【Half time Old】新たな挑戦が実っ
た多彩な全12曲
9月にリリースしたタワーレコード限定シングル「A-Z」が評判の名古屋の3人組ロックバンド、Half time Oldが1stフルアルバム『人生の使い方』をリリース。多彩な全12曲がバンドの魅力をダイナミックに描き出す!
取材:山口智男
11年に結成した後、複数のオーディションで優勝する他、大きなフェスティバルに出演するなど、バイオグラフィーには華々しいトピックが並んでいますが、みなさんとしてはもちろん、“もっともっと”とか“まだまだ”とかという気持ちがあるのではないでしょうか?
阪西
バイオグラフィーだけを見ると順風満帆でやってきたように思われるかもしれないけど、メンバーの脱退を含め、紆余曲折もあったんですよ。おかげでいろいろ学べたし、現在の事務所に所属してからはチームで動いているので責任感も芽生えたんですけど、“ここまで来た”というよりは、“ここから”という気持ちなんです。
結成から5年、満を持してリリースする1stフルアルバム『人生の使い方』は、そんなここからという思いを反映しているせいか、Half time Oldというバンドの魅力をダイナミックに表現した作品になりましたね。
鬼頭
ありがとうございます。激しい曲がある一方でカントリーチックな曲もあって、これまでも“楽曲の幅が広いね”とは言われていたんですけど、僕が歌って、阪西がドラムを叩き、小鹿がギターを弾けば、Half time Oldの曲になるということは分かっていたので、今回もやりたいことは全部やりました。
前回のシングル「A-Z」の3曲もそれぞれに違う魅力を持っていましたが、改めて、こんなに幅広い、いろいろな曲をやるバンドなんだとちょっとびっくりでした。それはもとからだったのですね。ところで、今回は12曲中5曲で175RのISAKICKさんと吹野クワガタさんをアレンジャーに迎えていますが、それはどのような理由から?
鬼頭
アレンジの幅を広げたかったんですよ。それで、僕らには今ベーシストがいないから、ベーシストであるISAKICKさんにやってもらったら面白いんじゃないかってことになったんです。結果的にアレンジの幅も広がったんですけど、これまでの僕らは音を詰め込む傾向にあったんですよ。それはそれで曲が煌びやかになるんですけど、今回はシンプルでも歌を際立たせられるアレンジを提案していただいたので、かなり勉強になりました。「雨上がりの空に」のドラムなんて、ほとんどダッダッダッだもんね。
阪西
そう。今までになかったスタイルなんです。ドラムがシンプルでも上モノがちゃんと動いていたり、曲の構成がしっかりしていれば、ちゃんと歌が立ってくるんだって。それに加えて、これだけ曲数があると細かいところで手癖や同じようなフレーズが出がちなんですけど、そこも全然違う角度からアプローチしてもらえたんで良かったです。ISAKICKさんのアレンジをそのままやることもあったし、自分なりに考え直した箇所もあったし、その経験は今後もきっと活かせると思います。
歌を聴かせるバンドではあるけれど、小鹿さんが奏でるリードギターはもうひとつのメロディーと言ってもいいぐらいですよね。
小鹿
歌が一番大事だと思いながら、演奏面でも楽しませたいんです。そのバランスは難しいところではあるんですけど、ふたりもそんなにダメとは言わないから、前回のシングルからギターフレーズはより煌びやかになっているかもしれないです。
阪西
鬼頭の歌声はよく通るし耳に残るから、ギターが引っ込みすぎちゃったら物足りないと思うんですよ。だから、やりたいことをやっても大丈夫なのかなとは思います。
絶対、ハードロックが好きな人のギターだと思いました(笑)。
小鹿
ハードロックはちょっとかじった程度なんですけど、確かにギタリスト然としているというか、ロック然としているギターが好きですね。
ドラマーとしての聴きどころは、やはり「怪獣のお勉強」ですか?
阪西
派手なことをやっているんでそう思われがちかもしれないですけど、そういう手数が多い曲よりもシンプルな曲のほうが好きというか、叩き甲斐を感じるんです。そういう意味では、「アンチヒーロー」の2番のBメロで小鹿がワウを踏みながらカッティングしている裏のドラムを聴いてほしいです。今回はLa’cryma ChristiのLEVINさんにドラムテックをしていただいて曲ごとに音色を変えたので、その違いも。「怪獣のお勉強」は小鹿のハードロックギターを聴いてもらったほうがいいです(笑)。
小鹿
逆にギターは基本的にライヴと同じにしたいと考えていて、いつも使っているストラトキャスターをレスポールに持ち替えた「雨上がりの空に」以外は、普段の自分の音でレコーディングしました。
全曲の作詞作曲を担当している鬼頭さんは12曲を書き下ろしてみていかがでしたか?
鬼頭
自分たちでアレンジした曲は今まで通り作ったんですけど、ISAKICKさんに入ってもらった5曲は、鼻歌でほしいとISAKICKさんに言われて。いつも歌詞とメロディーを並行して作っているせいか、鼻歌でメロディーを作る時も、アレンジができてから歌詞を付ける時も入れたい言葉が収まらなくて…結構手こずりました。たぶん歌詞の譜割りに縛られずに自由にアレンジできるようにということだと思うんですけど。でも、鼻歌から作るとメロディーが強くなるという新たな発見がありました。中でもリード曲の「シューティングスター」は一番キャッチーになったと思います。今後、本当にキャッチーな曲を作りたいという時は、鼻歌から作ってみたいなと思いました。
歌詞は自分に対するものだったり、他人に対するものだったり、人生におけるさまざまな葛藤を歌っているから、“人生の使い方”というタイトルはぴったりだと思うのですが、翻弄されることが多い人生に対して、“使い方”としたところが能動的でいいですね。
鬼頭
あぁ、一番分かりやすいと思って、パッと出てきた言葉なんです。
これから人生においていろいろあるだろうけど、立ち向かっていこうという意思が感じられます。
今回、ヴォーカリストとしてどんな挑戦がありましたか?
鬼頭
いろいろな曲があったので、それぞれに相応しい歌い方をしました。アレンジが楽団風の「化石になればいい」と激しい「怪獣のお勉強」なんて、歌い方が全然違うんですよ。無心で歌う場所と、めちゃめちゃ感情を込める場所をちゃんと使い分けられました。
12曲というボリュームのアルバムを作るという経験を改めて振り返ってみて、いかがでしたか?
鬼頭
今まで経験のない大変さがありましたね。レコーディング前日まで歌詞もメロディーも自分の中で納得できなかった曲もあったんですよ。あれは大変でしたねぇ…。「怪獣のお勉強」は鼻歌で作ったメロディーに歌詞がはまらなくて、それならいっそメロディーを変えちゃおうって。レコーディングは都内でやっていたんですけど、ホテルの中では大声を出せないので、大声を出しても漏れないぐらい雨が降っていた深夜に機材車に篭って、“やばい、やばい”って言いながら歌詞とメロディーを考えました。その追い詰められた感じが激しい歌に表れているかもしれないです。
阪西
「怪獣のお勉強」は僕もアレンジができた時、かなり難しかったのでざわつきましたね(笑)。ただ、“これはやばい”と早い段階で気付けたので、対策を練りながら入念に準備しました。普段、変拍子の曲をやらないせいか…それでも大変でしたけどね。
小鹿
僕は得意とする曲だったから、「怪獣のお勉強」はそんなに苦労しなかったんですけど(笑)、12曲ある中でフレーズを似通らないように考えるのが大変でした。ぎりぎりまでフレーズを練っていたせいで練習が足りないんじゃないかって、レコーディングはちょっとドキドキでしたけど、頑張っていいテイクが録れたと思います。
リリース後は12月16日からは千葉LOOKを皮切りに、リリースツアーが始まりますが。
阪西
はい。ツアーをどれだけ濃いものにできるかを考えながら着実にやっていかないと、バンドのステップアップにはならないですから、まずはライヴでしっかりと演奏して、曲を伝えていかなきゃと思っています。曲が増える分、ライヴのバリエーションも増えると思うので楽しみでもあるんですけど、頑張らないとなって。
- 『人生の使い方』
- KIRS-1007
- 2016.12.07
- 2300円
ハーフタイムオールド:名古屋出身の4人組ロックバンド。鬼頭大晴(Vo&Gu)の描く“現実を切り取った日常”“現実への希望”を表現する詞の世界観と唯一無二の歌声から、多くの若者から支持される。2019年、数々のライヴサーキットにて入場規制、大型フェス『FREEDOM NAGOYA 2019』『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』へも出演。20年にはau三太郎シリーズ「みんな自由だ」篇 TVCMソングを担当し、同曲はYouTubeにて1,000 万回再生突破!Half time Old オフィシャルHP