GAUZEのスリリングなサウンドが
真っ直ぐに飛んでくる
日本ハードコアパンクの傑作
『EQUALIZING DISTORT』
反骨精神に溢れたテーゼ
ただし、ヴォーカルがサビ以外は全編に渡って高速であって、メロディーを歌っているというよりも、叫びと言っていいスタイルなので、そこでのキャッチーは皆無だ。歌というよりは、マイクを使って音源に言葉を詰め込んでいるという印象で、そこで聴き手が分かれることは無理からぬことであろう。また、楽曲のテンポが速いことに加えて、そのタイムも1、2分なものばかりなので、“これはカッコ良い!”と思っても、すぐに次のトラックへ移ってしまう。間違っても、まったりと聴いている暇はない。よって、接し方はポップスなどのそれとは自ずと変わってくる。極端な言い方をすれば、聴いている側にも演者と同様のテンションがなくてはならないだろうし、誤解を恐れずに言うのであれば、聴き手に緊張感を強いてくる音楽なのである。アルバムトータルの収録時間は18分弱。48分弱の間違いではない。決して長くない…どころか、はっきり言って、巷にあふれる他のアルバムに比べたら極めて短い音楽作品である。しかし、本作では、その短さは中身の薄さには繋がらない。聴く方には相当の集中力が必要だし、覚悟もいる(おそらく集中力も覚悟もない人が聴いた場合、単調であったり、騒々しいであったりという感想になるのだろう)。その意味では、少なくともGAUZE『EQUALIZING DISTORT』はまったくポップミュージックではないし、“ハードコア”パンクというのは言われる所以がそこにあるのだろう。
当コラムの締めは、収録曲の歌詞を引用して、その作品やアーティストのテーマ、メッセージを浮き彫りとすることが多いのだが、前述した本作並びにハードコアパンク作品の接し方に反するという理由から、今回は歌詞の解説は止めておく。その代わりに…というのも若干失礼な話かもしれないが(ご容赦あれ)、本作の歌詞カードの裏にあった一文を引用させてもらう。
私利の為に要領よく この業界を利用してあぶく銭を儲け 何もわからない奴らを必要以上にでっち上げ 商業主義に走る 団体その他を 俺達は断固批判する(『EQUALIZING DISTORT』ライナーノーツより)
反骨、反逆精神にあふれている。彼らはこのテーゼを貫いたのだろう。GAUZEの情報がおいそれと入手できなかったこともよく分かる。商業主義に走る 団体(つまり多くの音楽専門誌やサイト)はGAUZEを簡単に取り上げることがなかった。取り上げることができなかったと言ってもよかろう。その結果、彼らの情報はネットにあふれていないのだ。それもまた“ハードコア”な話だ。このOKMusicはどうかと言えば、K=POPのライヴにGAUZEのTシャツで行くような人が編集をしていて、その人は筆者に無言で『EQUALIZING DISTORT』を渡すような人物でもある。サイトやフリーペーパーの運営はビジネスだし、そこに商標主義はあろう。ただ、そこで働く人の魂は間違いなく“ハードコア”ではある。
TEXT:帆苅智之