GAUZEのスリリングなサウンドが
真っ直ぐに飛んでくる
日本ハードコアパンクの傑作
『EQUALIZING DISTORT』
パンクをより凝縮したサウンド
ここからは、『EQUALIZING DISTORT』について述べてみたい。本作に関してもまた一次情報が見当たらなかったため、100パーセント筆者の主観であることを事前に申し上げておく。ハードコアパンクというと、読者のみなさんはどんなイメージを抱くだろうか? 字義通りに捉えれば、パンクという音楽ジャンルの中の文字通りの強硬派ということになるし、それこそWikipediaによれば[パンク・ロックのロックン・ロール色を排し、より暴力性や攻撃性を強調したジャンルである]とある([]はWikipediaからの引用)。もっと噛み砕けば、パンクほどには親しみやすさがなく、騒々しく、危険な音楽となるだろうか。実際、そう思っている人もいらっしゃるかもしれない。そう認識されているのであれば、それはそれでいいのだろう。ただ、今回『EQUALIZING DISTORT』を聴いて、これはパンクから何かを排し強調したということではなく、パンクをより凝縮した音楽ではあると思った。誰もが一聴して感じるのはテンポの速さだろう。初期ロンドンパンクがスローモーに感じるほどに、全曲、性急と言っていいリズムが刻まれている。大半がブラストビートだ。しかし、全てそれ一辺倒かと言えば、そうではない。M4「勝手にさらせ」やM5「Fact and criminal」が分かりやすいけれど、イントロでは各楽器の音符の数が減っていて、少しテンポを落としたように聴こえる。これによって、速さが増したようにも感じるし、M3「Thrash Thrash Thrash」からM4に移る時、あるいはM4からM5へ移る時に、安堵…という言い方は適切ではないけれど、それに似た、アルバム作品ならではのメリハリを強く感じるのである。速さはハードコアパンクにとって、GAUZEの音楽にとって重要な要素であろうが、闇雲に速さだけを追い求めているのではないことがこの辺から想像できる。