロックバンドのサウンドスケープですよね。

世の中的にもイケてるものをやりたいし、シロとクロなりのサウンド感や物語を見せたくて。そしたら“もっと聴きたい!”と思ってもらえる曲が、ひいては何周も聴いてもらえるアルバムが作れると思ったんですよね。メロディーはお茶の間で聴けるようなポップス、でも裏で楽器がすげぇことをやっているのが僕らの理想なんです。今はそういうバンドがあんまりいないと思うので、シロとクロの目指しているものがちゃんと提示できたと思います。

リード曲の「Alone」はそれが分かりやすく音になっていると思います。さらにクラップが曲の晴れやかさをより増幅させていて。

クラップを入れたのは、ご時世的にライヴで声が出せないからなんです。僕らのリード曲はシンガロングできるものがほとんどなので、シンガロングに代わる一体感を生み出せるものを考えた時にクラップを曲に入れるのがベストだと思ったんですよね。「Alone」は小さい頃に自分の思っていることをうまく言葉で表現できなくて泣いてしまったり、モヤモヤしてしまう感覚を曲にしていて。だから、『From Lonely』のジャケットは子供なんです。

なるほど。「優しくなれたら」と同じく、昔を振り返りながら今の視点で書いたものであると。

その結果、「Alone」に限らず全曲に「優しくなれたら」よりも強さがあると思います。分からないことばかりで泣いていた幼い頃から、四半世紀生きた今も立ち向かって生きている。孤独を自覚したということは、現状をもっと良くしたいことへの裏返しだとも思うんですよね。「Alone」も暗めの表現の歌詞もあるけれど、決して諦めているわけではない。だから、僕らなりの、いわゆる応援ソングです。

となると、鋭い言葉が並ぶ「戦場、東京」もおっしゃったような意味合いから生まれたということですよね。

ダウナーな曲ではありますけどね(笑)。昨年5月の一番テンションが低い時に書いたんです。同じ時期に「Hey Lady」のメロディーや管楽器のフレーズに試行錯誤していたり、目の前のことを一生懸命やるしかないのに“どうしたらいいんだろう?”とばかり考えてしまったり…堂々巡りばっかりしていた時に書きなぐったような歌詞なので、率直な言葉が多くなりました。

サビの《期待なんかして待ちぼうけバカみたい/頭ちょっとおかしいんじゃない?》というラインはシンボリックだと思います。「戦場、東京」は日野さんがおっしゃったように、どうするべきなのか分かっている人の自己嫌悪や堂々巡りなんですよね。

昔の自分ならそこまで頭が回っていないから、ある程度大人になっているんだと思います。でも、まだまだ小さいことで悩んでいるから、そういうことも書いちゃうんですよね(笑)。そんなジレンマがそのままかたちになりました。今回の曲は全部、アコギ1本で成立するものにしているんです。だから、歌のテーマはディープで狭いところを歌ったものになっているけど、楽曲の主人公が広い世界を目指していることはサウンドで伝えられるようにしましたね。

ラストを締め括るのが「ロンリープラネット」。こちらはハッピーエンド感漂うカントリーテイストの楽曲ですが、聴く人によって歌詞の物語や言葉の解釈が異なりそうです。

これは本当に自然体で書いた曲で、僕の好きな少女漫画をモチーフにしているんです(笑)。ピュアな気持ちで“あなたと一緒にいたい”と書いています。

確かに日野さんの書くラブソングには、少女漫画みたいな世界観があると思います。

ロマンチック野郎なんですよね(笑)。漫画やドラマ、映画が好きで、少女漫画も結構好きなんですよ。ラブストーリーに感情を揺さぶられて、影響されやすかったりして。

“可愛らしい”と思われがちなのは、そういうところかもしれないですね。

あははは。かもしれないです。

『From Lonely』でシロとクロの実現させたい表現やもともと持っている個性が、より明確になったのではないでしょうか?

今作を作り終えてフロントマンとしての言葉の説得力がすごくついたと思います。あとは、何よりメンバーへの信頼が強くなったことが一番大きいですね。ひとりぼっちだけど誰かとつながりたくて、何かを一緒にやりたくて…それが僕にとって“バンド”だったんですよ。それに気づかされる制作でしたね。僕が音楽を嫌いにならない限り、ずっとこの4人でやっていける。

ご自分の作った曲についてきてくれるメンバーがいるって、とても励みになるんだろうなと思います。

自分のやりたいことを追及している僕にメンバーは人生を懸けてくれているんですから、それこそ“頭おかしいんじゃない?”と思ったりもしますよ(笑)。メンバーは曲が書けるだけの僕と一緒にいてくれている。本当に宝物のような存在です。1年ちょっと経って、4ピースバンドとしての理想形になったと思っています。

取材:沖さやこ

ミニアルバム『From Lonely』2022年2月23日発売 Shiro to Kuro
    • SKCI-0002
    • ¥1,980(税込)
シロとクロ プロフィール

シロとクロ:2015年夏、地元の山陰にて結成された3ピース歌モノロックバンド。18年5月に1stミニアルバム『夜の隙間で』を発表し、リード曲の「night walking」のMVが再生回数36万回を超え話題を集める。20年11月から下橋場舞人(Gu)が加入し、4人体制に。12月に新体制後初のリリースとなる配信EP『Your Song』をリリースし、22年3月にはミニアルバム『From Lonely』をリリースする。シロとクロ オフィシャルHP

「Hey Lady」MV

「Your Song」MV

「Tokyo fallin'」MV

「宛名のない、」MV

OKMusic編集部

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