【転校生】疎外感や居場所がないとい
う感覚を
ずっと持ち続けていた
取材:土内 昇
私にとっての歌は感情です。曲はその時の感情を記憶するために。自分がここにいるのかを確認しています。
…と自分にとっての歌、曲を作って歌うことについて語ってくれた水本夏絵。彼女はずっとバンドで活動を続けてきたが解散を繰り返し、一時は音楽を続けることに限界を感じていたという。
私はバンドという音楽形態にとらわれていたのだと思います。地元のライヴハウスのブッキングの方から、“ひとりでライヴで出てみない?”と電話がかかってきた時、正直、目からウロコでした。で、ライヴまで1カ月しかなかったので、毎日毎日手探りでキーボードに曲を打ち込んで。無事に5曲作り上げた時に、“私ひとりだけでも音楽作れるんだ”って自信が持てたんです。
そして、気になるのが、やはり“転校生”というプロジェクト名だろう。
“転校生っぽい”と人から言われて、はっとした時があって。疎外感や居場所がないという感覚を私はずっと持ち続けていました。今まで一度も転校したことはないのですが。そう気付いた時、自分の存在を正当化してもいいような気がしたんです。私は“転校生”だったんだって。自分だけの部屋とかシェルターみたいな感覚です。
“疎外感や居場所がないという感覚”、それは楽曲に落とし込まれている。1stアルバム『転校生』には、そんな彼女の内面を曝け出したナイーブな楽曲が並んでいる。しかし、どんなにヘヴィで内省的であっても、希望が感じられるというか、それは“生きたい”という叫びのように感じられた。
“生きたい”というよりは“死にたくない”ですね。すぐ隣にいるのにじっと見ているだけで助けてはくれない…そういう傍観者のようなアルバムにしたかった。イメージしたのは、青春の灰色さ。
確かに“青春の灰色”を感じる作品だが、楽曲自体はポップでキャッチーなのが特徴的だ。
私は分かりやすく暗い曲というのが苦手で。基本的にポップでキャッチーなものが好きなので、重い歌詞だとしても自然とそういう曲調にしてしまいます。
同作でCDデビューとなる彼女に、今後どんな歌を歌っていきたいかを尋ねた。
笑いたいです。これまではずっと怒ってきたので。今すぐには無理かもしれないですが、敵だとか味方だとか無意味に戦おうせずに、笑って白旗あげてるような歌を歌いたいです。