SOIL&"PIMP"SESSIONS
『PIMPIN'』を聴いて思う
サブスク時代だからこそ、
この圧倒的サウンドを推す
アジテーターを擁す“デスジャズ”
SOIL&"PIMP"SESSIONSのメンバーは、タブゾンビ(Tp)、丈青(Pf、Key)、秋田ゴールドマン(Ba)、みどりん(Dr)、社長(Agitator)に加えて、デビュー時には元晴(Sax)の6名で構成されていた。社長の“Agitator”とは聞き馴染みがない方もいるだろうが、それで正解。文字どおりAgitator=扇動者で、[観客を煽ってライヴを盛り上げる役割を務める]とWikipediaにもある。海外のレゲエやスカにそのルーツがあるという。日本ではほぼ見かけないが、スカパラのファンにはかつてクリーンヘッド・ギムラが担当していたパート…というとピンとくる人がいるかもしれない。アルバム『PIMPIN'』で言えば、M1「Intro」でドラミングをバックに語っているのがそれであろうし、M5「First Lady」、M7「Mature」、M8「16 Blues」で登場するモノローグ(に近いスタイル)が分かりやすい。最も分かりやすいのはM11「殺戮のテーマ」だろう。まさに扇動と呼ぶに相応しいシャウトを示している。いずれも歌ではないのでヴォーカリストではないのは当然としても、こうしたパートを設けているところに、彼らならではの独自なスタイルのうちだしと、それに対する強烈な矜持を感じるところではある。
彼らの音楽はジャンル分けすればジャズとなる。“強いて言えばジャズ”ではなく、どう聴いてもジャズだ。ただ、ロックやヒップホップとは比べものにならない歴史を持つジャズであって、その歴史の中で相当、多岐にわたって進化しているので、ひと口にジャズと言うのも乱暴かもしれない。彼らのジャズは少なくともバーでゆったりと聴くようなタイプでもないし、ディキシーランドジャズやニューオーリオンズジャズ、あるいはスウィングジャズとも異なる。ゆったりと渋く鳴らされるものでもないし、甘く軽快なものでもない。彼ら自身は“デスジャズ”と呼んでいるようだが、その言い方が一番しっくりくる。多くの人が想像するようなジャズというよりは、ジャズ本来の革新性を残しつつ、先鋭的なロック方向にアップデイトしたような感じだろうか。勢いとラウドさ、ヘヴィネスは、パンクにもヘヴィメタル、ハードコアヒップホップにも引けを取らないものであろう。