【the irony】満を持してリリースす
る新作に込めた、“歌を届けたい”と
いう想い

九州出身の4人が東京で出会い、2012年に結成したthe irony。全国区のバンドを目指す彼らが発表した2ndミニアルバム『10億ミリのディスタンス』で改めて見出したバンドのアイデンティティを、メンバー全員が語る。
取材:山口智男

昨年4月、1stミニアルバム『明るい未来の証明』で全国デビューしたことをきっかけにバンドの状況も変わってきたのじゃないでしょうか?

工藤
すぐに2枚目を出さなきゃって思いました。っていうのは、周りのバンドでも1枚目を出して話題になっても、“あれ、最近名前聞かないな”ってことが多いから、自分たちもそうなるんじゃないかって怖かったんです。それで2枚目を年内には出さなきゃと思う一方で、機材車を買ったことで地方にも行けるようになって、ライヴの本数も増えて…1枚目を出したあとに、100本ぐらいやったんですよ。そんなことをやっていたら、(今回の作品の1曲目に収録されている)「幻影少女」ができるまで、リード曲を決めきれなかった。聴いてもらうと分かると思うんですけど、“バキーン”“ジャリーン”という音じゃなくて本当に言葉や歌で勝負していく曲なんです。だから、振り返ってみると“1枚目を出したあとの2枚目でthe ironyをどう見せていくか?”ってところで、リード曲を決めるにあたってすごく悩んだ期間でしたね。スタッフも含め、“次のthe ironyの道標になるのは、こういう曲だよね”っていうのをずっと探してました。
船津
分かりやすく言えば、BLUE ENCOUNTなのか、back numberなのか(笑)。ギターロックシーンでどういうバンドになりたいのか? 涙なくして見られないようなバンドになりたいのか、それとも“イエー‼”ってやれるガッツのあるバンドになりたいのか? それを考えた時に僕ら4人は、“歌を届けたい”“リスナーに寄り添えるものを作っていきたい”っていう、それまでぼやっとしてたものがはっきり見えてきて。それでそういう曲を書いてみようかって書いてみたのが「幻影少女」だったんです。
工藤
いろいろなものがつながる曲になったんですよ。今回のミニアルバムのタイトルは“10億ミリのディスタンス”っていうんですけど、僕らが出てきた福岡と東京の距離がだいたい1,000キロメートルなんです。1,000キロメートルって言っちゃうと、すごく遠く感じるけど、10億ミリメートルって近く感じない?みたいな(笑)。僕らが九州から出てきて、今ここで頑張っているっていう状況を表現できると思ったんですけど、「幻影少女」にもそういうことが散りばめられてるんです。例えば、歌詞の“山手通り”と“昭和通り”。昭和通りって福岡の街の真ん中にあるんですけど、調べてみたら東京も含め全国にあるんですね。僕らとしては上京する前と上京した後の自分を歌ったつもりなんですけど、いろいろな人の故郷や、その人たちが今頑張っている状況にも重なると思うんです。

その「幻影少女」は楽曲、バンドサウンドという意味では、新境地が感じられる曲になったのではないでしょうか?

脇屋
常に新しいことは取り入れようとしているんですけど、「幻影少女」は1サビの終わりまでドーンとこない。リード曲という意味では、それって結構チャレンジだと思ったんですよ。でも、それによって“the ironyはこれから歌モノでいくぞ!”ってことをうまく表せたんじゃないかと思います。

おっしゃるように、歌をしっかりと聴かせるバンドではあるんですけど、全曲に入っているギターソロも含め、演奏もちゃんと聴きどころになっていて、メンバーそれぞれの顔が見えるようなサウンドになっているところがユニークですね。

工藤
でも、アレンジする時は基本的に歌メロを壊さないことを意識してますけどね。
川崎
そうですね。できるだけシンプルに作りたいというのはあります。

でも、ベースラインは結構動いていますよ。中でも2曲目の「ERROR」はベースで始まるし、ベースソロもある(笑)。

工藤
アニキ(脇屋)がまるっと作ってきたんですよ。
脇屋
ベースから始まる曲がなかったから、よっぴー(川崎)にスポットが当たるような曲を作ろうと思って。そしたら、思いのほか難しくなっちゃいました(笑)。
川崎
ライヴでやるのが怖いです。練習しなきゃいけないですね(笑)。

脇屋さんはどんなアプローチで?

脇屋
ソロも含め、ギターのフレーズは歌いながら作ってます。それから簡単に作ったドラム、ベースのアレンジを、(工藤)伊織とよっぴーに投げて、そこで広げながら最後にまたギターを足すというやりかたですね。
工藤
ギターは結構重ねてるもんね。「幻影少女」なんて十何本入れてるでしょ?(笑)
脇屋
しかも、これはthe ironyの音源の秘密なんですけど…全曲、アコースティックギターが入ってるんです。

あ、確かに入っていますよね!

脇屋
分からない曲もあると思うんですけど、全曲、LR(のトラック)に入れてます。そうすることで、ちょっと音が厚くなるんですよ。いや、ここはカットしてください。他のバンドに真似されちゃうんで(笑)。

なるほど。歌を届けることを一番に考えつつ、バッキングのサウンドはシンプルだったらいいというわけではないと。確かに「Daybreaker」はライヴで盛り上がることを意識したアレンジになっていますし、「白い花」にはストリングスが入っていますね。

脇屋
the ironyはバラードのウケがいいんですよ。だから、アルバムには必ず1曲入れようと思ってるんです。今回、「白い花」を入れるにあたっては、ストリングスが鳴っているとメジャー感が出るというか、インディーズだけど結構しっかり音作りしているってところが出ると思って、福岡でバンドやってた時のメンバーが今音楽の仕事をしてるんで、入れてもらったんです。メンバー以外の人に参加してもらうって、バンドとしては初めての試みでしたけど、すごい力作になったと思います。

今回のミニアルバムはthe ironyが持っているいろいろな魅力を偏ることなく印象付ける作品になりましたね。

脇屋
それはよかったです(笑)。
工藤
実はラストの「蒲公英」をリード曲にしようという話も出てたんですよ。でも、まだ何か作れるんじゃないかって。
脇屋
最後に「幻影少女」ができて、アルバムとしてまとまりが出ました。後付けになっちゃうかもしれないですけど、いい作品になったと思います。

焦らず、「幻影少女」ができるまで粘って良かったのですね。

工藤
そうですね。1枚目は出すまでに2年半ぐらいかかったんですよ。お客さんゼロからのスタートで、ライヴではノルマもたくさん払って、ライヴの打ち上げも朝まで残って、ちょっとずつ知り合いのバンドを増やしていって…やっとですね(笑)。それまで積み上げてきたものっていうか、曲数も結構あったからそこからいい曲を選んで、1枚目はバーンと“はじめてまして!”って出したんですけど、やっぱ2枚目は“あ、そこ止まりね”って感じになっちゃうのも怖かったからいろいろ悩みましたけど…。でも、結果、1枚目を超える作品になったという自信はあります。
船津
満を持して…という実感はありますよ。
工藤
焦りもありましたけど、納得できるものにできて良かったです。それが一番良かった。

リリース後は、自信作になった新作をどんなふうに今後の活動につなげていきたいと考えていますか?

工藤
まずは全国ツアーですね。リリースの翌日から始まるんですけど、そのツアーファイナルが11月23日のShibuya WWWのワンマンなんです。対バンしたいと思いながら手の届かなかったバンドさんともやらせてもらえるようになってきて、新しい刺激ももらいながら、ライヴバンドとしても強くなってきたという実感もかなりあります。今回のツアーを通して、またさらに強くなった状態でShibuya WWWに立てるんじゃないかなと思ってるので、ぜひ期待していてください。
『10億ミリのディスタンス』
    • 『10億ミリのディスタンス』
    • AFD-0050
    • 2016.06.22
    • 1620円
the irony プロフィール

ザ・アイロニー:九州から上京してきたメンバーが出会い、2012年8月に結成。その後、自主制作盤5枚を発表し、全てソールドアウト。下北沢ReGで開催した自身初となるワンマンライヴを大成功に収め、15年4月に1stミニアルバム『明るい未来の証明』で全国デビュー。16年6月、待望の2ndミニアルバム『10億ミリのディスタンス』をリリースした。the irony オフィシャルHP

OKMusic編集部

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