みねこ美根

みねこ美根

【みねこ美根 インタビュー】
昔感じた楽しさやトキメキが、
この曲で言う“くわの実”

これまでのバンドサウンドから新たに打ち込みのアレンジが加わることで、柔らかさと温かみが生まれた新曲「くわの実」。自分を見つめる理性と、自分を信じる情熱が込められているそうだが、そこには歌詞にある“大人”になることについて考えさせられる部分もあり、彼女が現在と過去の自分をどう感じているのかも伝わってくる。

独りよがりではなく
届けたい先があることを歌に乗せた

コロナ禍で思うように活動ができない中、みねこ美根さんはTwitterで歌唱動画をアップする企画『毎日唄を』や120秒の動画投稿を行なっていましたが、やってみていかがでしたか?

ライヴがなくなって、最初は何が起こるのか、何をすべきかも分からずじっとしていました。でも、このまま時間が過ぎていくのではなく、自分がこの期間にできることをやろうと、まずは医療従事者の皆さまやお仕事をされてる皆さまへの感謝を伝えるために動き出そうと始めたのが『毎日唄を』です。私はひとりで行動していることが多く、SNSでいただいた音楽仲間のお誘いにはうまく答えられなかったので、自分のできることを考えて、自分自身も進むために発信していきました。毎日、医療従事者の方やお客さまが反応をしてくださったり、一緒に広めてくださることで日々力強くやることができたと思います。それぞれの場所にいてもつながっているんだという感覚は私だけでなく、皆さまにも思っていただけたのではないかと感じています。

6月6日には配信ライヴもやっていましたね。

この配信ライヴは10月20日のワンマンライヴに向けた活動『Together for 10/20/2020』の第一弾でした。会場を使用させてくれた吉祥寺RJGBの皆さまやメンバーが集まってくれたことで思いっきり歌うことができましたし、頭の中で考えていた新曲をバンドメンバーと演奏できて、お客さまにも観ていただけたので感謝してもしきれません。メンバーも私も大きな音を出すことができたこと、歌えたことに喜びを感じました。皆さまにお観せした配信は、その時にできる最大限の10月20日に向けた第一歩になったと思いますし、“今は会えないけれど、会う日のために私たちはどんどん動いているから楽しみにしててね!”と想いを届け続けています。『Together for 10/20/2020』という活動では私にとって初のホールワンマンに向けて歩いているので、この流れにぜひ合流していただきたいです。私も初めてのことだらけで、一緒に“初めて”を見に行きたいと思ってやり始めた行動なので、贅沢ですが私の目標が皆さまの目標にもなれたらと思ってます。

OKMusicで連載している『映画の指輪のつくり方』や、これまでに発表してきたコマ撮りのMVなど、以前から自分で作ることに積極的だった美根さんだからこそ、これまでの活動が自然と“今できること”につながっている印象です。配信シングル「くわの実」のジャケットもご自身で手がけていますよね。

おっしゃる通りで、これまでの活動が“今できること”につながったというのは強く感じています。『映画の指輪のつくり方』をはじめ、MVのクレイアニメやジャケ写まで、そういった音楽以外の制作の場や機会をいただけて、とても楽しく、新しく時間が過ぎています。楽曲制作とは違う感覚で苦しく感じる時もありますが、それを褒めていただけたり、楽しんでくださる方々がいてくれるからできることなので、その喜びがこれからも未来につながっていくと思ってます。

「くわの実」のMVの一部はテレビでオンエアもされていますが、フルサイズの公開を楽しみにしている方もたくさんいると思います。

このMVはいろんな方の協力を得ないと完成できなかった作品になったと思ってます。打ち込みの新しいサウンドの音源で、私ひとりで表現することもあったのですが、あえてあの時にできるかたちで参加してもらって、今回も素晴らしい世界を作ることができました。私自身の強みも成長しているし、新しい仲間との強みも作れていると思います。

「くわの実」を聴いた時、まず音の温かみに感動しました。ストリングスで表現された繊細さや、やさしくも厚みを出すピアノとドラミングには包容力があり、歌詞には“大人”という言葉も出てきますが、情熱だけでなく、少し大人びたような落ち着きを感じました。

今回のアレンジはこれまでのバンドサウンドから打ち込みのサウンドへの振り幅に挑戦しています。アレンジはプロデューサーの小名川高弘さんにしていただきました。打ち込みのアレンジ案は、この曲の方向性を話し合っていた時にいただいたもので、温もりがあるんです。でも、その中に確かな想いがあるサウンドになっているのが最高で、全部お気に入りです。この曲は自分を見つめる理性と自分を信じる情熱、その両方を込めた曲で、それは音でも表現されているので楽しんでいただけたらと思います。時を刻むような音、ストリングスやピアノ、ビートもそうですし、波紋やそよぐ風のような自然界の揺らぎと言いますか、ぜひ耳を澄ませて聴いてほしいです。

柔らかなサウンドの中で美根さんの歌声も伸び伸びとしていて、改めて歌声に潜む強さや訴えかけるような力を感じました。

そう言っていただけて嬉しいです。でも、正直に申し上げると、バンドサウンドから打ち込みサウンドになったことで、意図的に歌い方を変えることはしませんでした。私自身が器用に歌い分けをできるタイプではないので、とにかくこの「くわの実」で伝えたい“思い描いた姿になれなくても、あなたはそのままで素晴らしいよ”という想いを込めて歌っています。この気持ちは独りよがりではなく、届けたい先があるということを歌声に乗せることができて、聴いてくださる皆さまが鮮明に思い描けたことが大きいです。

最初の《すっかり大人になれたら やりたいことがあるの》というフレーズを聴いた時、“大人”というものが少し分かってしまったけれど、まだ割り切れない気持ちを想像しました。美根さんにとって“大人になる”というのはどういうことだと思っていますか?

そのフレーズはぼんやり考えことしながら“大人になったら○○やりたいなー”と思った自分に、“いや、もう成人してるじゃん!”とツッコミを入れた時にできたんです。大人になるということは、勝手なイメージだと“聖人”になることに近いと思っています。なので、私はたぶん一生なれない(笑)。“大人っぽく”なれるのがやっとかもしれないですね。

なるほど。誰もがいずれなれるものとは違うというか。

“大人”って世の中のみんなが共通して持っている理想像というか、全員がいずれなるだろう、ならなくちゃいけないものだと思っている観念なのでは?と思います。今思い出したのですが、少し前に観た映画『IT』で“大人になる”ことは子供の頃の自分を“許して認めること”っていうふうに描いていて、私の勝手な解釈ですがとても納得したんです。併せると、聖人みたいな大人という理想と、自分とのギャップをまるごと認めることが大人ということかなと。“大人っぽく”なり始めたと感じるのは、余裕を持って動けた時ですかね。いつも焦っているので心に余裕があると、大人っぽいかもと感じます。
みねこ美根
配信シングル「くわの実」

OKMusic編集部

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