下舘夏希

下舘夏希

【下舘夏希 インタビュー】
誰かを動かすには強いパワーで
自分が動かないといけない

“ダテシモ”ことシンガーソングライターの下舘夏希。2020年にフリーとなった彼女が、2022年1月に渋谷CLUB QUATTROでの弾き語りワンマンライヴの実施と自主制作シングル1,500枚完売を目標にした企画を発表。コロナ禍で思うように活動ができない今、彼女はどんな心境にあるのかじっくりと訊いた。

“言葉を発していけばその通りになる”
その考えを根本に持っている

オフィシャルHPのプロフィール欄に“2015年5月に第二章としてシンガーソングライターを始める”と記載されていますが、何がきっかけで第二章と区切られたのでしょうか?

25歳で芸能事務所に所属したのですが、その前までは“道産子直球ストレートPOP ROCKER”という肩書でフリーの活動をしていたんです。周りの人からはよく“直球とストレートは同じ意味でしょ!”と言われながら(笑)。半年以上、同じ意味だったのに気づかなったんですよね(笑)。その頃は、路上ライヴをメインに活動をしていたんですけど、なかなかうまくいかない時に大きな事務所に入れたので、“これからもっと頑張るぞ!”という気持ちを込めて区切りをつけました。

事務所への入所と自身で新しく頑張るという気持ちがあって区切られたんですね。

そうです! “言葉を発していけばその通りになる”という考えが私の中にあるので、先に大きな目標を言葉にして、そこから逆算していくようにしています。

なるほど。そこから毎年、自主企画やワンマンライヴを実施されていましたので、2015年が大きな分岐点になるのではないかと思いました。

自主企画として主催するのは初めてだったんですけど、自分ひとりじゃなくて周りの人たちも巻き込んでいきたいと思うようになったのが、2015年頃でしたね。それまでは無我夢中でしたし、自分のことしか考えられなかったです。周りのことも考えたかったけど、“道産子直球ストレートPOP ROCKER”の時はどうやったら自分が上へと進んでいけるかで必死だったんですよね。

事務所に入所した第二章からは路上ライヴも実施できなかったと聞きましたが、それはなぜですか?

事務所の方針で路上ライヴはマネージャーさんなどが側につけないから危ないということになったんです。事務所の親心からの判断でした。なので、今のところ丸7年半路上ライヴができていないことになりますね。投票イベントなどで安全を確保していただきながら実施したことはありますが、それも3カ月間くらいだったので本当に長い間できていないんですよ。

そういう理由もあって、ライヴハウスを中心に活動されていたんですね。下舘さんはこれまで自主制作で廃盤も含めて5枚のシングルをリリースしていますが、音源を聴かせていただいて、どの曲も直球なポップスの中にどこかロック色が滲み出ていると感じました。CDになっている楽曲で言えば、「アーカイブルー」はポップなメロディーと爽快なバンドサウンドだけど、バックギターやドラムのリズムの細かさやテンションがロックなんですよね。

そうなんですよ! とても嬉しいです!

そんなポップスの中に潜むロックサウンドが下舘さんの曲の魅力だと思ったのですが、作曲で大切にしていることはありますか?

全部の曲に“生きると死ぬ”というテーマを入れて作曲をしています。すごくポップでさわやかな曲なのに、実はそのテーマを組み込んで作っているんですよ。歌詞もよくよく見てみると“生きてることを大事にする”というような言葉が含まれています。「ダイアライブ」という曲のタイトルには“ダイヤモンド”と“DIE=死ぬ”、“ALIVE=生きる”と“ライヴ”の4つの意味が込められていて。一番最初にレコーディングしようと思って作った曲で、自分の作曲のテーマをしっかりと表したいという気持ちを込めたんです。この曲以降も“生きると死ぬ”をテーマにしています。

丁寧なテーマを持っているんですね。それこそ、下舘さんの曲は着眼点が本当に面白いです。歌詞についても「ぐるぐるまわって」はアラサー女子へのストレートな応援ソングだし、「パッションピンク」はキャバクラに通う男性の心理を描かれていたりして(笑)。

「パッションピンク」は実際に5店舗のキャバクラに体験入店したんです(笑)。曲の冒頭に入っている“お兄さん、どうですか?”という男性の声は、私が新宿でおじさまにナンパされた時、“レコーディングしたいんで、このフレーズを言ってくれる人を探しているんです。良かったら言ってくれませんか?”とお願いしてその人の声を録らせてもらったもので。なので、その日限りでどこに住んでいるかも分からない人の声なんです(笑)。

実体験で作られた曲だということにも驚きですが、声録りのためにかなりのチャレンジをしたんですね(笑)。

この声のレコーディングのために新宿に行ったのに、新宿は呼び込みが禁止になっていて。だから、そのおじさまにお願いしました。

その行動力もすごいですよ(笑)。声録りもして、その後に体験入店したんですか?

そうなんです。

なるほど。楽曲に“生きると死ぬ”というテーマがあったことは知らなかったので、単純に目に見えたものから感じたこと、体験したことをそぎ落としながら作っていると思っていました。その大きなテーマも含めて、作詞について大切にしていることはありますか?

例えば、目の前にあるグラスから曲を作ろうみたいな感覚はありますね。CD化はしていませんが「使い捨てのライター」という曲は、使い捨てのライターを見た時に“使い捨てって悲しいな”と思ったんですよね。100円で買えて100円だから捨てられると感じたところから昔付き合っていた人と別れた時のことをつなげて“使い捨てのライター”をタイトルにはしているけど、違うことを曲で描くみたいな書き方が多いです。

面白い作り方ですね。どんなものからでも思考が広がる感性がすごいと思います。

今も毎日曲を作ってSNSにアップしているんですけど、それも毎日目についたものと自分が最近経験したことがドッキングしてパッと曲が浮かぶんです。

『エブリシモ』という企画のことですね。Twitterはもちろん、YouTubeで『水曜ニダテシモ』『あなたのお店のCMソング作ります♫』『ダテシモの探シモ!』など、さまざまな企画を実施されたり、他にもInstagram、TikTok、Amebaブログ、FaceBookもありますが、『エブリシモ』はワンフレーズですが、120曲以上オリジナル楽曲をアップされていますよね。実際オリジナル曲は何曲くらいあるのでしょうか?

どれくらいだろう? 本当に細かい曲も入れたら3,000曲くらいはあると思います。ヴォイスメモの数がそれくらいあるんですよ。ワンフレーズとかだけじゃくなくて、完成している曲もたくさんあって出してはいきたいのですが、レコーディングが間に合わないのと練習している曲をライヴでやりたいと思うとわりと披露するパターンは決まってしまい…曲を作るのは大好きなんですけど。

毎日アップしている曲は、その日に作った曲ですか? それともヴォイスメモのストックから出している?

その日に作った曲ですね。『エブリシモ』に関しては前日か当日に作った曲しかなくて。他の曲は別でストックをしています。『エブリシモ』に関しては、この企画のために曲を作りたくて。CD化したい曲はもっと歌詞とかもじっくりと考えたいから。『エブリシモ』は、みんなに観て聴いてもらいたい気持ちもありますが、自分にとっては作詞作曲スキルの向上のためでもあります。だから、この企画はその時の自分が納得すればいいので、その日のうちにアップしているんです。しっかりと作り込みたい曲とは別というか。

自身のスキルアップのために実施している企画でもあるんですね。

でも、『エブリシモ』をきっかけに誰かが“この曲いいね”と言ってくれたら、その曲を完成形にしようとも思っていて。今のところ何曲かは作り上げたいと思っています。

この企画とは別で『水曜ニダテシモ』ではカバー曲だけでなく、オリジナル曲も長尺で披露されているのは、その違いがあったんですね。

そうなんですよ! 『水曜ニダテシモ』はライヴでも披露している曲をしっかりと聴いてもらいたくて。カバーは自分の曲だけでじゃ私を知らない人が動画に辿り着かないので、初見の人にも観てもらえるようにアップしています。

SNSを観ていてすごいと思ったのが、全てのサービスをほぼ毎日動かしているところですよね。どれかのサービスが滞ってしまう方も多いのに。大変ではないですか?

それがすごく楽しくって! SNSはつながりのなかった人とつながれるんだなと感じるんです。特にYouTubeやInstagramは海外の方のユーザーも多いから、毎日曲を作って英語のテロップも入れて動画をアップしていたら、“君の声がすごくいいから一緒に曲を作らない?”と言ってくれた海外の方がいて、今、その方と一緒に曲を作っています。

すごいですね! そんな出会いもあるなんて。

日本のことが好きな方で、作曲をしていているけど歌は歌っていないから私の声で恋愛ソングを作ろうと言ってくれて。恋愛ソングの作曲をしてもらっています。

YouTubeもコメント欄を見たら、海外の方からも多いですもんね。

台湾の方が多い時期もあったんです。今でも観てくれているんですけど、私が出ていたテレビ番組が台湾で放送されたことをきっかけに私を知ってくれた方が多くて。
下舘夏希
シングル「ダイアライブ / パッションピンク」
シングル「ぐるぐるまわって」
シングル「アーカイブルー」

OKMusic編集部

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