L→R 谷田七海(Dr)、ハイスクール・ジュニアやますけ(Gu)、近藤芳樹(Vo&Gu)、有坂生夢(Ba)

L→R 谷田七海(Dr)、ハイスクール・ジュニアやますけ(Gu)、近藤芳樹(Vo&Gu)、有坂生夢(Ba)

【molly インタビュー】
“嘘のない歌”を届ける
名古屋発のニューカマー

やりたいのは、明るく聴こえるけど
冷ややかに刺してくるような歌

いよいよ初の全国流通盤『moment』がリリースされますが、ここまでのバンドの歩みはどう振り返りますか?

最初から「moment of lucky life, yes」「of」「lucky」「life」「yes」っていう5枚のデモ作品を半年周期で出すと決めていたんですけど、本当に長かったなって思いますね。

どうして半年周期でデモを出すことにしたんですか?

半年ずつ音源を出して、それを引っ提げたツアーをやりたかったんです。ツービートばっかりやっていた時期は、周りのバンドが年間でライヴ100本やっているのが当たり前だったから、自分たちもライヴバンドになろうとしていたんです。でも、最近は一本一本を大事したいと思っています。

『moment』には5枚のデモ作品の中から選ばれた楽曲を新たにレコーディングして収録しているのですが、あえてMVになっている曲はハズしていますよね。楽曲をセレクトする基準は何かあったんですか?

バリエーションを出したかったので、そこを意識して選曲しました。「逢いの唄」が純粋な温かいロック、「tonight」は疾走感のあるカッコ良いロックで、「lucky」はピアノが入った楽しい曲、その反対の「偽物」があって、「またね、」はバラード。あと、CDだけの曲として6曲目に「名古屋」っていう曲も入れています。これはフォーリミの『monolith』ってアルバムのCDだけに収録されてる、“758”で“名古屋”と読む曲があって、それをリスペクトしていて。名古屋愛を込めて、名古屋のライヴだけでやるようにしているんです。

再レコーディングするにあたってアレンジも変えているんですか?

「偽物」以外は変えています。特に「lucky」が変わったんですよ。もともとキーボードを入れていなくて、ロックンロールというか、もう少し速い曲だったんですけど、ウォーキングベースで陽気な雰囲気を出したので楽しい曲になりましたね。

そういうふうに変えた理由は何だったんですか?

自分のやりたい歌は、明るく聴こえるけど、どこかで冷ややかに刺してくるようなものなんです。「lucky」の歌詞って曲調とは真逆で楽しくないんですよ。ちょっとドキッとするというか。それを明るい曲調でやってみたかったんですよね。

今作の中で「lucky」は肝だと思いました。芳樹くんの人生観とか死生観がすごく表現されているじゃないですか。“自由な僕らはラッキーだ”と歌っているけど、それは能天気なんじゃなくて、シビアに現実と向き合って出てきた言葉だと思ったし。

たぶんなんですけど、そこまでちゃんと聴いてくれないと能天気に聴こえちゃう曲だと思うんです。この曲を作ったのは2020年で、それこそお世話になっている人たちが頭を抱えているのを見ていた時期だから、そこで現実的な死が見えたというか。ライヴハウスの人が何千万円も借金があるって言っていたので。

その実体験が《あっという間に死んでいく》という歌詞を書かせたんですね。

うん。明るく振舞って、自分たちみたいな他県からくるバンドにも“いつもありがとう”と言ってくれるけど、それを成り立たせるのってすごく大変なことなんだと実感しましたね。

なるほど。他の収録曲についても聞かせてください。1曲目の「逢いの唄」は、4thデモ『life』(2021年4月発表)からの楽曲で、芳樹くんのやさしいヴォーカルが映えるピアノロックですね。

この曲のヴォーカルは難しかったです。他の曲は“自分はこう思っている”みたいなアプローチなんですけど、「逢いの唄」だけは“思ったことを歌いかけている”みたいな曲なんですよ。そのニュアンスを出すのに苦戦しました。

これは人生の出会いと別れをテーマにした曲なのかなと思いました。

これは高校生の時に作った曲で、当時からバンドを組みたかったけど、メンバーの探し方も分からなくて、何もできなかったんです。だから、弾き語りでたくさん曲を作っていて。それから大学でバンドを組んで、この曲を出そうってなった時が、ちょうど七海ちゃんが入ってくれたタイミングだったんですけど、前のバンドの解散でゴタゴタしていてちょっと環境を整えるのが大変で。そういう時に《あなたの居場所はあなたが居たい場所/ここにあるよ/大丈夫》っていうのが答えだなと思ったのをよく覚えています。

そこもいいフレーズだと思いました。あと、ぜひ歌詞カードを見てほしいと思うのが《哀を相を藍を合いを》というところ。読みは全部“アイ”だけど、漢字は全部違うという。

そこの順番もめっちゃ考えたんですよ。聴いてくれる人が、どうしてこの順番になっているのかも考えくれたら嬉しいです。

例えば「またね、」という曲では、《あのひと》という表現は“あの日と”と“あの人”をかけているじゃないですか。

それ、今、初めて言われました。2020年にリリースしてから“いつ言われるかな?”と思っていたんですよ。伝わって良かった。

こういう言葉遊びは好きだったりするんですか?

好きですね。THE NINTH APOLLOに所属しているammoっていう同世代のバンドと仲良くさせてもらっていて、そのバンドの言葉遊びがすごいんです。その影響もあると思います。

4曲目の「偽物」は今作の中では異色の存在感を放つダークな曲ですね。

僕はデモの曲の中ではこの曲が一番好きなんですよ。本当は七海ちゃん向きの曲ではないけど、スタジオで“もっと機械っぽく無表情な感じで叩いてほしい”と頼んだり、ベースを歪ませたり、エンジニアさんに“悪い音を出したいです”とお願いをして作っていったのが楽しかったです。

歌詞では自分だけが正義だと思っている人へのモヤモヤする感情を吐露していますね。

他人に対して“偽物だろうな”と思っている自分が偽物かもしれないっていうことですね。これは僕の性格の悪い部分が出ちゃった感じなんですけど、そういう部分も出したほうがいいと思ったんです。自分の中の陰と陽はこれからも大事にしていきたいので。そういう意味では、今回のアルバムは自分の中の全部を出せたんじゃないかと思います。

「名古屋」では《心に嘘はつけないな》とか《本音は震えるんだ》とも歌ってるし、芳樹くんにとって、嘘をつかない、正直であることが信念なんでしょうね。

そうですね。正直にやってるほうが楽しいです。

アルバムタイトルの“moment”というのは、「moment of lucky life, yes」から始まり、「of」「lucky」「life」「yes」と出してきたデモ作品の流れの最後のピースでもあります。“moment of lucky life, yes”というのは日本語に訳すと、どういう意味ですか?

僕、カフェmollyっていうところでバイトをしていたんですよ。

あっ、それがバンド名の由来なんですね?

そうです。で、“moment of lucky life, yes”はそこの店長が作った言葉なんです。文法的に合っているのかは分からないけど、“今日をいい一日に”とか“楽しく生きていこう”“気楽に”っていうポジティブな意味があって、いい言葉だなと思ったんですよ。もともとバンド名の候補でもあったし。その流れで初めての全国流通盤のタイトルを“moment”にできたのはめっちゃ良かったと思います。コロナの時期により刺さる単語ですよね。

取材:秦 理絵

ミニアルバム『moment』2022年3月9日発売 RED
    • RED-018
    • ¥1,760(税込)

ライヴ情報

『molly 1st mini album「moment」リリース・ツアー『春宵は人の夢』』
3/19(土) 大阪・心斎橋BRONZE
w/hananashi/レベル27/Blue Mash / Brown Basket
3/27(日) 東京・下北沢Daisy Bar
w/プッシュプルポット/シンガーズハイ/osage
4/23(土) 愛知・新栄RAD SEVEN
w/Organic Call/サウナガール and more

molly プロフィール

モーリー:2019年春に活動をスタートさせた、地元の名古屋をこよなく愛する4人組バンド。感情がそのまま溶け込んだ繊細な歌声と、瞬間を謳歌するエネルギーで聴く者を惹き込むライヴが魅力。名古屋のライヴハウスを中心に果敢に活動中。19年9月から5作のデモを会場限定でリリースし、22年3月に初の全国流通盤ミニアルバム『moment』、同年11月に2ndミニアルバム『メメント・モリ』をリリースした。molly オフィシャルHP

「逢いの唄」MV

『moment』トレイラー

OKMusic編集部

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