【追悼】櫻井敦司 また会える日まで聴き続けたいBUCK-TICK 5-Songs

【追悼】櫻井敦司 また会える日まで聴き続けたいBUCK-TICK 5-Songs

【追悼】櫻井敦司
また会える日まで聴き続けたい
BUCK-TICK 5-Songs

10月19日、神奈川・KT Zepp Yokohamaでのファンクラブ限定ライヴ中に体調不良で公演を中止、その数時間後という嘘のような速さでこの世を旅立ったBUCK-TICK櫻井敦司。24日の発表までの数日、ずっと気がかりで毎晩オフィシャルサイトを確認しにいっていたんだけど…想像の上をゆく結果となってしまって、未だに認められていない自分がいます。今回、どんな基準でどの曲にしようかとものすごく悩んだけど、シンプルに自分の好きな聴いてほしい曲を選んでみることにしました。ぜひ名曲の数々をおすすめします! 櫻井さん、個人的にはその声もルックスも57歳の現在が一番素敵だと思ってます。どうかそちらでも周りの人たちを魅了し続けてください。心から深くご冥福をお祈りします。
シングル「形而上 流星」
シングル「ROMANCE」
「さくら」収録シングル「JUPITER」
シングル「鼓動」
「愛の葬列」収録アルバム『アトム 未来派 No.9』

「形而上 流星」(’14)/
シングル「形而上 流星」

シングル「形而上 流星」

シングル「形而上 流星」

BUCK-TICKに出会ったのは、2015年に開催された『LUNATIC FEST.』。何とも遅すぎる出会いだった。実は、このコラムの2022年6月13日公開『フェスや対バンに未来の最推しあり!?あの時矢が刺さったキメの5曲♪』にて「無題」を紹介させてもらっている。そこでも書かせてもらったが、初見のショーゲキ具合は本当にすさまじいもので、それは曲の良さやノリというのももちろんだが、櫻井敦司が立っているだけでステージ上の世界観という名の漂う空気が、違う世界に連れていかれたような異様な感覚になるのだ。そのライヴで「無題」の前に披露されていたのが「形而上 流星」。録画してあった当時の映像を見返してみた。櫻井さんの表情やしぐさ、その声に、独りで抱きしめている寂しさのようなものを感じて改めて思う。偉大なるヴォーカリストであるとともに、この人は表現者なのだなと。ドラマーからヴォーカリストに転向する際、メンバーに必死でその想いを伝えたことが“生まれて初めての自己主張”だったという。その時の自信の確信に、今は感謝しかない。この曲に並んでいるのは、どれも闇がなければ出てこない言葉のように感じて、なぜだか急に涙が出てきた。背中を押して励ましてくれるのではなく、共感できる想いで寄り添っていてくれる“ひとりじゃない、ここに居るよ”って。貴方の綴る、そして創り上げる世界に、きっとどんなに救われた人たちがいることか。だけどできることなら、死ぬほど美しいその声を最後にもう一度聴かせてほしかったな。

「ROMANCE」(’05)/
シングル「ROMANCE」

シングル「ROMANCE」

シングル「ROMANCE」

フェスやイベントで気に入ったバンドがいても、その後改めてライヴを観に行くとは限らない。友達から“群馬の星だったのに寂しい”という連絡がきて“特別なファンだったわけじゃないけど、一時期立て続けにライヴに行ってたことがあってダメージを受けてる”と返したら、“それファンじゃん”って。何十年も深い愛情を持ってともに生きてきた人たちがいるバンドだから、それは失礼だって思ってた。けど思い返したら、メインで参戦している以外で2年間で5回もライヴを観に行ったバンドは他にいない、ということに気づいて愕然とした。初めて観たBUCK-TICK単独でのライヴは2016年『CLIMAX TOGTHER 3rd』横浜アリーナ。印象的だったのが、この規模の会場で客席上にたくさんのシャンデリアが並んでいたこと。そこに妖しい光が灯されたのが「ROMANCE」の時でした。天井席から見るシャンデリア越しのステージは、まるで中世の館に紛れ込んでしまったようなそれはそれは煌めいた空間で、「ROMANCE」というタイトルからはイメージできない、麗しくも残酷な物語が広がっていたのを覚えている。そして、残念ながらオフィシャルを見つけられなかったのだが、この曲のMVがとにかくたまらない。これ以上ないほどゴシックで耽美な、曲とバンドそれぞれの持つ世界観と美しさを嫌という程感じることができる。機会があればぜひ観てほしい。横浜アリーナ翌日の日記にはこう書いてある。“なんだか、少しだけシアワセな気分の朝です。覗いてみた違う世界に、自分の知らなかった生き様があって、なんだかソコがしあわせな感じ。うん、また頑張って生きていこう。”あの頃も今も、素敵な生き様を見せてくれてありがとう。

「さくら」(’91)/
シングル「JUPITER」

「さくら」収録シングル「JUPITER」

「さくら」収録シングル「JUPITER」

美しいメロディーが耳に残る「さくら」。リリース日は10月30日、まさにこの時だ。櫻井さんが表題曲「JUPITER」とともに、母親との別れについて想いをしたためたこの曲。「ROMANCE」同様、タイトルから入ったらちょっとびっくりするような詞の世界ではあるが、お別れの時期がちょうど桜の花が目に入ってくる時期だったということなのだろうか。今回改めてBUCK-TICKの曲をいろいろ聴き、詞を読んでみて、“愛”そして“生と死”にまつわるものが多いことを実感。さまざまな愛のかたちに愛し方、光と闇の死生観。こんなに真っ向から向かい合って怖くないのか?とさえ思ってしまう。同時に何を聴いても悲しさに直結してしまうこのタイミング…いやこれから先は、ファンにとっては厳しい部分もあるのではないだろうか。それでも、時が経てば忘れてしまう、それが嫌だからとこの曲を残したという櫻井さんは、きっとこんな気持ちで毎回この歌を歌っていたのだろう。枯れた指が落ちるのをずっと見つめ、すぐに行くよ…と。いつか、もう一度会えるその時に上手に笑えるよう、これからも彼の残してくれた愛と笑って生きてゆこう。追伸:お母さんには無事に会えましたか?

「鼓動」(’95)/シングル「鼓動」

シングル「鼓動」

シングル「鼓動」

輝いたメロディーに優しい歌声。この曲で表現されている死生観はとっても神聖な白い光に包まれたような美しさで、少しの不安も喜びと希望に変えてくれる。そしてMVの遊び心に癒されるスローなナンバー。《生きていたいと思う 愛されているなら》《生きていたいと願う 愛されているなら》という言葉が印象的で、じゃあきっと、もっとたくさん生きていたかったのだろうな…と思わずにはいられない。でも、逆にずっと思っていたことがあって、BUCK-TICKのファンは幸せだなって。『CLIMAX TOGTHER』が12年ごとに同じ日の同じ会場で開催されていると知った時、数年で解散してしまうバンドだっているし何が起きるか分からないのに“12年”って、理解しがたいほどの驚きだった。だって、それを約束できるってすごいこと。実際すでに3回も行なわれているし。そして、毎年年末の同じ日に日本武道館でのライヴ。終演後には、他のバンドならひとつあれば十分ハッピーな翌年の活動のお知らせが山のように発表されて、なんて愛されているんだろうと羨ましくなった。昔、櫻井さんが演奏を中断してライヴハウスで前に押し寄せたファンを諭したという逸話を聞いたことがある。体調が悪くても歌い続けるけど、そこは中断したんだ…と思い出して思ってみたりした。今回、ツアー中止になった会場でメッセージボードを用意したり、ライヴはないのにツアートラックが全国に走ってくれることも含め、大切にされたらやっぱり嬉しいし、愛された記憶は永久に消えない。セクシーでチャーミングな魔王様、たくさんの愛をありがとう。

「愛の葬列」(’16)/
アルバム『アトム 未来派 No.9』

「愛の葬列」収録アルバム『アトム 未来派 No.9』

「愛の葬列」収録アルバム『アトム 未来派 No.9』

“葬列”というもの自体は、現代の日本ではもう行なわれることはないのだろう。ただ、参列するその想いというのは今でも変わらないはず。当初ここに「絶界」を、と思っていた。櫻井さんがあの日、3曲目を歌い終えてステージを後にしたというその最後の曲だ。でも…ここは「愛の葬列」で見送りたい、そんな気持ちになった。悲しみの雨音で始まり、そして終わってゆく。一体どちら側からの視点なのか、どちらかではなく終わりへの道のりをともに一歩ずつ進む、送る側・送られる側両方の想いなのかもしれない。《さよなら また会おう》と言われて《まだだよ 俺を見つめておくれ》と返す悲しみの感情が痛いほど伝わってくるのに、ライヴではその間で大きく首を横に振った。もう、切なさで胸がいっぱいになる。あの日、より深い愛の水槽の中で人生最後の一日を迎えた。もちろん無念はあるだろう。でも、運命は変えられないのだとするのなら、BUCK-TICK櫻井敦司として最高に美しいまま、何よりも愛する場所で愛する人たちと、最後の思い出に包まれたのではないだろうか、そんなふうに思うのです。だから、さよなら また会いましょう。大丈夫、変わらず見つめているよ。貴方が咲き乱れる様に、私たちは生きてゆくから。だって、パレードは永遠に終わらない。

TEXT:K子。

K子。 プロフィール:神奈川・湘南育ち。“音楽=音を楽しむ”ことを知り、好きな音楽の仕事がしたい!とOLをやめてオリコン株式会社に9年所属。旅行業界に転職後、副業で旅・エンタメ関連のWEBで執筆するも、音楽への愛が止められず出戻り人に。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。最愛のバンドが胸に空けた大きな穴とこれからも生きていく。

OKMusic編集部

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