Charの原点!世代問わずギターキッズ
必聴の1stアルバム『Char』 

日本が誇るスーパーギタリスト、Charは今年の6月16日に60歳の誕生日を迎え、その前日の6月15日に日本武道館でライヴを行なう。先駆けて5月22日にリリースされる10年振りのオリジナルアルバム『ROCK+』は泉谷しげる、佐橋佳幸、布袋寅泰、ムッシュかまやつ、石田長生、奥田民生、松任谷由実、JESSE、佐藤タイジ、福山雅治、宮藤官九郎、山崎まさよしの12人をソングライター、プロデューサーに迎えたアニヴァーサリーに相応しい豪華な内容となっているが、そんなCharの原点であり、クォリティーの高さ、洗練されたセンスに驚かされるのが1976年に発表されたデビューアルバム『Char』である。中学時代からスタジオミュージシャンの仕事に関わり、天才少年と言われていたCharだが、その答えはこのアルバムの中にある。世代問わずギターキッズ必聴の名盤だ。

怖れ知らずのチャレンジ精神とクールな
頭脳で自ら道を切り開いてきたChar

 小学生の時からバンドを組んで活動していたCharは数々のバンドを経て、17歳の時に鳴瀬喜博、佐藤準、藤井章司、金子マリと伝説のスモーキー・メディスンを結成。シーンの話題を集めるが、バンドは長くは続かず、Charはソロのためのメンバーを探すために単身、渡米。1976年の6月にシングル「NAVY BLUE」でデビューを果たし、同年の9月にアルバム『Char』をリリースする。
 個人的な思い出になるが、学校の中で「大田区からすごいギタリストが出てきたらしい」と男子の間で噂になっていたことだけはハッキリ覚えている。携帯もなければ、PCもなければ、音楽雑誌だって数えるほどしか出版されていなかった時代だ。今なら天才ギタリストの出現はSNSで、あっと言う間に拡散するだろうが、東京都の中とはいえ、1970年代にそういう噂がかけ巡るのが、どれほどすごいことかーー。それからしばらくして、レコードショップでアルバム『Char』を手にとって「この人が!?」と驚いた。そのジャケットは超絶ギタリストにも関わらず、ギターと映っていないではないか。しかも、素肌に真っ白なスーツ。毎日、シャンパンとか飲んでいそうだ。日本のロックと言えばどこか垢抜けなかったり、サイケデリックだったりするジャケットが多かった中、オシャレというか、スタイリッシュなジャケットは思春期女子には衝撃的だった。
 アルバムの中身には後ほど触れるが、卓越したギターのスキルで男子の心を鷲掴みにし、スターのキラキラしたオーラで女子もときめかせたCharは翌年、1977年に阿久悠が作詞を手がけた「気絶するほど悩ましい」で歌謡シーンに飛びこみ、「逆光線」、「闘牛士」など数々のヒット曲を放ち、世良公則&ツイスト、原田真二と共に“ロック御三家”と呼ばれ、瞬く間に“時の人”となる。当時は今より歌謡界とロック界の境目がハッキリしていたため、アイドル的人気への批判もあったかもしれないが、バラエティー番組に出ても、音楽番組に出ても、Charはやんちゃで尖っていてブラウン管からはみ出す規格外の存在だったと記憶している。そして、何よりロックに触れる機会がなかった小学生や中学生がTVを通してCharのギターに出逢うことになったのは大きい。その後、ルイズルイス加部(Ba)やジョニー吉長(Dr)とJONNIE,LOUIS&CHAR〜PINK CLOUDを結成し、スーパー3ピースバンドとして活躍、自身のレーベル『江戸屋Record』を設立するなど、そのヒストリーはとても書き切れないが、怖れ知らずのチャレンジ精神とクールな頭脳を合わせ持ち、自らの道を切り開いてきたその生き方は、サムライ・ギタリストの名に相応しい。余談だが、最新のアーティスト写真もギターこそ持っているものの、まったくブレずにスタイリッシュである。

アルバム『Char』

 ファンク、ソウルのブラック・ミュージックを洗練されたスタイルで昇華させた1曲目「SHININ' YOU, SHININ' DAY」からしてほとばしる才能を感じさせるアルバム。この曲の流れるようなメロディアスなギターソロを聴いただけでもCharが尋常じゃない才能の持ち主だということが一発で伝わるはずだ。しかもヴォーカルに色気があり、アレンジメントが完璧である。
 「SHININ' YOU, SHININ' DAY」とCharを象徴すると言っても過言ではない「SMOKY」は名曲中の名曲で、ムスタングを弾き倒しているソロも神がかっているし、ロックの熱さと洗練されたクールネスが融合したサウンド、グルーブは20歳過ぎにして、誰もマネできない境地に到達している。Charの音楽に触れるたびに思うことは歌メロだけでなく、ギターのフレーズも口ずさみたくなるぐらいに歌っていることだが、この曲もまさにそう。キメの部分や、ギターの刻みまで口マネしたくなるほどである。これらの曲は先ほど触れたJONNY LOUISE& CHAR、PINK KLOUDと間違いなく地続きにあり、そういう意味でもCharの原点。日本語の歌詞のデビューシングル「NABY BLUE」や「空模様のかげんが悪くなる前に」などの甘い声質をフィーチャーしたウエットなナンバーも歌えるアーティストだからこそ、その後の大ブレイクにつながったのだろうし、いろいろな意味でCharはここから開花したと言えるだろう。ロック、ファンク、ジャズ、フュージョン、歌謡曲のエッセンスをブレンドさせたその手腕、センスに脱帽の一枚でもある。

著者:山本弘子

OKMusic編集部

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