L→R 飯村悠介(Gu)、須藤研太(Ba)、越雲龍馬(Vo&Gu&Programming)、高岩栄紀(Dr)

L→R 飯村悠介(Gu)、須藤研太(Ba)、越雲龍馬(Vo&Gu&Programming)、高岩栄紀(Dr)

【polly インタビュー】
“洋皿の上に乗ったおにぎり”を
志向する音楽

バンドイメージであるシューゲイザーやドリームポップ、ポストロックを皿に見立て、その上に乗るメロディーや言葉は今の日本で生きる青年のそれ。自主レーベルからの2作目となるアルバム『Pray Pray Pray』で深化した音楽像と思考をソングライターの越雲龍馬(Vo&Gu&Programming)に訊く。

自分だけと対話しているのは
怠慢な人生だと思うようになって

前作の『Four For Fourteen』(2020年11月発表のアルバム)の制作もコロナ禍に入っていたんですよね。

そうですね。がっつり入ってました。

その後、バンドのムードは変わりましたか?

やっぱり状況に慣れてしまうっていうのもひとつあるんですけど、2019年末ぐらいから2020年末ぐらいまでって、その状況に合わせていくのに必死だったと思うんですね。でも、慣れて振り返った時に、生きやすくなった人と生きにくくなった人がはっきりと分別された気がしていて。コロナが流行り始めた一年間より、今のほうがしんどいというのはあるかなと。

今は“何を希望にしてやっていくか?”ですからね。

本当にそうですね。だから、我に返った時に、このままのモチベーションや生活スタイルで生きていくことができるだろうかみたいな悩みはあります。

そういった意味でも“かたちにしておこう”という気持ちが今回のアルバムには出ている気がして。

はい。いつどうなるか分からないと思うので。今まではそこがフワッとしていたんですよ。でも、今は“残せなくなってしまってからだと遅い”という恐怖心みたいなものはあります。

前作で驚いたのはメロディーがはっきりしたことでした。

そうですね。そこは自覚的になりました。

極端な例えをするとボン・イヴェールのオケの上で小田和正が歌っているぐらいの。

あははは。でも、それは狙っていますね。前も何かで例えたかもしれないですけど、“海外のお皿におにぎりが乗っている”みたいな音楽をやりたいと思っています。

前作はそういう方向性が明快になり、今作は一曲の中にシューゲイザーが澄んだ音も混在していると感じたんです。

要素として取り入れたいだけで、シューゲイザーがやりたいわけではないんです。今までバックグラウンドとしてインプットしてきたものを、どれだけ日本という土台で鳴らしていくかというのは考えました。

先行配信曲もありますが、どの曲ができたことでアルバムの全体が見えてきましたか?

どれだろうな? 「愛している」ができた時になんとなく輪郭が出てきた気がします。

この曲は自分以外の人によくここまで向き合ったなと。

そうですね(笑)。今までは自分自身に向き合うことしかしていなかったんですよ。だけど、何かに向き合うようになってからは少し人生観も変わってきたと思います。

きっかけはあったんですか?

2018年に一番親しい友人が病気で亡くなって、それ以降も毎年のように親しい人が亡くなったんです。そこから自分だけと対話しているのは、すごく怠慢な人生だと思えたり、自分の周りの半径1メートルだけじゃない、部屋の外側を見つめて生きていかないと、ちょっと自分もしんどくなってきたというのはあります。だから、今作は何かに対して自分がどうするか、どう思っているか、今後どうしていくかってことをテーマにしたいなと。

そして、さっきの“洋皿の上におにぎり”の話じゃないけど、その傾向も強くなっていますね。

ただの模倣バンドにはなりたくないんです。それを追求しきるバンドもカッコ良いと思うんですけど、僕がやりたいのはそういうことではないと自覚しているので。やっぱりオリジナリティーってそういうところから生まれてくると思っていますね。

「窓辺」は洋皿におにぎりの例えがしっくりきますね(笑)。

そうですね。メロディーは和なので。あの曲は一番自分らしいと思っています。今まで積み重ねてきたものの集大成ではあるなと。

“洋楽の何々っぽい”とか言われて喜んでる場合じゃないし?

そうやって言う人のほうがナンセンスだと思っているし、別に“何々っぽい”とは言われても全然いいんですけど、“そのバンドよく聴くんで無意識に出ちゃってるかもしれませんね”としか言えない。

もちろんそういう音楽を好きな人も好きだろうけど、何年もバンドで鳴らしてきているから身になっているというか。

普遍性やキャッチーさはどうしても僕の中で必要なものだったので、洋楽模倣みたいなことはずっと続かないと思ったんです。やっていて楽しいのは最初だけで続かなかったんで。

確かにMy Bloody Valentineみたいなノイズピットやろうと思ったところで、あれ以上にはならないし。

そうなんですよ。マイブラはマイブラでしかないんで、それを超えるものはない…あれはひとつのムーブメントというか、山の頂にいるじゃないですか? だから、自分らは違う山を作って、そのてっぺんを目指さないといけない。ただ、1曲目の「Laughter」に関してはマイブラ30周年だったんで、それを純粋に愛としてやるっていうのがテーマだったんですけど(笑)。

この曲には元LILI LIMITの志水美日さんも参加していますね。1、2曲目のヴォーカルが奥にいるように聴こえます。

そこは狙いではあります。トータルで同じようなミックスにするのもひとつの作品としてはいいんですけど、今作はフルアルバムですし、やっぱりその曲に合ったものを着せてあげないと窮屈だなと。
アルバム『Pray Pray Pray』

OKMusic編集部

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