L→R CREAMMAN(Ba)、NIKE(Gu)、MJM(Vo&Gu)、†NANCY†(Syn)、AKAHIGE(Dr)

L→R CREAMMAN(Ba)、NIKE(Gu)、MJM(Vo&Gu)、†NANCY†(Syn)、AKAHIGE(Dr)

【BALLOND'OR】
ポップとメロウがぶつかり合う
爆裂ノイジーポップ

下北沢を拠点に人気上昇中の5人組、BALLOND'ORが1年振りとなるアルバム『MIRROR MIND』でいよいよ全国デビュー。やばい雰囲気ぷんぷんのサウンドと歌詞が唯一無二の存在感をアピールしている。

初の全国流通盤にもかかわらず、売れたいという気持ちがこれっぽっちもないというか、セルアウトしていないところがとても痛快でした。ただ、キャッチーでポップな要素も持っていることを考えると、万人受けするような分かりやすい作品も作れるんじゃないかと思うのですが、あえて逆行しているような節も感じました。

MJM
自分としてはこれが当たり前なんです。別に特殊なものにしようとは思っていない。パンクやハードコアも好きなんですけど、もともとJ-POPで育ったからポップなものも好きで、それを混ぜ合わせてストレートにやっているだけなんです。

今回の作品を聴いて70~80年代のパンクや80~90年代のUKロックの影響を感じたのですが、MJMさんとNIKEさんがバンドを結成した時はどんな音楽をやろうと?

NIKE
前に違うバンドをMJMと組んでいたんですけど、そのバンドが終わった時、MJMが酷い失恋をして。
MJM
それが原因で解散したんです(苦笑)。何もする気がなくなっちゃったんですよ。それを1年ぐらい引き摺ってたんですけど、その時に彼からバンドをやらないかと誘われたんです。
NIKE
友達としても見ていられないくらい酷い状況だったんです。でも、この人にできることと言ったら音楽しかないから、もう一回音楽やりたいね、バンド組みたいねって
MJM
最初はメンバーが揃ってなかったんで、デジタルパンクみたいな感じだったんですけど、段々メンバーが増えていって。

現在のような音楽性になったわけですね。みなさんはどんな音楽が好きなのですか?

MJM
結構バラバラなんですけど、共通して好きなのは、ビースティ・ボーイズ、ジーザス&メリー・チェイン、グリーン・デイ、ニルヴァーナ、アタリ・ティーンエイジ・ライオット。フジファブリックとか、スピッツとか、日本のポップなバンドもみんな結構好きなんです。
NIKE
そういう意味では結構雑食かもしれない。でも、その全部の影響が曲に出ているかは分からないですけど。
MJM
いや、曲は僕が作っているんですけど、個人的には全部に出ていると思います。ただ、意識的にこうしようっていうのはないです。

曲作りはどのように?

NIKE
基本的にMJMが原曲を持ってきて、スタジオで歌いながら。曲によっていろいろなんですけど、歌詞がない状態でもどの曲もメロディーは残るというか、1回聴いただけで残るメロディーを必ず持ってくるんです。それをもとにスタジオで合わせながら曲がかたちになっていって、歌詞が見え始めてから楽器のフレーズをリンクさせるみたいな作り方ですね。

曲ももちろんなんですけど、歌詞も大きな聴きどころですよね。死と狂気に取り憑かれながら世の中に呪いの言葉を吐いていると思わせ、恋愛やイノセンスについても歌っているし、映画や漫画といったポップカルチャーにリンクした言葉の使い方やシニカルなユーモアセンスを考えると、過激に思えるけど、実はとてもインテリジェントなんじゃないかって。そんな歌詞はどのように作っているのですか?

MJM
作るって言うよりは、毎日ちょっとずつぽろぽろ出てくるんですよ。だから、過激な言葉も意識してそうしているわけではないんです。一番聴かせたいのはメロディーなんですけど、それにはまる言葉のほうがいい。それがたまたま過激な言葉になってしまっただけなんです。
NIKE
新作の「DIVE TO DIE」の歌録りが終わった時、レーベルのスタッフから“これはラジオでかけられないね”って言われて、“あ、そうなんですか!?”って言ってたから本当に意識していないんだと思います(笑)。
MJM
ラジオでかけられない言葉があるなんて、全然知らなかったんですよ。言葉を伝えたいわけではなく、感覚を伝えたいんですけど…例えば、ただ“楽しい”とか、ただ“笑い合う”とかだけでは楽しめない。メンバーにも言われました。“この曲、歌詞がもっと普通のポップだったらいろいろな人に伝わるんじゃないの?”って。でも、みんなが分かるような言葉だけで分かり合ってもつまらない。

歌詞は実体験がもとになっているのですか?

MJM
ほとんどそうですね。

あ、なるほど。新作の「裸の女王様」、いいですね。

MJM
ほんとですか!? 新作の中で一番、ダメなやつですよ。メンバーから“最低の奴だな”と言われました(笑)。

正直なのか、あけすけなのか、露悪趣味なのか。その赤裸々な告白がある意味ロマンチックとも言えるラブソングになっているところがいい。

MJM
でも、ノンフィクションではないんですよ。ロックってノンフィクションすぎてもつまらないし、フィクションすぎても現実味がないし。でも、そこで歌っている感情は本当のことです。
†NANCY†
“歌詞がすごいね”ってお客さんからもバンド仲間からもよく言ってもらえるんですよ。MJMって蟻みたいっていうか(笑)。アントマンじゃないですけど、小さい蟻が必死に抵抗しているみたいなところがあって、今回はそれがいつも以上に感じられました。
CREAMMAN
俺は毎回、彼の歌詞に心を抉られるんですよ。開けてはいけない心の扉が開いてしまう感覚にいつもなります。ストレートに抉ってくるんですよ。

「チルアウツ」「心臓に咲く薔薇」というアルバムの最後の2曲は、「裸の女王様」と同じ人が書いているの?と思っちゃうぐらいイノセントで。

NIKE
そういう二面性がBALLOND'OR…というか、MJMなのかな。
†NANCY†
二重人格なんですよ(笑)。
NIKE
突然、音楽のことでブチ切れる瞬間があったかと思えば、“昨日何してた?”って聞いたら“サンリオピューロランドに行ってた”って時もあるし(笑)。
MJM
ゾンビ映画っていうか、ホラー映画も好きなんですけど、ジブリやマイメロディも好きなんですよ(笑)。昔からそういうのを上手く混合できないかなって思ってたんですよ。
NIKE
僕らはそれを知っているから腑に落ちるけど、初めて聴いた人はどう思うのか気になるところではありますね。でも、『MIRROR MIND』は作品として、結果的に良いものになっていると思います。自主でリリースした前作アルバム『CATCHER IN THE DIE』がこの5人で初めて作ったアルバムだったんですけど、それが出来上がった時、“BALLOND'ORがやることってこれなんだ”ってみんなの中で弾けて。MJMが書いた曲に、それぞれの楽器で色を付けていくってやり方が完成した気がしたんですよ。それから1年振りに『MIRROR MIND』を作ったんですけど、それが続いているような気持ちで作りました。過激な言葉とか言っちゃいけないようなことも歌っているけど、それと同じぐらいメロウなムードやポップなアプローチもあって、そんなメロウとポップのカオスなぶつかり合いはBALLOND'ORにしかできないものだと思います。

『MIRROR MIND』を作るにあたっては、その他にどのようなことを考えたのですか?

MJM
前回は宅録だったんですけど、そういうローファイなサウンドはもうやり切った気がして、それを繰り返しても同じようなものしかできないと考えていたんですよ。そんな時にちょうど今のレーベルから声をかけてもらって、今回はしっかりスタジオで録って、もっと強いやつというか、アタック感があるというか…そういう作品にしたいと思いました。
NIKE
その想いが強すぎたんでしょうね。レコーディングの前に曲作りの期間があって、ちょっとずつフレーズを付けていったんですけど、MJMが作ってきた歌詞とメロディーが強すぎるもんだから、思っていた以上に楽器が負ける瞬間があって。メロディーに歌詞を乗せたデモを何回も何回も聴き込んで、どういうアプローチをしたらいいのか考えました。歌詞が強烈だったから、その世界観を疾走感を失わずに描きたかったんです。音楽って絵のないものだから、それを見せるのが演奏だと思うんですけど、今回はそこに一番時間がかかりましたね。悩みすぎて、レコーディング中に弾けなくなったこともありました。ほんと、曲とメロディーとのぶつかり合いでしたね。

NIKEさんがおっしゃったように歌詞とメロディーに負けないようにと心掛けた結果、演奏も説得力があるものになりました。中でも演奏の推進力になっているドラムの役割は特に大きかったのではないでしょうか?

AKAHIGE
ありがとうございます。歌と一体になることを考えてフレーズを作ったんですけど、自分の足りない部分がどんどん出てきちゃったのでどうしようかと考えて、毎日筋トレをして晩飯には肉を食べました(笑)。結果、良いリアクションをいただけて良かったです。
MJM
それで出たビートなんだ!(笑)

―昨年ぐらいから、バンドの人気はぐんぐんと上がっているそうですね。

MJM
でも、音楽を作る気持ちは全然変わっていないんですよ。曲に合うサウンドにしたかったから、前作とは音質は違いますけど、ノイジーなパンクっていうか、グランジとか、マッドチェスターとか、オルタナなギターとメロウが融合したものをやりたいっていうのは、このメンバーが揃った時からあまり変わってない。

でも、これまでよりも多くの人に聴いてもらえる作品になったという手応えはあるのではないでしょうか?

MJM
それはあります。前作は超えられたと思いますし、自分でも言うのも変ですけど、こういうバンドが10代の終わりとか、20歳前後の時に聴きたかった。それを鳴らしたいんです。そういう作品になりました。

取材:山口智男

アルバム『MIRROR MIND』2017年6月7日発売 actwise
    • ACW-010
    • ¥2,160(税込)
BALLOND'OR プロフィール

MJMとNIKEを中心に下北沢にて結成。2017年、夜の本気ダンスなどが所属するactwiseに加入。18年7月にミニアルバム『Blue Liberation』、同年10月にミニアルバム『BLOOD BERRY FIELDS』を2枚連続で発表。20年4月には3年振りのフルアルバム『R.I.P. CREAM』を完成させた。BALLOND'OR オフィシャルHP

OKMusic編集部

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