キャンディーズの
7thアルバム『夏が来た!』に
現在まで続く
アイドルグループの原型を見る

『夏が来た!』(’76)/キャンディーズ

『夏が来た!』(’76)/キャンディーズ

キャンディーズの伊藤蘭が5月29日、アルバム『My Bouquet』をリリースした。今作は何と彼女のソロ歌手としてのデビュー作。1978年のキャンディーズ解散後、41年振りの歌手活動再開だという。となれば、当コラムとしてもキャンディーズを取り上げないわけにはいきますまい。というわけで、今週はアイドルグループのレジェンド中のレジェンドのアルバムをピックアップ!

伝説的女性アイドルグループ

人気絶頂であった1977年に突然の解散宣言。そこでメンバーのひとり、伊藤蘭が泣きながら叫んだ“普通の女の子に戻りたい!”が当時の流行語になったと言えば、現在50歳くらいまでの人、即ち1970年以前に生まれた人であれば“そうそう”とうなずくところだろう。しかしながら、逆に言えば、アラフィフ以下の人にとっては、如何にキャンディーズが伝説的アイドルグループだったと言ったところでピンと来ないような気もする。

何しろキャンディーズは解散後、一度も再結成していない。藤村美樹は1983年に、田中好子は1984年に、それぞれ歌手活動を行なっているものの、藤村の場合は期間限定での歌手活動であって、その後、間もなく結婚し、芸能界を引退している。田中はその後、女優としての活動を本格化させていったので、両者共に歌手としての活動は極めて短かった。伊藤に至っては今回発売されたアルバム『My Bouquet』がキャンディーズ解散後、41年目にして初のソロ音楽活動である。3人の内の誰かひとりでも長く歌手活動をしていれば、“あの歌手が在籍していたグループね”と認識されることも多かったのだろうが、伊藤も田中も役者として大成したため、過去の歌手活動、つまりキャンディーズにスポットが当たることが少なくなっていったようなところはあると思う。

また、キャンディーズには所謂“記録”がなかった。「年下の男の子」(1975年)を始め、「春一番」(1976年)、「やさしい悪魔」「暑中お見舞い申し上げます」(共に1977年)とヒット曲は多かったものの、チャート1位となったシングルは何と「微笑がえし」(1978年)のみ。ラストシングルが最初で最後の1位であった(ちなみにアルバムでは、1978年4月4日の解散コンサートが収録された『キャンディーズ ファイナルカーニバル プラス・ワン』が初登場1位となっている)。

同時期のアイドルグループとして比較される向きもあるピンク・レディーが、1978年に「UFO」「サウスポー」「モンスター」と年間シングルチャートのトップ3を独占していることと比べると(どちらがどうという優劣の話ではなく、記録という意味で)対照的ですらある。もっとも、キャンディーズは1973年デビューで、ピンク・レディーは1976年デビューと、キャンディーズの方が3年先輩にあたるわけで、単純な比較は無理のある話で、“織田がつき羽柴がこねし天下餅すわりしままに食うは徳川”ではないが、連続する歴史の中で共に歌謡シーン、芸能史を築いてきた存在であったと見るのが正解だろう(それで言えば、ザ・ピーナッツがつきキャンディーズがこねた…といった感じだろうか)。

解散後にメンバーの歌手活動がほとんどなかったことに加えて、現役時代の目に見える記録がなかったことで、公に語られる機会が必然的に減っていったと思われるキャンディーズだが、同じ時代をリアルタイムで過ごした人たちにとってその印象は極めて鮮烈だったようだ。最近こんな話を聞いた。とんねるずの木梨憲武が俳優の水谷豊と親しくなったばかりの頃、水谷から氏の自宅に招かれた時、“蘭さん、いるんですよね? 水谷さん、すみません。俺、いいです”とそのお誘いを断ったという。水谷の奥様は、言わずもがな、元キャンディーズの伊藤蘭である。

何でも、とんねるずの番組に伊藤蘭がゲスト出演した際、彼女を目の前にした木梨は、本人曰く“パニくって何か変になった”そうで、水谷邸に行くとまた変になっちゃうと思ったとか。メディアに出て傍若無人に振る舞うのも、とんねるずの芸のひとつだが、そんなとんねるずの木梨をパニックにさせるのだから、氏がリアルタイムで目の当たりにしたキャンディーズのインプレッションが如何に強烈であったのかが計り知れようというもの。その後、徐々に慣れていったということだが、木梨は水谷にキャンディーズのCDとペンを渡して“ちょっとこれに3人のサインもらってきて”と頼んだこともあるそうで、そのサインは今も自宅に飾ってあるという。これは一例であって、しかも有名人の特異な例であるかもしれないけれども、不可侵なキャンディーズの思い出は、直撃世代のファンの数だけあるような気がする。

OKMusic編集部

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