クレイジーケンバンドの
『Soul Punch』の雑多な音楽性に
横山 剣の原体験を見る

『Soul Punch』(’05)/クレイジーケンバンド

『Soul Punch』(’05)/クレイジーケンバンド

“東洋一のサウンドクリエイター”を自称する横山 剣率いる“東洋一のサウンドマシーン”クレイジーケンバンドが8月7日、ニューアルバム『PACIFIC』をリリースした。バラエティー豊か…いや、バラエティー豊かすぎる音楽性を有するバンドなだけに、いい意味で今作も推して知るべしといったところで、我々の期待を裏切らない作品となっているのは確実であろう。当コラムでは最大の売上を記録した2005年の7thアルバム『Soul Punch』から、彼らの特徴を改めて検証してみたい。

雑多とも言える音楽性を持つ

本稿ではWikipediaからの情報を入れ込む時は概ねカッコ書きで“[]はWikipediaからの引用”との注釈を入れるよう心掛けている。先日、とあるアーティストに取材させてもらった時、「Wikipediaに○○○○って書いてまして…」なんて軽口を叩いたら、「(Wikipediaは)わりと間違ってるんですけどね」と苦笑いしてたのだけれども、そういうことだ。Wikipediaは便利だが、そこにある情報が公式なものとは限らないことは肝に銘じておかなければならないのである。

さて、クレイジーケンバンド。このバンドをWikipediaで調べると、そこの“概要・特徴”に以下のような文がある。[ロックンロール、ポップス、歌謡曲、ソウル、ジャズ、ファンク、ブルース、渋谷系、演歌、ロカビリー、ラテン、ボサノヴァ、R&B、AOR、ヒップホップ、アジア歌謡等、多くのジャンルの要素を柔軟に取り入れた自由奔放なミクスチャー音楽が特徴で、幅広い年代のファンを持つ]([]はWikipediaからの引用)。うん。これは間違いないだろう。ホントそういうことだと思う。

クレイジーケンバンドほど雑多な音楽性を持つバンドはなかなかいないだろう。自称“東洋一のサウンドクリエイター”“東洋一のサウンドマシーン”の肩書は決して伊達ではない。東アジアはもちろんのこと、メジャーなエンターテインメント業界で考えると、そのバラエティー豊かな音楽性は世界的に見ても珍しいんじゃないだろうか。今回紹介する7枚目のオリジナルアルバム『Soul Punch』もまさしくそうだ。全21曲収録という大ボリューム。かつバラエティー豊か。簡単にザッと解説してみる。

M1「男の滑走路」:ブラスとストリングスがゴージャスに配されたビッグバンドジャズ風ナンバー。スケール感はオープニング曲に相応しい。
M3「魂拳 -Soul Punch-」:ヒップホップ要素を感じるソウルナンバー。インド的音階、アフリカンなビート、Cメロはラップ調と、ごった煮感が強い。
M4「逆輸入ツイスト」:文字通りのR&R。サーフミュージックっぽいというか、スパイ映画の劇伴っぽいというか、はっきり言ってしまえば、Barrett Strongへのオマージュを感じるギターリフがスリリングだ。
M5「京浜狂走曲」:ミディアムのシャッフル。…というよりも、“エンヤトット”にも近いリズムも含めて、どこか日本民謡っぽい印象もある。
M6「Sweet Seoul Tripper」:ボサノヴァタッチのスローなナンバー。ヴォーカルの音価があまり変わらないからか、歌がラップっぽい。
M7「37℃」:M6同様スローなボサノヴァで、これも歌がラップ調だが、硬質なスネアの音、淡々と繰り返されるギターリフの効果で、ループミュージックっぽい表情を見せる。
M8「Loco Loco Sunset Cruise」:ミディアム。ヴォーカルはわりと歌い上げているものの、全体的にはさわやかさを感じさせるナンバーに仕上がっている。
M9「American Dream」:個人的にはその跳ねた感じにThe Nolansを思い出したポップチューン。いつぞやの時代のアイドルソングのようでありつつも、ラップを入れたりすることで、しっかりアップデイトしている印象。
M10「横山自動車」:カッコ良いR&R。間奏のサックスと含めて展開はベタだが、イントロとアウトロにシタールが入ってて、ちょっとサイケ。
M11「Almond Jerry」:アップチューン。これもシタールを入れて(シタール風な音色のギターかも?)、フルートも入っているが、あんまりサイケデリックロックな感じがしないのがいいところかもしれない。
M12「ロドリゲス兄弟」:ラテンのリズムを入れて(マンボか? サルサか?)、ムード歌謡のようなメロディーと相俟って独特のテイストに仕上げている。
M13「フジヤマ・キャラバン」:「TABOO」を彷彿させるラテンジャズっぽいインスト曲。後半から転調してアップテンポになる。
M15「Transistor Gramour Girl」:TOKIOに提供した「トランジスタGガール」のセルフカバー。結構ベタなR&Rで、歌い方は完全にElvis Presley。
M16「Summer Summer Freeze」:これもまたボサノヴァタッチのメロウチューン。歌も間奏のギターソロもとてもメロディアス。
M17「Chatango Cha Cha Cha」:歌詞からすると、チャチャとタンゴを混ぜた“チャタンゴ”なるジャンル。NHK『みんなのうた』で流れていても不思議じゃない親しみやすさを有している。間奏のサックスが◎。
M18「タイガー&ドラゴン - 完全版 -」:こぶしの効いた歌唱で知られる、バンド最大のヒット曲。キーボード、フルートが雰囲気を醸し出している。
M20「流星ドライヴ」:さわやかさと疾走感が同居した様子は“渋谷系か!?”と見紛うほど。だが、歌が入るとこのバンドの楽曲以外の何物でもない。
M21「California Roll」:ブラスの入れ方を含めて正調なR&B~ソウルと言えるバラードナンバー。フィナーレに相応しい渋めな印象。

短めのインタールードと言える“eye catch”の3トラックは除いて、本当に思い付くままに書いてみた。ジャズとかヒップホップとかR&Rとかサイケとかラテンとかボサノヴァとか、重なるジャンルがないわけではないが、これだけ別れれば十分にバラエティー豊かと言っていいだろう。そもそも“eye catch”を含めて全21曲だ。これでひとつもジャンル被りがなかったとしたら、それは単独アーティストのアルバムではなく、コンピレーションアルバムやオムニバス盤だろう。

OKMusic編集部

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