TM NETWORKが
小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登の
三位一体であることがよく分かる
『Self Control』
欠かせない木根尚登の存在感
ただ、そうしたリフレインが後半=B面でもそのまま続いていくかと言うと、そうではないところが本作の優秀さであろう。単なるダンスミュージックだけにカテゴライズされないTMの矜持みたいなものも受け取れる。具体的に述べるなら、コンポーザーとしての木根尚登の存在感に尽きると思う。M7「Time Passed Me By (夜の芝生)」と、M9「Fool On The Planet (青く揺れる惑星に立って)」である。小室楽曲が再三言っているように、音域も狭い音符を数多く使わずにキャッチーなメロディーを創り出し、それをリピートすることだが、上記木根楽曲はそうではない。歌の主旋律に流れるようなメロディーアスがあると言っていい。“これはもうミドル~スローのバラードナンバーにするしかないでしょう!”と言わんばかりのメロディーラインを持っている。いずれの楽曲もサビでハーモニーを重ねることで、主旋律を立体的に聴かせているところも聴き逃せない。メロディーのレンジも広い。M9では、宇都宮はファルセットを聴かせている。この辺は小室楽曲では見られないところだ。
小室楽曲が先鋭的なのに対して、木根楽曲はスタンダードと言うこともできるだろうか。ロックやソウルへのオマージュも感じさせる。M7ではサイケなサウンドも聴こえてくるし、M9のタイトル(加えていうと、小室楽曲だがM3「Don’t Let Me Cry (一千一秒物語)」も同様)からはThe Beatlesへのリスペクトも垣間見えるところである。その辺の意識がどれほどメンバーにあったか分からないけれど、小室楽曲に木根楽曲が混ざることによって、アルバム自体がバラエティー豊かになり、バンドとしての奥深さを感じさせているのは間違いなかろう。小室哲哉が稀代のミュージシャンであることは疑うまでもないけれど、そこに木根尚登が加わってバンドの彩りを増し、歌を宇都宮隆が一手に引き受けることで、バラエティな中にも一本太い芯を通す。本作『Self Control』は、ザっと聴いただけでも、ロックバンド、TMの特徴をしっかりと示しているアルバムであることがよく分かる。
TEXT:帆苅智之