配信ライヴ『SHIN-ONSAI 2021』で「配信も悪くないな」と思わせてくれた5曲

配信ライヴ『SHIN-ONSAI 2021』で「配信も悪くないな」と思わせてくれた5曲

配信ライヴ
『SHIN-ONSAI 2021』で
「配信も悪くないな」と
思わせてくれた5曲

10月2日(土)、3日(日)の2日間に渡って、配信ライヴで開催された『SHIN-ONSAI 2021』を観覧した。“新宿の〈文化的な混沌と洗練〉”をコンセプトに2018年に立ち上げられたこのイベント。本来は新宿文化センターにて有観客で行なわれる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮して有観客での開催を断念。緊急事態宣言も開け、ライヴやイベントもだんだん従来通りに戻っていくことを祈るばかりだし、生のライヴに勝るものがないことも分かっているが、このイベントを見て「配信も悪くないな」と思う瞬間が何度かあったことも事実。今回は『SHIN-ONSAI 2021』で普段、あまり触れることのないアーティストのライヴを配信で観覧して思ったことや、印象に残った楽曲を紹介したい。
「ヒップホップの初期衝動」収録アルバム『everyday is a symphony』/□□□
「HEALTHY」収録アルバム『健康を患う』/小林私
「Afro Sand」収録アルバム『AFRO SAND』/GOMA & The Jungle Rhythm Section
「Retarded」収録アルバム『ai qing』/KID FRESINO
「春の風」収録アルバム『いいね!』/サニーデイ・サービス

「ヒップホップの初期衝動」('09)
/□□□

「ヒップホップの初期衝動」収録アルバム『everyday is a symphony』/□□□

「ヒップホップの初期衝動」収録アルバム『everyday is a symphony』/□□□

多角的な創作に携わる作家、三浦康嗣が主宰する音楽ユニット・□□□。本来は大人数での出演を予定していたが、有観客での開催中止を受けて、三浦康嗣、村田シゲ、いとうせいこうの最小メンバーで出演。手に持つiPhoneの時報ダイヤルから配信がスタートし、時報のビートにラップを乗せた「ヒップホップの初期衝動」で始まったライヴは、配信であることを逆手に取った演出満載でかなり衝撃的だったし、カッコ良かった! 最後に披露した、オリジナル曲が13分54秒に及ぶ大作「いつかどこかで」では、自宅で歌う仲間たちの動画をつなぎ、配信でも心はつながっていることを表現。一秒を歌い永遠を願う楽曲と映像が美しく調和して、今まで感じたことのない種類の感動を与えてくれた。この時代にもマッチした楽曲をぜひフルで聴いてほしいが、オフィシャル映像がないから自分で探して!

「HEALTHY」('21)/小林私

「HEALTHY」収録アルバム『健康を患う』/小林私

「HEALTHY」収録アルバム『健康を患う』/小林私

スマホをいじる姿からマイペースに配信が始まった小林私のライヴ。「遊歩する男」を歌い始めるも、途中で曲を忘れてサビを飛ばすという豪快なミスで1曲目を歌い終えると、「ミスとかあるライヴ、好きなんですよ~!」と気にする様子もなくライヴを続行。部屋から配信してんじゃねぇんだぞ!とツッコミたくなるところだが、「次の曲はスウィングでやったらめっちゃカッコ良いんじゃないかって昨日言ってて。今日はどこにもないバージョンでやりたいと思います」と初挑戦のアレンジで披露した「HEALTHY」がめちゃくちゃカッコ良くて震える。そう、このずるいほどの二面性や振り幅こそが小林のライヴの魅力であり、彼の真骨頂なのだ。大好き! 「HEALTHY」のスゥイングver.をぜひ聴いてほしいが、あの日が初披露で映像もないのでライヴとかで聴いて!

「Afro Sand」('09)
/GOMA & The Jungle Rhythm Section

「Afro Sand」収録アルバム『AFRO SAND』/GOMA & The Jungle Rhythm Section

「Afro Sand」収録アルバム『AFRO SAND』/GOMA & The Jungle Rhythm Section

パラリンピック開会式では、デコトラに乗って布袋寅泰とともに登場して演奏を披露。ディジュリドゥの響きと打楽器のみという編成で野性味あふれるグルーブを生み出し、野外フェスやパーティーを賑わすGOMA & The Jungle Rhythm Section。こういった音楽こそ、生で体感しないと意味がないと思いがちだが。配信ライヴを最大限に楽しんでやろうとヘッドフォンをして音楽に集中したら、耳や脳に直接響き訴えかけてくるサウンドが広い大地と大きな青空といった壮大な景色を想像させてくれ、しっかり脳内旅行へ誘ってくれた。原始的なリズムにディジュリドゥがうねる「Afro Sand」を聴きながら、窓から吹き込む秋風に吹かれていたら、あまりの気持ち良さにサウナにも入ってないのに「ととのったぁ!」と叫びたくなった。

「Retarded」('18)/KID FRESINO

「Retarded」収録アルバム『ai qing』/KID FRESINO

「Retarded」収録アルバム『ai qing』/KID FRESINO

イメージビジュアルを務めるNIKEの「720」や、松たか子とコラボした「Presence I」、長谷川白紙とコラボした「youth」くらいしか知識がなく、ライヴを観るのも初めてだったKID FRESINOだったが、ヒップホップに明るくない俺でも分かる圧倒的なラップスキルと、しなやかでたくましいパフォーマンスに釘づけになってしまった。日本語も英語も多彩なビートもクールに乗りこなし、時折見せる笑顔も可愛らしい彼。40分ノンストップで駆け抜けたライヴの終盤に披露した、新宿を題材にした曲「Retarded」は、“新宿の〈文化的な混沌と洗練〉”というイベントコンセプトにも合致してたし、めちゃくちゃカッコ良かった。あとそう、この曲が始まった時に「新宿だからか」とファンがコメントして、そうなんだ!と思って、リリックを見て納得したのだが。初めて観るアーティストの見どころを教えてくれたり、ライヴを観て感じたことを誰かと共有できるのも、配信ライヴの面白さだと改めて思った。

「春の風」('20)
/サニーデイ・サービス

「春の風」収録アルバム『いいね!』/サニーデイ・サービス

「春の風」収録アルバム『いいね!』/サニーデイ・サービス

『SHIN-ONSAI 2021』2日間の大トリとして登場した、サニーデイ・サービス。「ここで逢いましょう」で始まり、初期の名曲が続く熱くエモーショナルな前半戦を経て披露した「春の風」は、2020年リリースの最新アルバム『いいね!』収録の最新曲。十分なキャリアと貫禄をもって鳴らす過去楽曲たちと、歳を重ねても失うことのない蒼さや新鮮さをもって鳴らす最新曲が違和感なく並ぶライヴに、サニーデイって本当にスゲェな!と感激してしまった。さらにすごいと思ったのが、モニタ越しでもヒリヒリした空気感や圧倒的な熱量が伝わってくるステージの臨場感と迫力。無観客だからって一切手を抜くことのない、全身全霊の歌と演奏は時空を超えてしっかり伝わってきた。とはいえ、「この凄まじいステージを現場で観たかったな」というのは本音。来年は必ず、生で観覧できますように!

TEXT:フジジュン(おばけえんとつ)

フジジュン プロフィール:1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野だが、EBiDANなど若い男の子も大好き。笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。

OKMusic編集部

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