POLYSICSのメジャーデビュー作
『NEU』からあふれ出る
ニューウェイブ本来のスピリッツ

『NEU』(’00)/POLYSICS

『NEU』(’00)/POLYSICS

ここ数カ月間、結成○周年やデビュー○周年のアーティストのリリースが渋滞していて、レコ発タイミングに間に合わなかったが(御免!)、10月に通算17枚目のアルバム『In The Sync』と、同一メンバーによる別バンド、The Vocodersによるアルバム『1st V』とを同時発売したPOLYSICSを今週の邦楽名盤コラムにご登場いただく。そのコスチュームや独自のスタンスから日本国内では一時期はキワモノ視されるようなところもあったと聞くが、積極的な欧米でのライヴ活動、音源リリースが奏功して、世界中にファンを持つ。日本を代表するロックバンドと言っても決して過言ではない。

所謂テクノポップに留まらない

あんまり意味があることでないのは分かっているのだけれど、ついついしちゃってるのが音楽のジャンル分け。活字の場合はそうしないとなかなか説明しづらいこともあって、仕方がなく使用している部分も少なくないわけだが(言い訳御免)、ことロック、ポップスに関しては本来そんなに細分化されるものでもなかろうし、そもそも演者毎、楽曲毎にその本質がそれほど変わるわけでもないのだから、若干不毛なところもある。

後発のアーティストによるカバー楽曲を例に挙げると、それがよく分かるのではないかと思う。例えば、のちにOtis ReddingやElectric Light Orchestra、Yellow Magic Orchestra(以下YMO)がカバーしているThe Beatlesの「Day Tripper」(1965年)。それぞれのカバーバージョンは、言ってしまえば、順にソウル、プログレ、テクノポップに分類されるわけだが、「Day Tripper」は「Day Tripper」であって、それぞれ拍の取り方、サウンドの構成、音色などは違うものの、メロディーや歌詞といった楽曲の本質が(大きく)変わっていないことは誰の耳にも明らかである。ロックンロール(あるいはロック)とソウルはR&Bから派生したものだし、プログレはプログレッシブロックの略称であるからその起源は言うまでもなかろう。テクノポップはもともと実験的ロックを指す“クラウトロック”なる言葉で語られていた西ドイツのバンドのひとつで、その開拓者とも言えるKraftwerkの音楽性を示した和製英語という説が濃厚である。つまり、源流はひとつである。

この際だからついでに言うと、YMOもまたさまざなアーティストにカバーされていて、ごく最近のトピックで言えば、槇原敬之が10月23日に発売したカバーアルバム『The Best of Listen To The Music』の1曲目に「君に、胸キュン。」を選んでいる。世界規模で言えば、「Behind The Mask」はMichael Jackson、Eric Claptonにカバーされているし(前者は『MICHAEL』(2010年)収録、後者は『August』(1986年)に収録されている)、個人的にはTHE MAD CAPSULE MARKETSの「SOLID STATE SURVIVOR」(『SPEAK!!!!』収録・1992年)が印象深い。Michael Jackson、Eric Clapton、そして槇原敬之の楽曲もまたさまざまなアーティストによって、さまざまなかたちでカバーされているのはみなさんよくご存知のことであろう。アーティストが創造してきた楽曲の本質は脈々と受け継がれている。考えてみれば、The Beatlesの1st『Please Please Me』、2nd『With the Beatles』、それぞれの収録曲はカバーが半分だし、そもそもロックはそうしたことを運命付けられているのかもしれない。ちょっと話がズレた。カバーの話はここまで。

今回改めてPOLYSICS の音源を聴き、過去何度か拝見した彼らのライヴを思い起こすと、やはりジャンル分けの不毛さといったようなことを考えてしまった。その風貌やバンド名から、彼らは日本で言うところのテクノポップの影響が色濃いバンドであると語られることが多い。彼らの公式サイトのプロフィール欄にはこうある。[1997年、アメリカのNew Waveバンド“DEVO”に憧れたハヤシが高校生の時に結成。バンド名の由来は、KORGのシンセサイザー“POLYSIX”から。全員揃いのツナギにバイザーという奇抜な出で立ちに加え特異なパフォーマンスと、爆音ギターとシンセやヴォコーダーなどのコンピューターミュージックを融合させた唯一無二のサウンドで一躍注目を浴びる](公式サイトから抜粋)。“DEVO”で画像検索してもらえば一目瞭然。DEVOはメンバー全員が同じツナギ(というか、どこか防護服みたいな感じ)を着用しており、サングラスというよりはサンバイザーといったほうがいい目隠しみたいなものを、これまたメンバー全員で着用している時代もあった。POLYSICSはそれをほとんど拝借したと言っていい。バンド名も上記の説明の通りで、少しでも音楽に詳しい人ならピンと来る名前である。ただ、こうしたことから、簡単にPOLYSICSを所謂テクノポップという括り方で見てしまうと、このバンドを見誤る。彼らはDEVOの影響下にあることは間違いないものの、そのエピゴーネンなどではまったくない。それは『NEU』を聴けばよく分かる。テクノポップと形容するには、本作はあまりにも奔放でエッジーなのだ。

OKMusic編集部

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