『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』

    『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』

    Janne Da Arcの魅力が詰まったメジャ
    ーデビュー作『D・N・A』

    『D・N・A』(’00)/Janne Da Arc

    『D・N・A』(’00)/Janne Da Arc

    yasuの体調不良により、Acid Black Cherryの全国ツアーが全て中止。体調の回復まで期間を定めずに活動そのものを休止することが先頃、発表された。ファンにとってはもちろんのこと、本人にとっても残念なアクシデントであるが、今は回復、復活を祈るしかない。本稿では彼のキャリアのスタート地点であり、母体でもあるJanne Da Arcを振り返ってみようと思う。メジャーデビュー作『D・N・A』は現在の彼の活動にも通じる音楽性を見出せるばかりか、才能あふれるバンドであったことが分かる傑作である。

    結成10周年を機にバンド活動を休止

    先週、yasuの体調不良により、8月14日からスタートする予定だったAcid Black Cherry(以下ABC)の全国ツアーが全て中止されることが発表された。《yasuの長年の活動から生じた頚椎の損傷、それに起因する身体各所への痛みなど、複合的な症状の併発》とのことで(《》は所属事務所から発表された声明文より抜粋)、yasuの体調が回復するまで、期間を定めずに活動を休止するという。活動休止は本人も断腸の思いだと言うし、待っていたファンにとっても実に残念なことであろうが、損傷箇所が箇所だけにこればかりは致し方ない。元気に復活するのを待つしかない。yasu本人にも、焦らずに、しっかりと治療に専念してほしいところである。
    さて、この一報をネットで知った時、極めて悲しいニュースではあったものの、個人的には悲報の中に「おっ?」と目を見張る文字を見つけた。各ネットでの本文の出だしは概ねこうであった。《Janne Da Arc・yasuのソロプロジェクトであるAcid Black Cherryが…》。そう、そもそもABCはJanne Da Arcのyasu(Vo)のソロプロジェクトなのである。Janne Da Arc(以下JDA)の活動休止から10年。頭では理解しているつもりでも、今はABCでyasuのことを知ったというファンも少なくないなどという話を聞くと、ABCを本家のように錯覚する瞬間がなくもなかったが、こうして活字になると、変な言い方だがJDAの存在を確信させられた。ABCもyasuもJDAありきのプロジェクトであり、ヴォーカリストなのである。
    JDA は1996年5月、Yasu、You(Gu)、ka-yu(Ba)、kiyo(Key)、shuji(Dr)の5人で活動を開始。全員、大阪府出身の同学年で、yasu、ka-yu、youは中学の同級生、yasu、you、kiyoは高校が同じで、JDA以前からともにバンド活動をしていた仲であった。メジャーデビューは1999年5月。リリース作品は早くからチャート上位に顔を出し、2002年には日本武道館を実現。2005年には大阪城ホールで凱旋ライヴを決行した上、シングル「月光花」がロングセールスを記録し、その人気を確固たるものにした。2006年5月にはさいたまスーパーアリーナで10周年記念ライヴを行なったが、その翌年に結成10周年を節目にソロ活動を発表。前述のABCの他、you、ka-yu、kiyoもソロアルバムをリリースした。以後、各々の作品やライヴでのサポートにメンバーが参加したことはあるが、ここまでの10年間、JDAとしての活動は1度も行われてはいない。そんな中で、とりわけyasuは、音源にしてもライヴステージにしても、この10年間、精力的に活動してきたので、筆者がABCを本家と錯覚したというのは半分冗談にしても、ABCでのyasuしか観たことがないという若いリスナーが増えているのは間違いなかろう。その点では(不謹慎を承知で言うが)今、JDAを再検証するには悪くないタイミングではないだろうか。

    yasu王道のメロディーライン

    デビューアルバムにはそのバンドの全てが詰まっているとはよく言われることだ。JDAの『D・N・A』もかなりいい線をいっているのではないかと思う。まずyasu作曲のナンバーのメロディーラインを追えば、それが分かる。M2「Vanity」、M4「EDEN 〜君がいない〜」、M10「RED ZONE」──奇しくもシングルカットされた楽曲ばかりだが、サビメロのキャッチーさといい、楽曲の構成といい、今となるとこれはyasu王道であることが分かる。親しみやすい…というのではなく、半ば強引に耳をこじ開けて来るような旋律。特にM4「EDEN 〜君がいない〜」ではもっとも印象的なサビメロを冒頭に持ってきて──これ自体は所謂“サビ頭”というよくある手法ではあるが、これをアコースティック→バンドサウンドで二度繰り返すという、あまり他ではお目にかかれない構成にチャレンジしている。しかも、Bメロ、Cメロで転調させているので、サビが印象に残ること、この上ない作りだ。yasuはABCにおいてカバーアルバムを発表し続けており、ここからも彼がパフォーマーではなく、ヴォーカリスト=歌の人であることが分かるが、これはJDA初期から確認できるバンドの特徴である。

    バンドアンサンブルを強調したサウンド

    歌が立っていることがJDAの特徴のひとつであることは間違いないが、無論、彼らはそれだけではない。そのサウンドは前述の5人によって構成されている上、5人バンドでよくあるツインギターではなく、キーボードを有している。つまり、メンバーが担当するパートが被らない。これがJDA最大の特徴であり、これはそのサウンドに如何なく反映されている。M1「Deja-vu」からしてそうだ。ベースから始まって、そこにドラムスが重なり、ギター、キーボードと続いて、ワイルドなヴォーカルのシャウトが聴こえてくるインストナンバー。途中リズムが変わったり、アコギを入れたりしているが、曲自体はわりと単純で、それ故にロックバンドらしいカタルシスを感じることができるのだが、1曲目にこうした楽曲を配置したところに、JDAのバンドとしての矜持を感じることができる。こうしたサウンドアプローチは、M3「ファントム」のイントロと間奏でのギターとキーボードとの絡み、M5「child vision 〜絵本の中の綺麗な魔女〜」で聴かせる明らかに不穏な音作り、あるいは柔らかさとヘヴィを兼ね備えたM7「桜」に見出せるが、やはりM6「Stranger」が最も印象的であろうか。Bメロでギターとキーボードがそれぞれに細かいフレーズを重ね合わせているのも面白いが、この楽曲は何と言っても間奏。ボトムを支えるリズム隊変拍子気味で、中盤とアウトロ近くではフレーズを変えていたり、メンバーがそれぞれの個性を楽曲に収斂させていく様子が見て取れる。フュージョン風のギターとエレピも面白い。アンサンブルが複雑なのでその後ライヴで演奏しづらい楽曲となったという若さゆえの逸話もあるようだが、「バンドとはこういうものだ!」ということを体現した果敢なチャレンジ精神は大いに買いたいところだ。

    妖艶かつテーマを選ばないリリック

    最後にJDAの歌詞について記そう。ここにもまたバンドの特徴が表れている。
    《幾つもの夜が教えてくれた君の事/ベットの中では少しだけ意地悪になる》《今夜は彼の腕の中で夢を見るの?/できる事ならそばにいて/夢見がちな僕の欲望/それとも大人のマナーに背く火遊びに疲れただけ?》(M2「Vanity」)。
    《胸の開いたDress 僕が君に送るのは/着せたいからじゃない/そのDressをただ淫らに/脱がせたいだけ/外で会った君の/感じがいつもと何か違って見えるのは/裸じゃない君だからかもしれない》(M8「Lunatic Gate」)。
    《きのうよりも綺麗に見える君は/メンソールでため息をつきながら》(M10「RED ZONE」)。
    《銀のリング捨てた細い指で 君は誰に触れるの?/甘い過去の時間さえも 今は胸をしめつけ》(M11「ring」)。
     この辺はABCのファンもご存知のことと思うが、yasuの書く歌詞には艶っぽいものが多い。簡単に言えばエロい。しかも──誤解を恐れずに言えば、どこか演歌っぽい。《ベットの中では少しだけ意地悪》とか、《大人のマナーに背く火遊び》とか、《メンソールでため息》とか、《銀のリング捨てた細い指》とか、その言葉使いからして、なかにし礼先生の後継者のようである。このあとにyasuは、それこそ女言葉で歌詞を書くようにもなるので、『D・N・A』ではその萌芽を確認できると言ってよい。また、言葉を選ばないばかりかテーマも選ばない。
    《「そこで泣いているのは自殺した少女の幽霊で 私と同じ顔なのよ…」》《瓦礫の上で唄っている少女…あれは君の幻?/"おいで…こっちに"と僕に手招きしてる様》(M3「ファントム」)。
    《僕が泣き叫んでいても/知らん顔で面倒臭そうに/瞳を見開いて蹴り飛ばし/タバコの火を足に押しつけて/目の前で笑っているのは/絵本の中で見た綺麗な魔女?》(M5「child vision 〜絵本の中の綺麗な魔女〜」)。
     M3のモチーフである幽霊も珍しいが、M5の幼児虐待はバンドシーンどころか、エンタメ界全般を見渡しても他にはなかなかないテーマだ。こうした内容を、言葉を上位互換も下位互換もせず、英語にも逃げずに、ストレートにメロディーに乗せてポップミュージックとして成立させてしまえているのは作詞家・yasuの本質であり、JDAのポテンシャルの高さの証明だとも思う。“ヴィジュアル系バンドの最終兵器”なるデビュー当時の触れ込みは決して伊達ではなかった。

    TEXT:帆苅智之

    アルバム『D・N・A』2000年発表作品
      • <収録曲>
      • 1.Deja-vu
      • 2.Vanity
      • 3.ファントム
      • 4.EDEN 〜君がいない〜
      • 5.child vision 〜絵本の中の綺麗な魔女〜
      • 6.Stranger
      • 7.桜
      • 8.Lunatic Gate
      • 9.Junky Walker
      • 10.RED ZONE
      • 11. ring
      • 12.Heaven's Place
    『D・N・A』(’00)/Janne Da Arc

    OKMusic編集部

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