キャンプで聴きたい! 自然とマッチする極上ポストロック5選

キャンプで聴きたい! 自然とマッチする極上ポストロック5選

キャンプで聴きたい! 
自然とマッチする
極上ポストロック5選

キャンプ。それは身も心も自然の中でたっぷりと浸り、伸びやかに深呼吸できる非日常の贅沢な時間です。特に新型コロナウイルスの影響によって外出することが難しい今年は適度なソーシャルディスタンスを取ることができ、オープンエアーで過ごせるキャンプは打ってつけのアクティビティ。極上空間作りにはやっぱり音楽が欠かせませんよね。そこで今回は『キャンプで聴きたい! 自然とマッチする極上ポストロック5選』をご紹介します。
「Coolverine」収録アルバム『Every Country's Sun』/Mogwai
「The Only Moment We Were Alone」収録アルバム『The Earth Is Not a Cold Dead Place』/Explosions In The Sky
「I Set my face to the hillside」収録アルバム『TNT』/Tortoise
「Good Morning Captain」収録アルバム『Spiderland』/Slint
「Breathe」収録アルバム『Nowhere Now Here』/MONO

「Coolverine」(’17)/Mogwai

「Coolverine」収録アルバム『Every Country's Sun』/Mogwai

「Coolverine」収録アルバム『Every Country's Sun』/Mogwai

「どこかで見たことがある」。そう思い起こすのはキャンプインフェス『朝霧JAM 2004』での一幕です。夕闇迫る富士山の麓に立てられたステージから静かに流れ出した音は夕陽混じりの大空と漆黒に続く大地との狭間で融合し、音の洪水となってその場にいたオーディエンスを飲み込んでひとつの空間を創り上げました。もちろんその音流を発生させていたのはモグワイ。後にも先にもあれほど美しい自然美と音楽の解合を肌で感じたことはありません。10年以上の時を経て再現されたかのようなあの日の世界感を持つこの曲は、傑作『カム・オン・ダイ・ヤング』(’99)をプロデュースしたデイヴ・フリッドマンと再びタッグを組んだアルバム『エヴリ・カントリーズ・サン』に収録されています。夕暮れ時に。

「The Only Moment We Were Alone」
(’03)/Explosions In The Sky

「The Only Moment We Were Alone」収録アルバム『The Earth Is Not a Cold Dead Place』/Explosions In The Sky

「The Only Moment We Were Alone」収録アルバム『The Earth Is Not a Cold Dead Place』/Explosions In The Sky

大自然を前に、己の小ささを思い知って自分に喝を入れたいというキャンプでオススメなのがこちら。収録アルバム『ジ・アース・イズ・ノット・ア・コールド・デッド・プレイス』のタイトルからも野営に打ってつけです。この曲でラストを飾った『フジロックフェスティバル '16』では紫に燃ゆる大空と山々の間に艶やかな音の群れを静かに疾走させ、徐々にその群れは輪郭を帯びた塊となって空高く舞い踊らせた後、漆黒の闇に一瞬で全てを消し去るという圧巻のドラマを観せて拍手喝采を浴び、その年のベストアクトと称されました。世界的なバンドとなって久しいエクスプロージョンズですが、活動初期に見たロンドンの小さなライヴハウスでも同等のステージを観せていたことを考えると感慨深いものがあります。

「I Set my face to the hillside」
(’98)/Tortoise

「I Set my face to the hillside」収録アルバム『TNT』/Tortoise

「I Set my face to the hillside」収録アルバム『TNT』/Tortoise

98年にリリースされたアルバム『TNT』に収録されているギターのアルペジオから始まるムーディでドラマチックに奏でられたこの作品は聴く者に情景を思い浮かばせる映画音楽のようです。タイトルを直訳すると「自分の顔を丘の中腹に向ける」ですが、動詞“Set”の「S」がわざわざ大文字で表記されているところがポイントで、「I Set」とは「自分自身でセットする=自分で自分を“仕向ける”」ということ。自然が広がる場所に自分の身を置かせ、ただじっと眺める時間を持つことはこれまでも、そしてこれからも簡単ではないのかもしれませんが、身近にある山や川を眺めながらこの曲を聴くだけでも情緒豊かな時を過ごすことができるのでオススメです。

「Good Morning Captain」(’91)
/Slint

「Good Morning Captain」収録アルバム『Spiderland』/Slint

「Good Morning Captain」収録アルバム『Spiderland』/Slint

ポストロックシーンを語る上で欠かせないスリント。87年に結成し、92年に解散した彼らが91年にリリースしたアルバム『スパイダーランド』に収録されたこの曲では、単調なリズムが続く静から歪みとクリアなサウンドが繰り返される動の世界への移り変わりと、ともすると不協和音の波にさらわれて得られる異様な心地良さそうが癖になります。賛否両論あるでしょうが、筆者は自然と交わる始まりの時、つまりキャンプ地に着いた瞬間にセットし、テントを張りながら耳に流れ込んでくる変拍子に弄ばれて、独り静かに悦には入りたい時に最適な作品としてとらえています。伝説化された彼らの2タイトルをアウトドアで、エンドレスで楽しむのも宜しいのではないかと。

「Breathe」(’19)/MONO

「Breathe」収録アルバム『Nowhere Now Here』/MONO

「Breathe」収録アルバム『Nowhere Now Here』/MONO

今回ピックアップした5つのバンド作品中で唯一の日本発のインストゥルメンタル・ロックバンドがMONOです。バンド結成20周年を迎えた19年に発表した最新アルバム『ノーウェアー・ナウ・ヒア』の先行シングルとしてリリースされたこの作品は、MONO史上初となるヴォーカル入りの楽曲でもあります。TAMAKI(ベース/ピアノ)の息づかいを感じる生々しいヴォーカルが精巧でフラジャイルなMONOサウンドとの融合を経て、オーケストラに優しく包まれるサウンドからは絶望から希望へと転じる人間の心模様が映し出されています。人生に難しさを感じた時、絶望の果てには希望があると信じて聴いてほしい作品です。辛い時、苦しい時には自然や音楽に触れて、自分に癒しを与えてあげましょう。

TEXT:早乙女‘dorami’ゆうこ

早乙女‘dorami’ゆうこ/栃木県佐野市出身。音楽を軸に、コンサート制作アシスタント通訳、音楽プロモーション、海外情報リサーチ、翻訳、TV番組進行台本や音楽情報ウェブサイト等でコラムや記事を執筆するなどの業務を担うパラレルワーカー。

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