【ライヴアルバム傑作選 Vol.11】
黒夢の
『1997.10.31 LIVE AT 新宿LOFT』は
清春のスピリッツを
最もよく表した反骨の一枚
反骨精神全開の歌詞
また、この時期はベストアルバムの全盛期であった。バンドものだけで言っても、『TRIAD YEARS act I -THE VERY BEST OF THE YELLOW MONKEY-』(1996年)に始まり、『REVIEW-BEST OF GLAY』、LUNA SEA『SINGLES』(ともに1997年)、『B'z The Best "Pleasure"』『B'z The Best "Treasure"』、サザンオールスターズ『海のYeah!!』、『THIS BOØWY』、(いずれも1998年)と、各メーカーともこぞってベスト盤を出したし、出せばバカ売れした。今になって思うと、黒夢の『新宿LOFT』はそんな状況へのアンチテーゼだったとも受け取れる。かつて発表した音源をチョイスし並べ替えてマスタリングする。それもいいだろう。だけど、こちらは全国のライヴハウスをくまなく回っているライヴバンド。自らの楽曲は、過去の音源などではなく、ほぼ毎日、生演奏でファンに届けている。それをそのまま音源にすることは造作もない──。無論、清春はそんなことを言った記憶はない。でも、あのタイミングでライヴアルバムを出したことには、そんなプライドが感じられるところだ。ちなみに、黒夢もベスト盤『EMI 1994〜1998 BEST OR WORST』をリリースしているが、それは無期限活動停止後の1999年2月のことであった。何と言うか、しっかりとけじめをつけていた印象がある。
清春の言質を取っていないのに、なぜに本作が“自らのスタンスの誇示”だとか“ベストアルバム偏重へのアンチテーゼ”だとか思うのは、当時の黒夢の楽曲の歌詞によるところが大きい。反発、反骨精神しかを見出せないのである。
《目障りな制度が Chart 妨害 Count Down/年功序列で芽を潰して Proud Face/Break out, too Burst 染まる前に/Get out, Get up 脱走する》(M1「FAKE STAR」)。
《NEEDLESS 理解もない 第三者の言葉/僕に関する事 口を挟むのが嫌いで》《NEEDLESS 何時になれば 自由と呼べるだろう/僕に合わない物 Ah 消えて欲しい》(M3「NEEDLESS」)。
《Tragic Tragic 腐った電波で/Ugly Ugly 使ってもらう Popular》《No Thanks No Thanks むしずが走る/Is This Rocker? 子供向けタレント》(M6「DISTRACTION」)。
《物心ついた頃から/不可解で仕方がなかった/たいした文章も書けない/その癖に威張り散らしてる》(M8「C.Y.HEAD」)。
《そう、確かにDOORが開いた 僕は振り返らないでいよう/この汚い楽園は心、無くしている 無くしている/わずかな戸惑い消す様に 少年は歌ってる/誰の真似より誰の言葉より疑う事 疑う事》(M13「少年」)。
《初期衝動に 魅せられて 走り出した/僕の感性 いつまでも 閉じたくない》(M14「Like @ Angel」)。
性急なビートとエッジーなギターサウンドが相俟った“THE ROCK”なサウンドに乗せられたこんな歌詞を見たら、そりゃあ勢い熱くもなる。M8はだいぶ身に詰まされなくもないけれど(“でも、俺は断じて威張り散らしてはいないぞ!”と自己弁護するしかないが…)それはそれとして──ライヴアルバムという一時期のバンド像をパッケージしたものであるにもかかわらず、清春というアーティストの本質の一面を浮き上がらせた感のある『新宿LOFT』なのである。
TEXT:帆苅智之