祝・パンク40周年! 僕を夢中にさせ
た日本のパンク5曲

「パンク40周年」とコピーを打たれ、セックス・ピストルズが表紙の『rockin’on』誌を書店で見かけた。アメリカでラモーンズのデビューアルバム『ラモーンズの激情』がリリースされ、イギリスでセックス・ピストルズのデビュー・シングル「アナーキー・イン・ザ・UK」が発売されたのが76年。それから40年という意味なのだが、日本でも77年にTHE STAR CLUB、78年にアナーキーが結成され、80年代初頭には“パンク”という言葉やパンクの反体制なイメージが少しずつ浸透。その後も進化や変化を遂げ、パンクは日本独自の熟成を遂げていった。ここでは75年生まれ、現在41歳とパンクとほぼ同世代の僕が、自分の体験に重ねながら日本のパンクバンドを紹介。おじさんの思い出話に付き合って!

1.「パンク・ロック」(’87)/THE B
LUE HEARTS

僕が“パンク”という言葉を知ったのはこの曲。87年リリース、アルバム『THE BLUE HEARTS』に収録された「パンク・ロック」。そのままずばりのタイトルで、《僕 パンク・ロックが好きだ 中途ハンパな気持ちじゃなくて》と甲本ヒロトがメロウに歌うこの曲で、初めて“パンク・ロック”という言葉を知った。その後、「ブルーハーツが好きだということは、パンク・ロックというものが好きなんだろう」と思った僕は、インターネットなどない時代だったので『宝島』や『DOLL』を書店で購入し、“パンク”というキーワードだけを頼りに、必死に情報を掘り下げていく。僕がまだ14歳、中2の頃の話だ。

2.「ロマンチスト」(’82)/THE STA
LIN

“パンク”というワードを掘り下げた時、出会ったのがTHE STALINというバンド。僕が知った時にTHE STALINはすでに解散し、VIDEO STALINとして活動しており、初めて手に取った作品は解散後の86年にリリースされた、アルバム『STOP JAP』+『虫』が収録されたベスト盤『Best sellection』だった。ゲロ吐きそうなほど攻撃的なパンクサウンドに乗せて、《吐き気がするほどロマンチックだぜ》と叫ぶ、遠藤ミチロウの迫力とどこか色気を感じるヴォーカルに一発で惚れ込んだ僕。さらに文献(『宝島』など)を読み進めていくにつれ、全裸で豚の臓物や爆竹を投げつけるといった過激なパフォーマンスへの想像も膨らみ、“パンク”というルール無用な音楽への興味をさらに掻き立てられた。

3.「I CAN'T TRUST A WOMAN」(’84)
/LAUGHIN' NOSE

次に夢中になったのが89年に再結成されたCOBRA。そこからメンバーであるPONやNAOKIが在籍していたLAUGHIN' NOSEを知り、さらに掘り下げていた時に出会った91年再発のVA『ハードコア不法集会』を聴いてブッ飛んだ。84年にAAレコードよりリリースされたこの作品、ラフィンやCOBRAとともに収録されていたのは、MOBS、LIP CREAM、GISM、OUTO、BAWS、ZOUOといった、本で名前は見たことのある伝説のバンドたち。今みたいにYouTubeやAmazonもなく、インディーズレコードを扱うお店が近くにあるわけでもなくて。文章と写真と想像でしか知ることの無かったバンドたちの貴重な音源を、僕は本当に擦り切れるほど何度も聴いていた。で、中でも一番お気に入りだったのが、やっぱりLAUGHIN' NOSE。ラフィンは激しさの中にもPOPさを含み、楽しいという感覚や親しみやすさといった、またそれまで気付かなかったパンクの側面を見せてくれた気がした。

4.「fighting fists,angry soul」(’
97)/Hi-STANDARD

上京した僕は水を得た魚のようにライヴハウスやレコード屋に通い、一時期はパンクを離れてアンダーグラウンドな方へと趣味を進めていくのですが。再びパンクへと回帰したきっかけは97年、5月にアルバム『ANGRY FIST』をリリース、8月に『AIR JAM '97』を開催したHi-STANDARDとの出会いだった。Tシャツ&短パン姿の3人が鳴らす圧倒的にPOPなパンクはそれまでより激しいもの、コアな物を求めていた僕には最初こそ抵抗があったが、『ANGRY FIST』を聴いた時、『AIR JAM』での強烈なステージを見た時に感じた彼らのパンクスピリットは、僕のしょうもない価値基準をぶち壊すのに十分すぎるものだった。あれから19年。九州の震災を受けたHi-STANDARDは、今年12月に4年振りとなる『AIR JAM』を開催することを発表。意志と信念を貫き続ける変わらぬ姿勢、本当に尊敬します。

5.「その向こうへ」(’11)/10-FEET

そして現在、“パンク”という言葉は今も大きな影響力を持ち続け、たくさんのバンドが“パンク”に誇りを持って活動を続けているが。現代の若い子が頭に描き、憧れる“パンク”を体現しているのが10-FEETなんじゃないか?と思ってる。ライヴバンドとして熱く真っ直ぐなメッセージを届け続ける活動スタイルにも意志と信念を感じるが。NO FUTUREと叫ぶのも虚しい今の時代、現実や自分自身としっかり向き合った上で真っ当なことを叫び続け、諦めずに“その向こうへ”と歩み続ける姿勢こそがパンクだと思う。自身主催の『京都大作戦』は同じ意志を持つバンドたちが集い、いまや日本を代表するロックフェスに成長。『京都大作戦』で圧倒的エネルギーを放つステージを見ながら感じる、「ここから何か、大きく世界が変わるかもしれない」という希望と興奮。これこそ、僕がパンクに惹かれ続ける理由のような気がする。

著者:フジジュン

OKMusic編集部

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