L→R くにやん(Ba)、サイトウユウキ(Dr)、none*(Vo&Key)、Suzuki-man(Gu)

L→R くにやん(Ba)、サイトウユウキ(Dr)、none*(Vo&Key)、Suzuki-man(Gu)

【[lifter]】“これ全部が[lifter]”
と思えるアルバム

バンドと対等に聴かせるピアノに女性ヴォーカルがやさしく漂う[lifter]。結成から約9年という時を経てのリリースとなる初の全国流通盤。セルフタイトルを名付け、自ら“集大成”と掲げた今作について訊いてみた。
取材:高良美咲

まず、[lifter]は2005年に結成されたということでバンドとしては長いですが、結成から今回の初の全国流通盤に至るまでの9年というのは?

none*
長いとも感じないし、短いとも感じないし…その時々によって変化をしてきた感じです。私はもともと曲を作っていなかったんですけど、今回リリースするのは全曲の作詞作曲が私なんですよ。結成したのが前のギターの人だったりしたので、ギターの人がプロデュースしてるバンドだったのが、徐々に…そしてガラッと変わった感じです。
Suzuki-man
僕とドラムが入ったのは3年前くらいで。

現在の4人編成になった2011年ですね。おふたりが[lifter]に加入したきっかけは?

Suzuki-man
10年ほど前からnone*とは知り合いで、8年前くらいから録るほうの手伝いとかはしていて。プライベートとして友達の印象のほうが強かったですね。ふわっと入りました(笑)。
サイトウ
僕はmixiのメンバー募集で試聴をして、女性ヴォーカルのバンドをしたことがなかったのでやってみたいというのが一番のきっかけでした。あとは楽曲に惹かれましたね。今作にも入っている「メトロ」をぜひ演奏してみたいなと思いました。

おふたりの加入後は、この4人が揃って初となる1枚目のミニアルバム『或る模様』を出していますけど。

none*
これは、“その時の4人のベスト”みたいな感じで出したんですけど、今の[lifter]の基本となる作品になったなと思います。ライヴ会場で手売りしかしてなかったんですけど、初めて店頭に置いてもらいました。それで知らなかった人が買ってくれたり、いろんな出会いのきっかけになった作品です。

この時のレコーディングはどうでしたか?

Suzuki-man
今まで聴いてくれていた人でもスムーズに新しいメンバーの音を聴けるように意識して作りました。前のギターがすごい上手くて、自分で弾けるようにフレーズを変えたりしたんですけど…(笑)。イメージを壊さずにどう弾くかっていう。
サイトウ
僕は[lifter]での初めてのレコーディングで結構緊張していて、録る時もギターのSuzuki-manさんに手伝ってもらいました。演奏で精一杯というか、限られた時間しかなかったので、そこでなんとか無事に終えるように意識を持っていった感じですかね。
none*
この作品は、自分たちだけで作りたくて…ミックスからマスタリングまでSuzuki-manがやって、ジャケットはバンドのキャラの“モフーン”を描いてくれた人に絵を描いてもらったりして、自分たちの表現したいことが出せました。その後にEPを出したんですけど、あの時は“[lifter]とはこういうバンドです”という名刺代わり的な作品を作ろうという感じでしたね。

今作はようやく初の全国流通盤ということで、詰め込みたかったことや表現したかったことはたくさんあったと思うのですが、どういうところを主軸に制作を進めていったのですか?

none*
新録した曲もいくつかあるんですけど、それとのコントラストというか、自分たちが今まで大事にしてきた曲とかも聴いてほしいというのがあって、再録もしました。その中で、タイトルは“[lifter]しかないだろう”って。[lifter]は歌も聴こえてくるんだけど、やっぱり“バンド”だというのが自分の中であったのでそこを大事にして。あと、ピアノもギターも私の中では互角で。

アルバム全体を通してそれぞれの個性も出てるし、個々のもともとのポテンシャルが高いと思いました。

none*
9年変わらないんですけど、曲を作る時にがっつり作らないで弾き語りのデモを持っていくんです。それはバンドマジックを信じているからで。“みんな何を出すかな?”という楽しみとか、否定でも肯定でも、みんなが何を感じたかを知りたいんですよ。そこでできるものが[lifter]だと思っているので、自分の中ではいろんな音が鳴っているけど、あえて隠し通すというか。イメージがあれば初めに伝えるけども、個性を活かしたいと思ってるので。

じゃあ、バンドに任せたことによってデモと印象が変わった曲は?

none*
「3月の雨」は震災の後で、まだふたりが入っていない、ベースのくにやんとふたりの時に書いた曲です。なので、くにやんのベースを意識しながら作っていて。次に[lifter]を組む前にSuzuki-manがアレンジしたバージョンをふたりで無料ダウンロードでリリースしているんですよ。イメージが激しい雨じゃなかったので、こんなアップテンポになってどういうものになるかな?と思ったけど、4人でやった時に、アップテンポになっても激しい雨という感覚じゃなかったんですね。だから、自分の中でまったく違うイメージ、仕上がりだけど、すごくすごく好きになった曲です。自分で作った時、くにやんとふたりだった時、Suzuki-manとふたりだった時、4人でやった時がまったく違うものになりました。
Suzuki-man
僕は「メトロ」だと自分で胸を張って言いたい(笑)。この曲はもともとあったんですけど、その時は3ピースバージョンだったんですね。3ピースだったので、印象が強いピアノのフレーズがあるんですけど、そこに負けじとギターを入れてみたら、“これはギターがなかったらだめでしょ”となって。ピアノとギターが両方リードを弾く、みたいな。その掛け合いで曲の印象を変えたのは僕だって思ってます。それが(メンバーに)伝わってるかどうかは分からないですけど…。
none*
私はライヴの時PAさんに渡すセットリストに“最後はピアノソロでもギターソロでもなく、ピアノとギター互角で”って書いてますから(笑)。伝わってる!
サイトウ
僕は「barabara」。これもSuzuki-manさんが打ち込みでリズムを考えていて、最初僕はその打ち込み通りにやっていたんですけど、Cメロが決まってなくて。アウトロのところも自分なりに個性を入れたので、個人的にはデモと印象が違うかなと思います。

先ほど、再録もあると言っていましたけど、一番古い曲はどれになるのですか?

none*
「そのまま」ですね。私が曲を書き始めてほぼ初めに書いたような曲で、すごく古いです。2006年とかにSuzuki-manに手伝ってもらってレコーディングをして、今は無き下北沢のレコードショップとかに置いてもらったCDにも入ってます。今の4人になって構成も変えてます。

今のメンバーでリアレンジする時はどういうところを意識して変えていったのですか?

none*
大体リズムパターンから変えていったりして、一番ガラっと変えたのはドラム。あとは、歌始まりにして、ミドルテンポのポップス寄りだったものをちょっとロックにしました。ベースはベースで勝手にやるので(笑)。でも、それは私とかけ離れていることはあまりないので、ほぼそれも採用という感じです。一番最後にギターが決まってきます。みんながどう出るかによって。
Suzuki-man
僕は、『緑のたぬき』で言う“あと乗せサクサク”みたいな…

かき揚げですか?

Suzuki-man
そうです(笑)。最後に乗っかる、美味しいやつ。先に乗せるとふにゃふにゃになっちゃうんで(笑)。一番最後にギターを乗せたいんです。
none*
Suzuki-manはギタリストであり、もともとDJなんですよ。だから、コラージュとか、全体を見ての味付けのバランスが上手ですね。
Suzuki-man
あとは、“ヴォーカルが女性でピアノ”っていうのが一番の印象として出てほしいんですね。それを崩さないギターを弾きたくて。隙間を縫ってギターは出るんですけど、先にピアノを自由に弾いてもらって、それに合わせて弾きどころを見定めたいために一番最後に入りたいんです。

確かに、このシルキーなヴォーカルとピアノがこのバンドの武器だと思うのですが、そこに当てるギターは結構自由にやってますよね? 実は裏でノイジーなギターを弾いていたり。

Suzuki-man
そうなんです(笑)。目に見えない、暑苦しい重さがあるみたいな。
none*
本人は“湿気サウンド”って呼んでます、湿気命(笑)。

そこがさっき言ったメンバーの個性ですよね。今日はいないですけど、くにやんさんのベースもわりと主張してますし。

none*
わりと…相当(笑)。“俺が俺が”って出てきます。ライヴでもそんな感じなんで。“俺がヴォーカル!”くらいに(笑)。
Suzuki-man
くにやんは高校生の時はギターを弾いていたみたいで、リズムを支えつつ、メロディーラインを感じるような…ギタリストっぽいベースですね。それが、前に出ている“俺が俺が”感(笑)。逆に僕はギタリストっぽくないギターって言われるんですけど、わりと控えめに弾くほうが、ピアノを目立たせるというか。くにやんと僕は、普通のバンドとは印象が逆なのかもしれないですね。

それがこのバンドの面白いところですね。サイトウさんは?

サイトウ
セッションとかでもそうなんですけど、自分が思うように最初はやって…何かあればみんなから言われるので。で、できるだけその意見を取り入れてみんなにすり寄っていくような感じです。特に主張は…ウワモノが暴れてくれれば僕は下でどっしりとやる感じです。歌の印象にシンバルを合わせたりとか。
Suzuki-man
言ったらできるんで、いっぱい言っちゃう(笑)。
サイトウ
くにやんさんもSuzuki-manさんもよくスタジオでドラムを叩くんです、僕がいない隙に(笑)。逆にそこで叩いてる音を客観的に聴いて、もっとこうしたほうがいいかなぁとか。音色とか叩き方も結構言われるので。

それをちゃんと反映させられるのはすごいですね。

Suzuki-man
上手なんですよ!
サイトウ
なるべくみんなの意見に近付けようっていうのがあります。最初は自分なりにやって、それぞれにイメージがあると思うので、それに近付けていく感じですね。

なるほど。曲は歌が際立っているのですが、主に日常を歌っていますよね。言葉はやわらかいのですが、明るそうで実は明るくない(笑)。

none*
あんまりごりごりのラブソングはないですね(笑)。女性ピアノヴォーカルでポップなのに、実は毒があるというのが[lifter]のコンセプトだと思っているので。そして、あくまでもバンドを意識しているので、そのちょっとの毒をどう作るかっていうのは自然と曲を作る段階から意識しているかもしれないです。

でも、この中でも「hopping shower」は異色だなと思ったのですが。

none*
実は、知り合いの女の子が結婚する時にお祝いの歌として書いた曲なんです。結婚式に呼ばれたのに演奏できそうな曲がなかったので作ろうと(笑)。初めて誰かのために書いた曲だったので、この曲だけ印象が違ったんだと思います。これだけは毒があまりないかもしれないです。

ちょっとした幸せなどが描かれていて、今作にメリハリを付けてくれる曲ですね。

none*
そうなんです!! 嬉しい(笑)。男の声で最後に図太いコーラスが入っているんですけど、ライヴではイントロから手拍子してくれたりとか、お客さんも巻き込んで歌っています。初めはその子のためだったんですけど、みんなの曲になったのでこの13曲に入れました。

相手からはどのような反応が?

none*
号泣してました(笑)。ずっとライヴに来てくれている、もともとはファンの子なんです。その子がライヴを観ている時に一番前で笑ったり泣いたりするんで、その姿を思い浮かべて書きました。《今日は君のだいすきなあの唄もうまく唄えた》っていうのもその子のことを思って書いているし、ずっと笑っていてほしいなという気持ちが伝わったみたいで。
Suzuki-an:
自分の中では憧れなんですけど、『エヴァンゲリオン』で言う、“おめでとう”的な…
none*
全然分からない(笑)。
Suzuki-man
わりと暗い話なんですけど、“おめでとう”の回があって、その回がこれかなっていう(笑)。毒の中にこういうのがあってもいいのかなって。明るいからこそ暗い部分がより引き立つというか、そういうスパイス的な役割をしているというか。
none*
唯一メロディーがすごく跳ねているし。自分の中ではもっとハッピー感を出すつもりが、この4人でやるとちょっとロックな仕上がりになりました。
サイトウ
この曲はやり始めてすぐにリズムもしっくりきて。今回のアルバムの中で好きな曲です。あとはnone*さんのこの曲のイメージと歌詞に合わせて、それぞれのソロがあって。それを弾きつつ、最後のアウトロでみんながハンドクラップをやるところでは、暴れまではしないんですけど、引き立つように演奏するように心掛けました。

戻りますけど、リード曲の「君の透明」はいつできた曲なのですか?

none*
これは、一番最後ですね。
Suzuki-man
デモは(none*の)パソコンの中に埋もれていたんです。
none*
パソコンの中に埋もれていたんですけど、自分の中に残っていて…すぐに思い出せる曲だったんです。私は曲と歌詞が同時なので、そこにAメロBメロを作って持っていったらアレンジもすぐに決まって。

それをリード曲にしたというのは?

none*
すごい好きなんです、単純に(笑)。この13曲の中では最新だし。
サイトウ
くにやんさんもえらく気に入っていて。ダンサブルなので。

みんな意見が一致していたということですか?

Suzuki-man
僕は全部リード曲なんで(笑)。みんながそれって言うならそれにしようって。これも僕は後乗りなんですけど。
none*
くにやんと私の中で特に、“これにしよう!”というのはなく、“これでしょ”って初めからリード曲として立っていました。

なるほど。そんな楽曲たちを収録した今作は、バンドとしても“集大成”を掲げているわけですけど、出来上がってみてどのような一枚になりましたか?

none*
自分が思い描いた曲順じゃないところも一部あるんですけど…(笑)。実は昨日、1枚通して聴いてみたんです。13曲って、続けて聴くとすごい長いと思うんですよ。続けて聴く人がいるかいないかは分からないですけど、1回聴いて“これ全部が[lifter]だ”って思えるアルバムというか。これを今出すということで、“次はどうくるのかな?”って思ってほしいです。こういう景色だとか、色だとかは決められない。自分の中ではあまりカラフルではなく…かといって色がないわけでもなくて。淡いイメージなんです。聴いた人それぞれがいろいろ感じ取ってライヴに来てもらいたいです。
Suzuki-man
やっと全国流通というのもあるので、バンドの顔を知ってもらえるきっかけになったかなと思います。
サイトウ
過去の曲と、今の4人で作って入れた曲もあるので、知っている人ももちろんですけど、知らない人にも聴いてもらいたいです。

その後はまた全国各地でライヴを行ない、最後には12月5日に青山月見ル君想フにてワンマンが控えていますが。

none*
そうです。9年もやっていて、ワンマンも実は初めてなんですよ! 自分たちでもどうなるんだろう?というワクワク感があるので、来てくれた人が忘れられない日になればいいなと。ほとんどの曲をやるし、自分たちの丸裸です。来てからのお楽しみ。自分たちもどうなるか分からないです。

ここからようやくスタートという感じですね。

none*
9年が長過ぎたので(笑)。
Suzuki-man
セミみたいなものですね…

1週間で終わっちゃう!(笑)

none*
出してから頑張るんじゃないの!?(笑) やりたいことは詰めましたので、これからもよろしくお願いします(笑)。
『[lifter]』
    • 『[lifter]』
    • NHCR-1135
    • 2014.10.22
    • 2484円
[lifter] プロフィール

リフター:2005年結成。11年7月に現在の4人編成となり、12月に1stミニアルバム『或る模様』、12年にEP『やわらかなやみ e.p.』をリリース。現在は都内を中心にライヴ活動を行ないながら、さまざまなイベントにも精力的に出演。14年10月22日に、結成9年にして初となる全国流通盤『[lifter]』をリリース。[lifter] オフィシャルHP

OKMusic編集部

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