【ハンブレッダーズ インタビュー】
冴えない青春すらポップに落とし込む
日本のテン年代ロックンロールバンド
高校時代の友達同士で結成し、絵に描いたような冴えない青春時代や捻くれた妄想を、“ポップス”と言って差し障りないグッドメロディーに落とし込む4人組。人のことは笑えない、そんなリアルを描く中心人物ムツムロアキラ(Vo&Gu)の話からこのバンドのオリジナリティーを探る。
高校生ぐらいから一緒にバンドをやってると、青春のいろいろを共有してきてるんじゃないですか?
当時、僕とギターの吉野は同じ人のことを好きやったりして、しかもふたりとも振られてるんです(笑)。僕は文化祭の前日に好きな人に“明日ライヴするから観に来てよ”って言ったんですが、文化祭の日の早朝に“嫌です”ってメールが…(笑)。
“売れて見返してやろう”という想いは?
“売れたいな”っていうのはあるのはあるんですけど、もともと一番の目的はそこじゃないなと思ってて。自分たちのやりたい音楽を作って、それを届けるために音源を売りたい、ずっとこれを続けたい、そのために売れたいっていう感じで音楽をやってます。
なるほど。今回のアルバム『純異性交遊』の1曲目「DAY DREAM BEAT」では、好きな音楽に出会った無敵な心情がリアルなんですが、歌詞に出てくる“革命歌”はムツムロさんにとっては何だったのですか?
エレファントカシマシと銀杏BOYZがでかくて、青春時代にずっと聴いてましたね。ハンブレッダーズでは僕がメロディーと歌詞を作るんですけど、今でも意識したりしてしまいますし。みんな聴いてる音楽はバラバラなんですけど、そこだけは共通であります。ポップスやパンクロックが好きだっていうのは、ひとつバンドのカラーとして出てるのかなと。
宮本浩次さんにしても峯田和伸さんにしても突き抜けた人じゃないですか。そこに対してはどう折り合いを付けたのですか?
ふたりとも圧倒的にカリスマじゃないですか(笑)。そのふたりより、僕はまともな感性を持ってるかなっていうふうにも思うし、その分、そのふたりぐらいのカリスマ性がないなって思ってずっと生きてきたんで、それを4人で補うっていうか。僕だけの力じゃなくてハンブレッダーズの4人だから鳴らせる音楽をやるしか僕はないのかなと、そっちに振り切ってバンドやってますね。
ハンブレッダーズって捻くれてるけど、実は古今東西のボーイミーツガールソングの流れの上にいるような気がします。
前のアルバムまではラブソングだったり、音楽に対する愛ばっかり歌ってたんです。でも、23歳になってちょっとずつ大人びてきて、今回の「常識の範疇」っていう曲では生き方だとか思想だとかをちょっと歌ってみたいなぁと思ったり。6曲目の「睡眠至上主義」はメロディーとバンドの音像から作った曲なんですけど、ノリやすい裏打ちのビートになってて。でも、明るい人間じゃない自分には《踊ろう》とか《楽しもう》みたいな歌詞は書けないから、ひたすら眠りにつきたいっていうようなことを踊れるビートの上で歌ってやろうと。年齢の経過で、恋愛や音楽以外でも書ける範囲が広がってきたのかなと思いますね。
「睡眠至上主義」は20代のサラリーマンの人が共感しそうです。上司に押し付けられる飲み会が嫌だとか、そういう人多くないですか?
多いと思いますよ。周りでもそういう声を聞くので。僕自身も月曜日が嫌な人間なんで、それを共感してもらえたらなと。
歌詞には書いてますけど、“戦争より月曜の朝のほうが怖くていいのか?”って若干思いながら書いてますよね。
(笑)。そうです。そこはすごい捻くれてるんで。でも、それをOKってしてくれるってことは、メンバー4人もそういう鬱屈した部分は持ってるってことで、それがハンブレッダーズになってるのは結果的にいいと思いますね。
でも、音楽は鬱屈としたものじゃないのは、曲の完成度に対してシビアだからなのでは?
うんうん。前のアルバムまでは僕がメロディーと歌詞を持って行って、それをメンバーで演奏して…って感じで作ってたんですけど、今回は僕のデモに対して、全員で歌詞に関するバンドのアプローチから考えて作れたんです。ストーリーに沿って音楽を作るってことを意識してたから、そうなってるのかもしれないですね。
「常識の範疇」はラップに近い言葉選びをしてますね。
個人的にラップにすごいはまった一年で。昨今のフリースタイルブームから入ったんですけど、そこから日本語ラップのクラシックと言われるところを聴き漁りました。ラップってメロディーに縛られないから、ポップスより自由に自分の言葉を使って個性を出そうとしてるのがすごい面白いなと思ったんですよ。メロディーは淡白だけど言葉はもっと濃密にしていったほうが幅広いものが書けるんじゃないかな?と思って。
エモーションだけでやってるわけじゃなくて、曲に対するアプローチが練られてますね。
中途半端にみんな頭が良いんで(笑)。天才だとかのレベルじゃないんですけど、頭を使って音楽を作ってるバンドかもしれないですね。例えば王道の《君が好きだよ》みたいな歌詞を書いても、ハンブレッダーズと僕の歌では多分響かないんじゃないかなっていうのはあります。そこは必然的に最終的に捻くれちゃってる(笑)。
結婚後を妄想する「ファイナルボーイフレンド」の歌詞の細かさは良い意味で気持ち悪いです(笑)。
ま、そうですね。恋愛に関してはズブの素人なんですけど(笑)。自分は“知りたい知りたい”って気持ちがあふれ出して曲を作ってしまうタイプなんで。
でも、曲がいいので意外と非モテとかマイノリティーってスタンスは早々に使えなくなるかもしれない。
それは自分の中でも薄々思ってたりはするんです。でも、10数年間ずっと自分のカーストが低いまま生きてきたんで、今さら思考の部分までは変えられないのかなと思って(笑)。これからも自分を卑下して曲を作っていくかもしれない。
すんなり耳に入ってくるのに、じっくり聴いたらギョッとするという違和感がハンブレッダーズならではなのかも。
そういう皮は被っておきたいですね(笑)。めちゃめちゃカッコ良い音を出すようなロックンロールはやってないと思うんですよ。でも、あとからじわじわ染み付いてくる要素…日本語の歌詞の部分であったり、吉野の印象的な不協和音のギターだったりが武器なのかなと思うし、そこの部分は分かってくれる人が増えてくれたらいいし。聴いてもらいやすい音楽だと思うんで、中高生のロックンロールの入門盤みたいになればいいかなってふうに思ってます。僕が聴いてきた音楽にそうしてきてもらってきたんで、してあげたいっていうと偉そうですけど、したいと思っていますね。
取材:石角友香
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アルバム『純異性交遊』2018年1月17日発売
ハンブレコード
ハンブレッダーズ:高校1年の頃、文化祭に出演するために結成。2017年8月には『SUMMER SONIC2017』に出演し、12月の『eo Music Try』ではミズノ賞と準グランプリをW受賞。翌18年1月17日に初の全国流通盤となる1stアルバム『純異性交遊』をリリース。ハンブレッダーズ オフィシャルHP
「DAY DREAM BEAT」MV
アルバム『純異性交遊』トレーラー