堤 有加

堤 有加

【堤 有加 インタビュー】
自分の音楽人生を
ちゃんとかたちにしたい

フュージョン系の音楽は
人間味や空気感が大事

クラウドファンディングでは目標額の128パーセントを達成されましたが、莫大なお金が集まったわけではありません。それにもかかわらず、『RADIATION』は非常にクオリティーの高いアルバムになっています。

個人でやっているからこそ、この金額で収まったというのはありますね。参加してくれた方へのギャランティーもそうですし、かかわる人が増えたらもっと必要だったと思います。スタジオを使うレコーディングには時間をかけられないので、最初にドラムとベースを1日で全部録ることにしたんです。それで、スタジオに入ったらすぐにOKテイクが録れるように先にライヴをして、身体を温めた状態で一週間後にドラムとベースを録って、そこから他の楽器を重ねていきました。

お金がかかるから今回ドラムは打ち込みにしよう…ではなくて、生のドラムをチョイスしたのは大正解だったと思います。

ドラマーの川口千里ちゃんは素晴らしいプレイヤーで、彼女のドラムで作るアルバムを 私自身も聴きたかったです。打ち込みならではの良さもありますけど、躍動感あふれるスー パープレイ炸裂で、やっぱりこだわってよかったです。フュージョン系の音楽は人間味や空気感が大事だと思うので。

『RADIATION』にパッケージされている生々しいグルーブは本当に魅力的です。では、アルバムを作ることを決めて曲を揃えていく中で、キーになった曲などはありましたか?

一番の推し曲は1曲目の「Spark」で、これは最新曲なんです。「Spark」を作った時はコロナ禍で家を出られないし、ライヴも全然できなかった頃で、みんながどんよりしている感じがすごく嫌だったんですよ。縮こまって生きているのがちょっと苦しくなって、もっと広いところを見たいと思った時に、すごく壮大な曲を書きたくなって宇宙をイメージしたんです。宇宙規模くらいで考えたら、今の状況はちょっとどうでも良くなってくるじゃないですか(笑)。宇宙をどんどん進んでいくようなイメージの明るい曲調で、“生きている中でこんなこともあるんだな…”みたいなことをかたちにしたくて書いた曲です。

「Spark」は狙いどおり、気持ちを引き上げてくれる曲に仕上がっています。始まりは穏やかですが、後半テンポが速くなってすごく盛り上がりますよね。

そう、“Spark”するんです(笑)。

まさに、そういうイメージです(笑)。そんな「Spark」もそうですが、堤さんが書かれる曲はキャッチーなメロディーも魅力になっています。

ありがとうございます。私は歌も好きですし、コーラスもよくやるので、そういうところが出ているんじゃないかと思いますね。私は歌えるものじゃないと弾けないというか。ソロを録る時もそうですけど、どんなに速いフレーズでも絶対に歌いながら弾いていて、聴いてくれる方が一緒に口ずさめるようなものを意識しています。やっぱりキャッチーなほうが聴いていて楽しいと思うんですよ。そうじゃなくても“玄人向け”と言われる界隈なので、少しでも広げたい気持ちもありますし。

堤さんのコンポーザーとしての魅力も味わえるアルバムといえますね。それに、楽曲や曲中のパートによって主旋律を奏でる楽器が変わるアプローチも秀逸です。

キーボーディストが作ると、ちょっと色彩豊かな感じになると思うんですよ。私自身、ピアノも、エレピも、オルガンも、シンセも弾くタイプなので、同じ楽器でずっと聴かせるというよりは、“このメロディーはこの楽器が合うんじゃないか?”という考え方になるんです。もとを正せば、そこはエレクトーンが関係していると思いますね。

いろいろな楽器がメロディーを奏でると楽曲がよりカラフルな印象になるということを実感しました。『RADIATION』良質な曲が並んでいて、例えば「misora」はノスタルジックな世界を巧みに表現されています。

「misora」を作ったのは5、6年前ですけど、この曲もちょっと面白いエピソードがあって、寝ている時に作ったんです(笑)。すごくきれいな草原を飛んでいる夢を見て、その脳内BGMがこの曲だったんです。それがすごく強烈に残っていて、夜中に起きて、とりあえず5線譜にメロディーと簡単なコードだけ書いて、また寝る…みたいな(笑)。それで、次の日の朝に5線譜を見て、ちゃんとアレンジして完成させました。

ミュージシャンは眠っている時やお風呂に入っている時にメロディーやアイディアが浮かぶことが多いという話をよく聴きます。

私もお風呂に入っている時に曲が降ってくることが多いです。だから、お風呂で書ける5線譜がすごく欲しい(笑)。絶対に覚えているはずと思っても、お風呂から上がったら“あれ?”みたいな。“ちょっと違う感じがする…”というようなことが多いから。絶対に手もとに紙とペンがないところで、そうなるんですよね。

そういう時に備えて、ヴォイスレコーダーやスマホを脱衣所に置いて入浴される方も多いようです(笑)。

あははは。それで、アイディアが浮かんだらすぐに歌うんですね?(笑) 私も降ってきたものはすぐ録るようにしていて、私のヴォイスメモはそういうものでいっぱいです。いつ使えるか分からないけど、思いついたメロディーの断片はもう数100パターンくらいあります。あとで気に入らなくなることも、いっぱいありますけどね。

OKMusic編集部

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