意外性にドキッ! 納得の楽しさがあ
った特選コラボ

“feat.”表記、いつしか日本においてもメジャーになりました。音楽業界の人も“フューチャリング”と、未だに3人に1人くらいが間違えるアレです。ま、それはさておき。コラボとかが当たり前になっちゃうと、つまらない組み合わせも多かったりしますよね。でも、せっかくなら“あの人とあの人が!?”みたいなタッグ、“な、なんじゃこりゃー!!!”と驚く化学変化を感じたい。というわけで、個人的にワクワクしたコラボを近年のナンバーからお届けします。

「ともだち with 小袋成彬」('16)/
宇多田ヒカル

まずは、大好評を博している宇多田ヒカル8年半振りのオリジナルアルバム『Fantôme』から。椎名林檎やKOHHの客演ももちろん話題ですが、ここではOBKRこと小袋成彬を迎えた「ともだち」をピックアップ。2015年には水曜日のカンパネラに「ナポレオン」を楽曲提供、今年10月には自身が代表のTokyo RecordingsがプロデュースするCapesonの1stアルバム『HIRAETH』もリリースを控える。そんな新進気鋭の彼が抜擢された意味はとても大きいと思います。ダウナーなムードと品のあるブラスアレンジの中、混ざり合う美しいヴォーカルに酔いしれてください。同性愛者の目線をイメージした歌詞にしても、ビッグネームのフットワークの軽さにしても、ポップスの自由を感じさせてくれた一曲!

「みなと」('16)/スピッツ

今年、宇多田ヒカルの新作に負けず劣らず、日本語の美しさが染みたスピッツの「みなと」。ここでも楽しいコラボが実現しています。『ミュージックステーション』でのゲスト出演(タンバリンあり)も話題を呼んだスカート・澤部渡が、クレジットにある通り“whistle”(=口笛)で参加。人選含めて、この不意打ちにはやられました。スピッツ節全開なミディアムの名曲にうっとり揺られていたら、ギターソロじゃなくて口笛ソロですからね。でも、よくよく考えれば、港でひとり佇むシチュエーションにすごくマッチしていて、口笛の響きも奥深くて、大正解のアプローチなんだなとハッとしたり。そんなふうに間奏20秒を聴いてみるのもいいかも。スカートは11月に初のシングル「静かな夜がいい」をリリース。こちらもチェックを!

「溶けるようにkiss me」('16)/早見

続いては、女優/タレントとしても活躍する早見優の21年振り(!)の新曲。早見の熱狂的ファンである藤井隆がプロデュースと作曲を手がけ、彼が主宰のSLENDERIE RECORDからリリースだなんて、その事実だけで胸キュンです。しかも、仕上がりは懐古趣味ではなく、ダンサブルかつスタイリッシュで若々しい。得意のバイリンガルを駆使し、LOVE PSYCHEDELICOばりのスムーズなワードセンス(作詞は早見が担当)をもって、男らしくあってほしい女子の本音をハツラツと表現しています。何より歌の上手さが伝わるので、このコラボは大成功じゃないかと。収録されているミニアルバム『Delicacy of Love』には、気鋭のokadada、Seihoらも参加。そういう交流、やっぱり素敵ですよね。

「じゃじゃじゃ feat.ザ・プーチンズ」
('16)/吉澤嘉代子

ナニコレ的衝撃を受けたコラボは、これが今年1位かも。なんせ“妄想系シンガーソングライター”吉澤嘉代子と、“ロシア系怪電波ユニット”ザ・プーチンズのタッグとくれば、通り名からして事件の匂いムンムン! プーチンズの街角マチオが手がけた楽曲はもうブッ飛んだ内容すぎて解説しようがない感満載ですが、メジャーなマンガのネタ――《無駄無駄無駄無駄》とか《ざわ・ざわ・ざわざわざわ…》とか《か~め~は~め~》とか――がテンポよく出てきて、なおかつ謎に超ポップなので、どっちのアーティストも知らなくても聴けちゃうのは間違いありません。運命の人が戦ってばかり(!?)な中、翻弄されまくる吉澤も新鮮。初のコラボアルバム『吉澤嘉代子とうつくしい人たち』に入っています。

「お嫁においで 2015」('15)/加山雄
三 feat.PUNPEE

近年はTHE King ALL STARSとして精力的に活動し、すっかり音楽フェスの常連になった加山雄三。そんな若大将の名曲「お嫁においで」を、今のJヒップホップシーンを引っ張るPUNPEEがリミックスした、まさにワクワクのコラボです。もうすぐ80歳の大御所が若きアーティストに敬意を払う姿勢、ここに来てラップへ興趣が沸くバイタリティーが本当にすごい!  いやはや、あの歌謡曲が日本語ラップとこうやって邂逅するなんて。もちろん“結婚”がテーマのリリックだし、弾むベースラインも、愛らしいダメ男っぷりも、この曲が“じいちゃんの部屋から聞こえてくる”っていう発想も、どこを取ってもハッピーであふれています。ふたりの共演MVが、また実にチャーミングな仕上がり。

著者:田山雄士

OKMusic編集部

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