LUNA SEAが創る
サウンドの臨界点の、
さらなる先を顕した大傑作『STYLE』

LUNA SEAらしさと実験性が同居

今、多くの人が感じるLUNA SEAらしさ。本作でそれは完成されていたと筆者は見る。何と言っても、先行リリースされていたシングル曲である。M8「END OF SORROW」とM9「DESIRE」。前者が1995年3月リリースの7thシングルがそれで、1995年11月リリースの6thシングルであることは前述の通り。ともにシンコペーションを多用したナンバー──まず、そこが何ともLUNA SEAらしい。先日、取材させてもらった某ビジュアル系バンドの音源に、これらと同様にシンコペーションを多用した楽曲があって、その辺を指摘すると、“僕の中ではLUNA SEAさんなど、いわゆるビジュアル系バンドの楽曲はシンコペーションなんですよ”と屈託なく話してくれた。彼らなりのリスペクトであり、オマージュがそこにはあった。LUNA SEAをビジュアル系とするかどうかは意見が分かれるかもしれないが、それは一旦脇に置いておくとして、30年近く経っても、後発のバンドがシンコペーションにLUNA SEAらしさを感じていたということは、それだけ楽曲の印象として強烈に印象付けられているということだろう。筆者も同じ想いである。いわゆる、喰ったリズムでグイグイと進んでいく楽曲は、最も勢いに乗っていたLUNA SEAを象徴するものと言える。

加えて言うと、イントロでモノローグが入るところや、サビの後半でブレイク(《あぁ トキメキ を…》《あぁ セツナサ を…》の箇所)、もっと言えば、そのブレイクの背後ではクリアトーンのギターのアルペジオが鳴っているところなども実に彼ららしい。ある意味で“けれん”と言ってもいいサウンドメイキングであり、今聴いても実にカッコ良い。「END OF SORROW」がシングルリリースされた時の某音専誌のインタビューでSUGIZOは、“無理してキャッチーに作ったわけでもないし、シングルを想定して作ったわけでもないし、曲の出来上がり方からアレンジまで、何から何まで本当に自然の状態でできた”と振り返っていた。この発言からは、メンバー自身も同曲に自分たちらしさを感じていたことが分かると思う。

そうした今もLUNA SEAらしさを感じるもの──言ってしまえば、“LUNA SEAメソッド”のあるナンバーだけでなく、縦横無尽に各音を折り重ねている楽曲を収録しているのが本作『STYLE』でもあろう。オープニングであるM1「WITH LOVE」からそれが表れている。アナログレコードのノイズから始まるロッカバラードではあって、オールドスクールなナンバーだと思って聴いていくと、まったくその範疇に収まらない楽曲であることが徐々に分かってくる仕様。ドラムは淡々としているし、ベースは個性的なフレーズではあるものの、そこまで突飛な演奏ではないと思われるが、その上に乗るギターは奔放としか言いようがない。インダストリアル的なノイジーさを見せたと思えば、深めのディレイがかかった独特の残響音を出し、かと思えば、間奏のソロはアコギが鳴らされ、さらには時にバイオリンも聴こえてくる。しかも、その奔放の背後では、堅実なサイドギターのアルペジオが鳴っている。それでいて、テンポは緩めで歌もゆったりとしているので、艶めかしさも併せ持つという──これは最大級の賛辞として述べるが、何とも奇妙、奇怪なロックチューンである。

そのM1とタイプは異なるものの、M4「RA-SE-N」もまた奇妙、奇怪なナンバーと言えると思う。サビだけ抽出するといわゆるオルタナに思える。しかし、事はそう簡単ではないのがLUNA SEAのLUNA SEAたる所以だろう。イントロからそこに至るまでのリズムが単純ではないのである。5/4拍子。よくあるロックナンバー的な感覚で聴いていくと、どこか“つんのめる”感覚があって、この楽曲がこの先どうなっていくのかと微妙に不安を覚えるような雰囲気すらある。後半では4/4拍子となり、開放感があるものの、ラストは再び5/4拍子となるので、不安感は拭えないままで楽曲は終わっていく。“「RA-SE-N」=螺旋”とは、実に上手いタイトルだと思う。1曲の中にしっかりとバンドが表現したかった世界観が広がっている。

M7「1999」もサウンドアプローチの実験性はM1に近いように思う。ほぼ全編を支配する性急ビートとサビのリフレインは、彼らがインディーズ時代からやってきたハードコアなサウンドを彷彿させるものだが、密集感だけに終始していないのは、当たり前のことながら、バンドの進化と深化を感じるところだろう。短い楽曲ながら、さまざまな音がそれとは分からないように散りばめられているようで、ヒップホップ的なアプローチもLUNA SEAというバンドに取り込まれるとこうなるという好例なのかもしれない。懐の深さが分かるM7でもある。

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着