ORIGINAL LOVEの『風の歌を聴け』は“このグルーブを聴け!”と言いたくなる名盤

    
今年の6月にメジャーデビュー25周年を迎えるORIGINAL LOVEが6月1日にニューシングル「ゴールデンタイム」をリリースし、6月18日の宮城を皮切りに全国8カ所で『25周年アニバーサリー・ツアー』を開催する。今回のシングルには書き下ろしの新曲の他に1994年に発売されたヒット曲「朝日のあたる道 AS TIME GOES BY」をオールドジャズ風にアレンジした「朝日のあたる道in a tuxedo」が収録されているというが、ORIGINAL LOVEの名盤とで真っ先に思い浮かぶのはやはり、この曲が最後に収録されている『風の歌を聴け』だ。世代を超えて長く愛され続けているアルバムであり、心地良いグルーブに貫かれた楽曲たちはノンストップで聴いても飽きることがない。

    渋谷系と定義付けられた当時のORIGINAL LOVE

    1993年にドラマの主題歌に起用された「接吻kiss」のヒットにより、世の中の注目を集めたORIGINAL LOVE。当時の音楽シーンのことを知っている人は、“渋谷系”という言葉を懐かしく思い出すだろう。そのムーヴメントのきっかけとなったのが小山田圭吾と小沢健二によるネオアコ系ユニット、フリッパーズ・ギターで、ピチカート・ファイヴ(田島貴男は一時期、ピチカートのメンバーであり、ORIGINAL LOVEとの活動を並行して行なっていた)、ORIGINAL LOVE、カヒミ・カリィなどが、渋谷系に位置付けられ、都会的でオシャレなポップミュージックとして若者に認知されていった。ジャンル(?)の発信源は渋谷の大型CDショップ、HMVだとも言われているが、曖昧な“渋谷系”という枠に入れられることを嫌うアーティストは当然のことながら多く、ORIGINAL LOVEの田島貴男はもライヴのMCで“渋谷系とは呼ばないでほしい”と発言して話題になった。その時の言葉に憤りが込められていたのは覚えているし、会場を出てからも頭から離れなかった。たぶん、来場者はORIGINAL LOVEの音楽を一過性のモードな音楽だとは捉えていなかっただろうから、ファン以外の人に向けて思わず放った言葉だったのだろう。今の時代だったらSNSで大騒ぎになっちゃうんだろうか。
     ちなみに田島貴男を中心に結成されたレッドカーテンがORIGINAL LOVEに名前を変更し、活動を開始したのは1987年で、1991年にメジャーデビューを果たす。メンバーの脱退を経て、田島貴男、木原龍太郎、小松秀行の3人にドラマーとして佐野康夫がレコーディングに参加して制作されたアルバムがオリコンチャートの1位を記録した『風の歌を聴け』である。最初に本作を聴いた時の衝撃は1曲目の「The Rover」抜きには語れない。砂埃が上がるようなファンキーなサウンド、小松のクールなベースライン、佐野のシャープなビート、田島の熱を帯びたヴォーカル、おしゃれというよりはむしろ暑苦しいの一歩手前のギリギリ感がたまらない。
     『風の歌を聴け』をリリースした後、ORIGINAL LOVEはレコード会社を移籍。アルバムを1枚リリースするものの、メンバーは抜け、それ以降、ORIGINAL LOVEは実質、田島貴男のソロユニットになる。昨年、リリースしたアルバム『ラヴァーマン』では小松と佐野のリズムセクションが復活しているが、『風の歌を聴け』の頃のようなサウンドを聴きたいというリスナーの声が多かったのも復活の一因だったという。それぐらい、このアルバムは強烈な印象を刻み込んだのである。

    アルバム『風の歌を聴け』

     都会の景色と灼熱のサバンナの大自然が交錯するようなゴキゲンなファンクチューン「The Rover」で幕を開ける。田島の野生的で色気のあるヴォーカルも素晴らしく、間奏でラテンのエッセンスが盛り込まれているところも聴きどころのひとつ。続く「It’s a Wonderful World」はカーティス・メイフィールドにインスパイアされて作ったソウルフルな曲で、ファルセットで終始歌われるナンバー。以前からスタンダードなポップミュージックを生み出していきたいと発言している田島貴男だが、日本のアーティストで例えるなら山下達郎の流れも汲んでいるこの曲もメロディー、グルーブが素晴らしい。そして、ブラジリアンテイストに移行する「The Best Day of My Life」は日常の中の至福の瞬間を切り取った曲だ。
    そんな前半の3曲を聴くだけでも細胞が活性化するような感覚を覚えるが、その覚醒する感じと心地良さは最後まで途切れなく続いていく。6分前後の曲が多いにもかかわらず、長さを感じさせないのも楽曲の完成度の高さと心地良いグルーブゆえだろう。ホーンセクションとパーカッションの絡み方も絶妙だし、聴けば聴けば確実にはまる一枚だと思う。声そのものが官能的な田島のヴォーカルが活きるメロディアスな「二つの手のように」、生きて死にゆく人たちに捧げたパーカッシブでゴスペル調の「フィエスタ」と熱いファンクチューン「Two Vibrations」は1曲目の「The Rover」同様、ライヴ感たっぷりの演奏がパッケージされている。血が身体の中を巡っていくような躍動感ゆえ、生と隣り合わせにある死を浮き彫りにさせる本作は、木原龍太郎作のORIGINAL LOVEらしい「Sleepin’ Beauty」を経てヒット曲「朝日の当たる道 AS TIME GOES BY」でエンディングを迎える。冒頭で熱風の中を走っていた車が場面を変え、温かく穏やかな風の中、愛する人と海へと向かっていくかのようにーー。ORIGINAL LOVEとともに最高にハイでソウルフルな旅が楽しめる名盤である。

    著者:山本弘子

    10コメント
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    • RT @NoobK4876: もちろん議論の余地なく名盤です!が、他のアルバムも方向性違えど負けないくらい良いんだよw ORIGINAL LOVEの『風の歌を聴け』は“このグルーブを聴け!”と言いたくなる名盤 https://t.co/hulyq03NLA
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