秋の夜長にじっくり聴きたい、演奏時
間の長い名曲5選

いよいよ今年も残すところ3カ月を切って、秋も深まってきました。“秋の夜長”というほど、夜の時間が長いのが秋の特徴。夜が寒くなって外にもうかつに出られず、時間を持て余している方も少なくないのではないでしょうか。そこで、そんな時間を彩る「演奏時間が長い名曲」を5曲選曲しました。夜のお供にいかがでしょうか。

「虹」('94)/電気グルーヴ

 1994年にリリースされたアルバム『DRAGON』に収録され、のちにシングルカットされた楽曲。オリジナルバージョンは10分52秒という長尺です。リリースされてからずっと電気ファンやテクノミュージック好きの中では名曲として名高い楽曲でしたが、2005年にアニメ『交響詩篇エウレカセブン』の挿入歌として起用されると、幅広く知れらるようになりました。美しいメロディーと高揚感を煽るアレンジは長さを感じさせず、漫画家・根本敬さんから着想を得たと言う“トリコじかけ”という造語は一度聴くと忘れられないインパクトがあります。何でも一説によると石野卓球さんはこの曲をバリ島で作り上げたということで、日本では得られないインスパイアを得て、この名曲が出来上がったのかもしれません。

「親父の一番長い日」('79)/さだま
さし

 さだまさしさんが1979年に発表したこの曲は12分30秒。同時にこの曲はオリコンのシングルチャートで1位を獲得した楽曲の中で演奏時間最長記録を、リリースから2001年まで保持していました(N.M.L.の「ZERO LANDMINE」によって破られた)。この曲はある一家の娘が生まれてからお嫁に行くまでを、娘の兄の視点から描いた楽曲で、曲の後半、娘が結婚したいという男性を実家に連れてくるあたりの、登場人物の心の揺れ動きはさすがさだまさし節!と言える名曲です。ちなみに、この楽曲から着想を得たドラマが過去2度放送されており、どちらの作品にもさださん本人が出演しています。若い方はピンと来ないかもしれませんが、あなたに娘が生まれてからこの曲を聴くと、ここに登場する“親父”の気持ちが少し分かるような気がしてきます

「天使たちのシーン」('93)/小沢健

 フリッパーズギター解散後の小沢健二さん、1stソロアルバム『犬は吠えるがキャラバンは進む』に収録されているこの曲は13分31秒。歌詞にも登場するゆるやかな音楽に、一篇の短編小説を読んでいるかのような洗練された歌詞が踊る楽曲。長い曲ではありますし、“頑張れ”とか“負けるな”などの直接的な言葉はないけど、生きるのに迷っている人には必ずや響く楽曲です。この曲を聴いて感銘を受けた筋肉少女帯の大槻ケンヂさんによるカバーバージョンもあります。同世代の、しかも詩ということにすごくこだわりがありそうな大槻さんがストレートにカバーしたい、と思わせるほど、この楽曲には人の心を動かす何かがあるのかもしれません。近年久々に行なっているライヴツアーでも歌われており、そのバージョンもライヴCD『我ら、時 通常版』('14)には収録されています。

「ニーナ」('04)/矢野絢子

 高知県出身のシンガーソングライター、矢野絢子さんによる2004年発表のアルバム『ナイルの一滴』に収録されたこの曲はの長さは11分59秒。ピアノによる弾き語りで、多くの人の手に渡った椅子の視点から物語が紡がれていく楽曲です。美しいメロディーと歌声で、丁寧に淡々と進行していく物語と、後半訪れるカタルシスは一聴の価値ありです。何でもこの曲、リリース当時バナナマンの設楽統さんがさまざまなメディアで推薦曲として紹介しており、かく言う私もそこでこの曲を知りました。物質に魂が宿っている、という考え方はすっとんきょうな考え方かもしれませんが、そのように世の中を見つめることで、自分の心にやさしさや余裕が生まれるのではないかと思っています。心がささくれている人に聴いてほしい曲です。

「Forever Love」('04)/X JAPAN

 先日、日本でライヴを行なったばかりのX JAPANによる屈指の名曲で、オリジナルバージョンは8分41秒。TOSHIさんの搾り出すような歌声と、楽曲の壮大さはいつ聴いても心が打ち震えます。また、この曲は小泉純一郎さんが選挙戦で使用したことで、ファン以外にも幅広く知られることになりました。作詞・作曲はYOSHIKIさんが担当しており、漫画家CLAMP原作によるアニメ映画『X』の絵コンテを見て詩を着想したとのこと。今でもライヴで披露されると、感極まるファンが大勢いる、ファンにとっても、X JAPANにとっても大きな意味を持つこの曲。秋の夜長にひとり、眠れない夜を過ごしている人は、この壮大な世界に身を預けて、気持ちを高揚させるのも良いかもしれません。

著者:佐久間トーボ

OKMusic編集部

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