"挑戦"の二文字を胸に刻んだあなたに
贈る5曲

あれほどきれいだった桜の花びらが、風雨で地面に落ちて茶色にくすんできた。4月も中旬をすぎると、新生活にちょっとだけ馴染み、これから頑張ろう!と鼻息荒くする人もいるだろう。あるいは、4月に決意を新たにして、何か新しいことにチャレンジしよう!と奮い立つ人もいるかもしれない。今回はいろんな意味で"挑戦的"なアプローチを込めた楽曲を紹介したい。そして、自分の心境と照らし合わせて、発奮材料にしてください!

1.「knife」(’15)/04 Limited Saz
abys

"フォーリミ"の愛称で親しまれている名古屋発の4人組で人気、動員ともにうなぎ上りの要注目バンド! 今年も開催されるPIZZA OF DEATH主催のイベント『SATANIC CARNIVAL』にも2年連続出場するなど、パンクシーンはもちろん、ギターロック系バンドとも対バンを重ね、幅広いシーンから熱いラブコールを送られている。今月出たばかりの初フル作『CAVU』は、そんなバンドの多様性が爆発した一枚だ。とりわけ「knife」は一番の変化球なのにリード曲という大胆な攻めっぷり。生々しい歌詞と連動したラップ風ヴォーカル、ハードコア風味のコーラスも刺激的で、エッジ際立つ熱いロックナンバーに仕上がっている。この曲を入口に他の楽曲も聴いてほしい。

2.「未来」(’15)/Drop's

札幌在住のキーボード奏者を含む5人組ガールズバンド。彼女たちの4曲入りニューシングルは、春という季節にぴったりのさわやかなサウンドを鳴らしている。音楽的には渋味の効いたブルージーなロックをベースに、ソウルフルなヴォーカルも特徴的で唯一無二のオリジナリティーを輝かせている。この表題曲は穏やかなテンポでじっくり攻めた曲調になっている。従来の渋さは引き継ぎながらも、澄んだ青空に吸い込まれていくような壮大なスケール感を放つ。いままでになかったテンポやリズム感に挑戦した1曲だが、きっちりポップに着地させている点がいい。情景描写豊かな歌詞と曲調の雰囲気で、そこはかとなく“ラヴソング”を臭わせる手法も彼女たちらしい。

3.「walk」('15)/NoGoD

NoGoDの結成10周年を祝した2枚組ベストアルバム。この中に唯一書き下ろされた新曲が収録されている。それが「walk」で、これが涙腺を激しく揺さぶる感動のバラードなのだ。いや、曲調的にはだいぶ攻めたパートもあるが、バラードと呼ばせてほしい。振り返れば、ビジュアル系という枠組にとらわれず、ヘヴィメタル、歌謡曲、ポップスと自分たちのルーツに正直に向き合いながら、いろいろな作風やコンセプトにトライしてきた彼ら。しかし、この新曲は10年間の歩みを経た人生経験の中で育まれた実体験的な歌詞を踏まえ、どのジャンルにも縛られず、向おうともせず、ありのままのNOGODを搔き鳴らした名曲になっている。着飾らない挑戦ぶりが美しい。

4.「To Be With You」('91)/Mr.BIG

日本で絶大な人気を誇るハードロックバンドと言えば、Mr. BIGだろう。デビュー作を発売日に購入し、すっかりファンになった自分にとって、この曲が収録された2ndアルバム『LEAN INTO IT』も聴いた瞬間から大好きな一枚となった。電気ドリル奏法が炸裂したオープニング曲「Daddy,Brother,Lover,Little Boy」、あのMAN WITH A MISSIONも斬新なカヴァーで驚かせてくれた「Green-Tinted Sixties Mind」は当時からお気に入りの曲だった。そして、本編ラストを飾る「To Be With You」を最初に聴いた時は、それほど大きな衝撃を受けなかった。肩の力を抜いたアコースティック・ナンバーぐらいの認識しか持てなかった。ところが、この曲がバンド初の全米1位を獲得! 瞬く間のこのアルバムも大ヒットを飛ばす。そうか、これは密かな挑戦だったのかもしれない。恐るべし、Mr.BIG!!

5.「St.Anger」(’03)/METALLICA

このコラムのトリはメタルの領域を越え、今や世界的なロックバンドと言っても過言ではないMETALLICAで締め括りたい。なぜなら、彼らほど"挑戦"の二文字が似合うバンドはいないから。デビュー作『KILL 'EM ALL』から現時点での最新9thアルバム『DEATH MAGNETIC』まで似た色合いの作風を一枚も出していない。これは本当にすごいことで、ファンは自分が好きなバンド像から一歩でも外に出ると、すぐに離れてしまう。もちろん彼らも賛否両論渦巻く問題作を出してきたが、それでも世界中にメタル/ロック・ファンを増殖させている事実は看過できない。この曲が収録された8thアルバム『ST.ANGER』も賛否が分かれたものの、ガレージ臭漂う表題曲の武骨なサウンドは、やっぱりMETALLICA様と納得させられるカッコ良さ。

著者:荒金良介

OKMusic編集部

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