寒い冬を芯から熱くする、ロックンロ
ール!な5曲

「ロックってどうやら、音楽のことらしいじゃないですか? ロックンロールって言葉があって、それがロックになったってことをわざわざ教えてくださる人がいるんですけど。それだったらロックってもう死んでるでしょ? 流行ってないし。だから、おかしいなぁと思ってるんですけど」と以前、僕に語ってくださったのは、大尊敬するみうらじゅん先生。さらに先生は、「“キープ・オン”が重要。SとMの間にはNってのがあって、それはノーマルってやつなんだ。(中略)でも、Nもやり続けるとドNになる。Nは“ROCK’N”の“’N”の部分にもなるからさ」と、ロックンロールは“キープ・オンすること”と教えてくださり、その言葉にロックンロールの芯の部分がちょっとだけ見えた気がしました。つうことで、今回は“ロックンロール”と名が付く曲を集めて、さまざまな角度からロックンロールを考察(つったら大げさだけど)。寒い冬の日、ロックンロールで芯から熱くなれ!

1.「ロックンロール」(’04)/くるり

04年2月に発売された、くるりの13thシングル曲。リリース直前に正式加入した、ドラマーのクリストファー・マグワイアが、ライヴ中に「ロックンロールは好きですかーー!」と叫んだことから曲名が付けられたというこの曲。「ワンダーフォーゲル」や「東京」と並んでライヴの定番曲として演奏される、彼らの代表曲のひとつ。軽快な8ビートとシンプルな演奏に、岸田のメロディーや歌声、コーラスワークの美しさが際立つこの曲は、いわゆる、ブルースやカントリー・ウェスタンをルーツとした、音楽ジャンルとしてのロックンロールをイメージするとちょっと違うけど。《振り返ることなく 天国のドア叩く》と覚悟決めて前に進む姿勢や、真摯な歌と演奏にざわざわと血が騒ぐこの感じは、ロックンロール以外の何者でもなく、僕もクリストファーに「ロックンロールは大好きでーーす!!」と答えたくなる。もういないけど。メンバーが冷凍室で分厚い防寒着を着て、白い息を吐きながら演奏しているMVも、今回のテーマにピッタリ! …つうか逆に、ロックンロールの言葉にあのMVを思い出して、今回のテーマが浮かんだだけなんだけど(笑)。

2.「ロックンロール イズ ノットデッド
」(’12)/サンボマスター

サンボマスターの6thアルバム『ロックンロール イズ ノットデッド』収録、アルバムタイトルを冠したリード曲。2011年3月、東日本大震災が起きた時、多くのミュージシャンがどうしたら良いか分からず活動を自粛し、危機的状況における音楽の在り方に悩み苦しむ中、誹謗中傷も覚悟の上で真っ先に手を挙げ、猪苗代湖ズ名義でチャリティーソング「I love you & I need you ふくしま」を発表した山口ら。そんな彼らが孤独や不安に元気を失くす“君”を憂い、音楽の力、ロックンロールの力を信じて作ったのが、この曲。衝動的とも言えるロックンロール・サウンドと、《何度だって立ち上がるんだよ 君よもう悲しまないでくれ》の叫びが弱った心をどれだけ励まし、どれだけの人に力を与えたことか。《君が生きるなら僕も生きるよ》と“君”に寄り添い、《ロックンロール イズ くだばるものか》と1ミリも疑いなく歌うサンボは、真のロックンロール・バンドです!

3.「ロックンロールスター」(’14)/
KANA-BOON

今、10~20代を中心とした若いロックファンに圧倒的支持を受けているKANA-BOON。彼らが2014年8月にリリースした、4thシングル「生きてゆく」のカップリングに収録されたこの曲。4つ打ちのアップテンポな曲調に乗せて、《ロックもパンクもなにもない 私生活は等身大つまらない》と飾りのない等身大を歌い、それでも《ピンスポットに照らされていたい Say! Wowwowwowwow叫びたい》と抑え切れない欲求や衝動を叫ぶこの曲に、僕は現代の若いミュージシャンの“ロックンロールスター像”が見えて、すごく面白いなぁと思った。同タイトルの曲で、Oasisの「Rock 'N' Roll Star」(’94)を思い出す人もいるかと思いますが、こちらは《Now you concerned about the way I feel(さぁ、俺のこと気になってきただろ?)》と上から目線で告げ、《Tonight I'm a rock 'n' roll star It's just rock 'n' roll(今夜、俺はロックンロールスターさ たかがロックンロールだろ?)》と嘯く、KANA-BOONとは真逆と言える立ち位置の歌で、もちろんどっちもロックンロールスターとしてカッコ良いし、対比して聴いたらすごく面白かった。たかがロックンロール、されどロックンロール!

4.「Rock N Roll」('13)/アヴリル・
ラヴィーン

本当はMr.Childrenが2010年12月にリリースした16thアルバム『SENSE』に収録された、「ロックンロールは生きている」を紹介したかったのですが。iTunesにないということで急遽、この曲に差し替えました(笑)。でも、書きたかったことは一緒で、自身の音楽を“ポップロック”と称しながら、パンク、オルタナといったルーツが見え隠れするアヴリルは、《Just put up amiddle finger to the sky Let them know we’re still rock ‘n roll(中指を空に向かって突き上げる。私たちがまだロックンロールだってことを知らせてあげる)》とロックンロールであり続けることを宣言していて、ミスチルの「ロックンロールは生きている」では、《ロックンロールは生きている 君のそばに 自由と希望を意味している》と、ロックンロールがあり続けることの重要性を歌っている。どちらも音楽ジャンルでなく、自分を形成するのに不可欠なスピリットや精神的な物としてロックンロールを歌っているのだ。音楽としてのロックンロールにこだわってる人の中には、「ロックンロールとか簡単に言うな」と言う人もいるかも知れないけど、そんなこと言う人こそ、ちっともロックンロールじゃないよ!この曲を歌うアヴリルも、「ロックンロールは生きている」を歌う桜井も、ロックンロールスターそのものです!

5.「Sweet Rock'n Roll」('09)/矢沢
永吉

最後は日本を代表するロックンローラー、矢沢永吉! 09年8月リリース、4年振り30枚目となるアルバムのタイトルは、その名もズバリ“ROCK'N'ROLL”。前年にEMIミュージック・ジャパンとのメジャー契約を終了し、自ら立ち上げたインディーズレーベル「GARURU RECORDS」よりリリースし、裸一貫での再スタートとなった今作。シンプルなバンド編成で鳴らすロックンロール・サウンドに、この年、還暦を迎えた永ちゃんが“生き様”を晒した、激しく力強く、やさしく、切ない楽曲たちは、まさにロックンロール! そんな中でも「Sweet Rock’n’Roll」はギラギラした“あの頃”を歌った、甘く切なくちょっぴりノスタルジックなナンバー。同年、東京ドームで開催された60歳バースデーライヴ『ROCK'N'ROLL IN TOKYO DOME』でこの曲を歌う映像が公開されているが、白のTシャツでアコースティック・ギターを背負って歌う永ちゃんは、最高にロックンロール! 「ロックンロールとは、生き様である」とよく言うが、それを人生かけて身を持って証明してるのが、矢沢永吉。永ちゃんみたいにとは言わないけど、いつまでも胸にギラギラした気持ち、ロックンロールを持ったまま、カッコ良く年を重ねていきたいもんです!

著者:フジジュン

OKMusic編集部

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