L→R 須藤憲太郎(Ba)、岸 明平(Gu)、内田直孝(Vo&Gu)、磯村貴宏(Dr)

L→R 須藤憲太郎(Ba)、岸 明平(Gu)、内田直孝(Vo&Gu)、磯村貴宏(Dr)

【Rhythmic Toy World】作りたいと思
っていたものを作れたと実感できた

前作『BUFFeT』から1年3カ月振りとなるフルアルバム『「HEY!」』を7月6日にリリース! “ライヴを詰め込む”というビジョンを持って制作されたという今作について内田直孝(Vo&Gu)に訊いた。
取材:高良美咲

昨年12月にリリースしたシングル「輝きだす」(森永製菓『DARS』のCM曲)は、これまであまり表立って出してこなかったどこか哀愁や切なさを感じる作品でしたが、反響はいかがでしたか?

自身としても初となる書き下ろしという経験だったので、それまでの制作方法とはまったく異なる方法をとりました。絵コンテやテーマやキーワードをいただいたところからスタートという感じで、最初は部屋にこもってギターを弾いてメロディーを考えてっていう感じだったんですけど、なんだかしっくりこなくて。いつもはそういう方法で曲が浮かんでくるんですが、それは自分の中に蓄積した経験や感情を具現化する行為だから、例え部屋であろうがどこであろうがアウトプットすることはできるんでしょうね。でも、あらかじめ情景や感情のレールが敷かれた状態で、部屋の中で作るのはなんか違うなって。だから、思い切って絵コンテに近い環境に出向くことにしたんです。実際に駅の近くでベンチに座って会社帰りの人たちを眺めていました。2時間くらいそこでぼーっとしてると日も暮れてくるし、酔っ払った人がいたり、そうでない人がいたり。年齢だって性別だって違う。だけど、今この瞬間、僕の視界という狭い世界の中にそれらは同時に存在している…なんだかセンチメンタルな気分にも似た、それでいてエモーショナルな感覚に陥って。そんな時、自分自身もどこか背伸びをしていたような、強がっていたような気がして、それをみんなに打ち明けようって思ったんです。誰もが同じように生きていて、だけど同じように笑って、泣けて、怒ったりできることが、本当に尊いことなんだって思えて。そんな時に頭の中にBGMのように流れてきたのが「輝きだす」のサビでした。歌詞も同時に。これしかないって思いましたね。メンバーからもチームのみんなからもお客さんからも新しい一面が見れて嬉しいって言ってもらえて、自分自身が救われたような気がしました。それからはバンドとしての表現が、“発信”だけではなくて“包容力”みたいなものがプラスされたような、そんな感じがします。

7月6日にリリースとなるアルバム『「HEY!」』は前作『BUFFeT』から1年3カ月振りになるわけですが、いつ頃から構想があったのでしょうか?

前作をリリースした時から、次もフルアルバムでいこうっていう話はしてたんですが、制作の具体的な構想ができてきたのはツアーの後半戦くらいに差し掛かったくらいですかね。ツアーをやってたくさんライヴをやっていくうちに自分たちのライヴに必要な、欲しいと思う楽曲の姿を捉えることができたので。

具体的に、どのようなビジョンがあったのですか?

ズバリ“ライヴを詰め込む”ってことですね。一切の妥協も許さずに、純粋にライヴでみんなとひとつになることだけを考えて制作をしていました。僕はCDというツールは一般的に“聴く”という感覚に訴えかけるものだと思っていました。だけど、それじゃもう面白くないし、曲を聴いて目を閉じれば、たちまちそこにはライヴ会場が広がっているような、そんな視覚的にも楽しめるアルバムが作りたかったんです。2Dではなく3Dのような立体的な音楽が作りたかった。

制作をするにあたって、挑戦したことは?

今までの制作と明らかに違ったのは、メンバー全員がそれぞれパソコンを用意して音楽制作ソフトを使用したということですかね。今までは“曲の温度感を大切にするにはアナログ感が大事だ!!”とかいう何の根拠もないことを掲げてたんですが、“やったことないことをやってみよう”というチームの方針にのっとって今回はデジタルな環境での制作に挑戦したわけです。その結果、変更点や過程がログのように保存されるので、メンバーやプロデューサーとのやり取りが格段にスムーズになりました。何度も何度も曲と向き合うことで、懸念していた温度感がむしろ増したように思います。愛着が沸くというか、曲との思い出がどんどんできるというか。

“温度感”はもちろん“ライヴ”というのが重要なキーワードに感じます。

先程も言ったように、ライヴに必要なものは何なのか、ライヴバンドとして自分たちを昇華していくために何をすべきなのか…そういったテーマと対話をしながらの制作だったので、今作を引き連れてのツアーはこれまでにはない圧倒的なライヴ感、一体感を提示できると思います。自身に満ちあふれています。早くツアー始まれーーーーーーー!!!!

内田さんはバンドと並行して最近は弾き語りでのライヴも行なっていますが、そういったところでの変化はありましたか?

このバンドを組む前に弾き語りで活動していて、その活動がきっかけで今のメンバーに出会えたので、自分としては一生忘れることのできない、宝物のような原点だったんです。そんな原点に今立ち返って、もう一度“自分”という人間と向き合ってレベルアップをしたいと思いました。尊敬するアーティストと対話することやライヴをすることが増えてきたからこそ、負けたくない。このメンバーで最高で最強な最上級で最大のバンドになるために、自分磨きがしたかったんです。ひとりで演奏はするけど、みんなで作った曲を演奏する。みんなが付いてくれてるんです。そこで自分の人間力を磨いてバンドに持ち帰ることが、今の自分のひとつの課題です。ありがたいことに僕の弾き語りのイベントはチケットも完売続きで、改めてバンドの活動に、メンバーに、チームに感謝をしましたし、自信にもつながりました。今、バンドとしてはライヴ感が増して激しいシーンが増えてきました。なので、ゆっくり聴きたい人のための場所を作りたいという気持ちも大きかったですね。リズミックをいろんな角度から楽しんでもらいたいなと思ったんです。その活動のおかげでより歌詞にも力を入れるようになりましたし、伝えるということの難しさ、楽しさ、大切さを改めて知ることができました。

楽曲の話になりますが、歯医者での治療を書いた「MUSHIBA」は歌はコミカルなのにサウンドはバンド感満載で、スピード感を掻き立てるギターのリフもカッコ良かったです。こういったシチュエーションをハイテンションな楽曲に昇華できるのはRhythmic Toy Worldならではだと思いました。

ロックってやっぱり言いたいことを言うことだと思うんですよ、根本的には。でも、それがまかり通らないこともたくさんあるわけで…必要悪みたいなものですかね。詳しく言うのは人それぞれだと思うので省きますが。でも、そういう想いはあって、制作期間中に虫歯の治療で歯医者に通っていて、数年振りに行った時の治療の痛さに情けないながらも涙が出そうでした。“今伝えたいことは何ですか?”と問いかけられたら、“治療がつらい!”ってことだったので曲にしました。ロックだなって。楽曲に関してはめちゃくちゃカッコ良いものにしてやろうっていう悪戯心が働いてこんな感じになりました。まぁ、きっかけとしては先生が僕らの「いろはにほへと」が好きらしくて、“この治療のつらさを中毒性のある楽曲にしてよ!”って何の気なしに言われたのがきっかけなんですけどね。そしたら曲の選考に通ったみたいな。運命ですかね!

過去に自主制作音源の作品に収録されていた「カルテット」は今作に向けての再録ですか?

5年前くらいに作った曲なので、新しく録音し直しました。前はピアノとかも入ってたんですけど、それって結局自分たちの演奏力の足りなさを埋めるみたいなものだったので、今回はそれをやめて5年の間に培った自分たちの力だけでどれだけの表現ができるかっていうことに挑戦しました。本当に個々の成長が伝わってきて、レコーディングが終わった瞬間に感動して涙が出てきたくらいです。

「Cheki-Cheki」はライヴでのシンガロングが想像できる楽曲ですね。

この曲は最後にできた曲なんですが、ちょうどツアーに行っていて半月ほど東京に戻らないっていう状況での制作だったんですよ。東京に戻った翌日からレコーディング、みたいな。ライヴをしてホテルで曲を書いて、移動中にみんなで話し合って…そんな感じを想定してたんですが、現実はそんなに甘くなく。ツアーも残すところあと3日くらいのギリギリの時にメロディーや歌詞が出てきて、それからパズルのピースが一気にはまるようにバーーーっと最後まで書いたっていう感じです。最後の最後に振り絞った言葉が《「感情が無ければ良かったのにな」到底無理な話 見て、触れて、心が息をしたおかげでここまで来た》だったんですが、本当にその通りだなって自分に教えられた気がしました。制作を通して気付けたことがこれだったんでしょうね。

本作が出来上がった今の実感としては?

メンバーもみんな口をそろえて言っているんですが、完成してからずっと聴いてるんですよ。大体アルバムとかを作る時ってかなり聴いてるし、完成する頃には耳も慣れちゃってることがあるんですけど、今作は違ったんです。誰よりも完成を待ち望んでいたし、何度聴いても元気になれる…そんな作品が完成したと思っています。

中でも思い入れ深い楽曲は?

「Team B」ですね。これは僕らの事務所の“Teamぶっちぎり”への想いを曲にしたもので、本当に僕らのために身を粉にして支えてくれるチームが愛しくて、いつかその想いを曲にしたいと思っていたのを今回やっと楽曲にすることができたんです。近すぎて言えない感謝をかたちにして届けることができて良かったです。あとは、応援してくれているみんなもチームの一員なんだよっていう想いも込めました。リズミックは本当にたくさんの人のおかげで前に進めているんです。これからもそうやって手を取り合って進んでいきたいなという宣言のような。僕等のテーマソングです。

今後に対する期待や変化など、何かバンドとして実感していることはありますか?

やはりライヴですかね。こんな曲があればいいなという想いを具現化したので、それが思った通りに花を咲かせてくれるのかどうかって感じです。先日ライヴで新曲を披露したんですが、反応がすごすぎてびっくりしました。曲が終わる頃にはみんなが知ってるくらいの一体感で本当に感動したのと同時に、作りたいと思っていたものを作れたんだなと実感しました。

リリース後にはさまざまなアーティストを迎えた『「HEY!」の「HEY!」による「HEY!」の為のツアー』を行ない、10月21日には赤坂BLITZでのワンマンライヴが決定していますが、意気込みなどあれば教えてください。

ツアーって自分たちを成長させる機会だとも思うんですが、“仲間との旅”っていうイメージが強いんですよね。いろんな場所で出会った仲間たちが自分たちに力を貸してくれるから成り立つわけで…それってなんかワクワクするじゃないですか。僕たちのお客さんにも、“リズミックの仲間はこんなにカッコ良いんだぞ”ってことも知ってもらいたいし。それが連鎖してどんどん未来につながっていく感じがたまらないですよね! そうやって得た経験を自分たちのパワーに変えて、最終日はその全てをぶちかますつもりです。曲がどのように育っていくのかも楽しみです。一緒にASOBOYA!!!
『「HEY!」』
    • 『「HEY!」』
    • STR-1040
    • 2016.07.06
    • 2700円
Rhythmic Toy World プロフィール

リズミックトイワールド:2009年に結成。10年に現在のメンバーが揃い本格的に活動を開始。13年4月に1stミニアルバム『軌道上に不備は無し』を発表すると、そこから怒涛のリリースを続ける。16年にはインディーズながらも森永製菓『DARS』の CM 楽曲に抜擢され大きな反響を巻き起こし、18年にはTV 東京系アニメ『弱虫ペダルGLORY LINE』のオープニングテーマを担当するなど、インディーズバンドとしては類を見ない活動を展開。そして、4月に4thアルバム『SHOT』でメジャーデビューを果たす。Rhythmic Toy World オフィシャルHP

OKMusic編集部

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