【円盤少女 インタビュー】
“明日から夏休みだぜ、何しよう?”
みたいな気持ちを
死ぬまで持っていたい
心踊る痛快なロックンロールと耳馴染みのいいメロディー、少し不思議なSF的世界観を持つ歌詞。繰り返し聴きたくなる普遍性とセンチメンタルやノスタルジーを併せ持つ5人組ロックバンド・円盤少女の、実に6年振りとなる3rdアルバム『鶏』が完成!
このメンバーだからこそできる
サウンドになった
2016年1月リリースのアルバム『COMIC』以来、実に6年振りのアルバムとなる『鶏』が完成しましたが、円盤少女は現メンバーになったのが2021年で、このメンバーでは初のアルバムになります。
和田
最近、“巡り合い”ってことをよく考えるんです。東京に来て現在のメンバーになって、このメンバーだからこそできるサウンドになったし、これも巡り合いだったと思っています。
金山
『COMIC』を出してからメンバーが抜けて、2019年に活動拠点を関東に移した時には僕と純次だけだったんですよ。ふたりとも社交性がないのに奇跡的に今のメンバーが揃って、アルバムが作れたことがまず嬉しいです。8ビートのシンプルなサウンドから始まって、『COMIC』で少し音楽の幅が広がって、今回のアルバムには初期のような曲もあれば、新しいこともやれていたり、楽しんで作れたのもすごく良かったですね。
しかし、よくふたりで上京しようと思いましたね。
金山
あははは。東京に行ってどうなるか、すごく不安でしたけどね。
和田
逆に言えば、どっちにいても一緒っていうか(笑)。だったら、空気をリセットしたほうがいいんじゃないかくらいの気持ちでした。
金山
環境を変えて無理矢理適応するみたいな感じでね。そうしたら、いい感じにメンバーが揃って。
まさに巡り合いだし、導かれた感がありますね。では、それぞれのアルバムが出来上がっての感想を聞かせてください。
木邑
僕は純次くんの書く曲が大好きで、誘われてすぐにメンバーになりました。やっとアルバムというかたちになったのがすごく嬉しくて、今の正直な気持ちは“みんなに聴いてほしい、頑張って売りたい!”ということで、これをきっかけに僕らの世界観をもっと知ってもらいたいです。
キャイ
僕はもともと別のバンドでベースをしていたんですが、ギターに転向したくて2年くらいギターを練習して、ギタリストとして参加しました。自分にとっては1stみたいな感覚だし、“せーの!”で初めてでっかい音を出した時のワクワク感、初期衝動が詰められたと思います。
三田
僕ももともとベーシストで、キーボーディストではなかったんですよ。だからこそいろんな音楽の要素を客観的に入れられたと思います。ロックとかパンクとか、ジャンルにこだわらずやれたのが、すごく面白かった。いいアルバムになったと思います。
5人になってライヴを重ねて、アルバム制作をして、今の自分たちが感じるバンドの進化や変化ってありますか?
和田
みんなで呑んで話す機会は増えましたね。僕はそういうのがすごく大事だと思っていて。頻繁に話し合うことで、“曲をこうしよう”とか“これからこうしたい”っていう理想が伝わりやすくなっていると思います。
木邑
この間呑んだ時もツアーに向けての練習を強化しようって話をしたり。
そういう時、みんなをリードしていくのは誰なんですか?
キャイ
俺ですかね? しっかりしているわけじゃないけど、声はでかいんで(笑)。バンドって楽しいってことが基本なので、今はこのバンドをやっていてそう感じているんですよ。よく言うのが、小学校の頃の夏休み前みたいな。終業式終わって、“明日から夏休みだぜ、何しよう?”みたいな気持ちを死ぬまで持っていたいなって。それとバンドやっている時の気分ってすごく似ていると思うし、それをずっと続けていきたいんです。
『鶏』を聴いても、そういう気持ちを忘れずにいられる5人だと思いますし、そのワクワク感が伝わってきます。
キャイ
それがなくなっちゃったら、きっとバンドはできなくなっちゃうと思うんですよね。“年を取ったから、そういうのはやめよう”とか思わなくていい。むしろ、大人だからできることもいっぱいあるから、そういうのをどんどん出していったほうがいいと思う。
“俺たちはいつだって世界と遊んでいる旅人”だからね。
和田
「卒業式予行」の歌詞や! ありがとうございます(笑)。
あははは。作詞作曲は全部、和田くんが担当しているんですか?
和田
はい。言い方は悪いですけど、バンドを結成した時から、自分の歌を再現するためにバンドを始めたみたいな感じで。今はキーボードが入ってやれることも増えて、まさに「卒業式予行」はキーボードメインの曲に憧れていたんですよ。このアルバムも後半にバラードが入ることですごくドラマチックになったと思います。
三田
「卒業式予行」は卒業式の準備をしている会場にピアノがあって、“ちょっと弾いてみようか”みたいな気持ちでプレイして。シンプルだから、すごく緊張しました。
歌詞の部分で上京してからの変化とかありました?
和田
あまり自分のことは歌にしないんですけど、東京に出てきてからの経験や感じたことが比喩的に出ているっていうのは、歌詞を見て改めて思います。具体的にどの部分なのかは恥ずかしいから言わないですけど(笑)。変化は感じますね。
メンバーは和田くんの書く曲をどう見ているんですか?
三田
正義のヒーローで言ったらレッドみたいな。あがた森魚さんが“テーゼに対するアンチテーゼに興味がない”と言っていたけど、純次の曲は圧倒的にテーゼだし、アルバムでそれが深まった気がします。
ちなみに今作で一番古い曲は?
和田
「街角」ですね。高校生の時に作った曲で、この曲だけ口が悪いんです(笑)。
木邑
僕はこの曲が一番好きなんですよね。《街角には馬鹿ばかり》ってシンプルで、分かりやすくて。
金山
《そこに立たれたら邪魔なのさ》って歌詞があるんですけど、バンドメンバーで道を歩いている時、全然余裕があるのに、純次は“もっと道を開けろ”って服を引っ張って、道を開けさせるんです。だから、昔からものすごくそれを考えている人なんだなと思って。
“人に迷惑かけちゃいけない”ってのは高校生の頃からぶれない部分なんですね。いい奴だなぁ!(笑) 逆に一番新しい曲はどの曲になるんですか?
和田
新しいのは「卒業式予行」で、レコーディング当日の歌を録る直前まで完成していなくて。最後はインスピレーションというか、その瞬間に思っていることを言葉にして出した、出来立てホヤホヤの曲ですね。
以前からあった曲で、今のメンバーでやることで大きく変わった曲とかはありました?
和田
「33回転」は大阪時代からやっていた曲なんですが、“プレイヤーが違うだけで、こんなに曲の印象が変わるのか!?”と思った曲でした。ドラムは楽器も違うし、スタイルも違うんで、そんな違いが特に表れていて、今のメンバーの音になっていますね。