ポップスのヴォーカル・トリオという
イメージを覆す英国時代の
ビー・ジーズの名盤『オデッサ』
日本のティーンエイジャーの
胸をかき乱した映画
『小さな恋のメロディー』に使われる
※ちなみに映画のラストシーンではCSN&Yの「ティーチ・ユア・チルドレン(原題:Teach Your Children)」(アルバム『デジャ・ヴ(原題:Déjà Vu)』('70)収録)が使用されている。だから、映画を観て、主演俳優に胸を熱く焦がした人たちはサウンドトラック盤を買いに走り、音楽に惹かれた人はビー・ジーズの『オデッサ』を買い求めたと思いたいのだが、当時、2枚組という中学生には敷居の高い価格帯でありながら日本で果たして売れたのかどうか? それでも1972年には初の来日公演が実現している。
※ビートルズの通称『ホワイトアルバム』が発売当時、日本盤は4,000円
白状すれば、筆者もビー・ジーズについては先述の映画『小さな恋のメロディー』のサントラやベスト盤で満足していた口だった。コラムで紹介すべく、この機会に『オデッサ』を相当な回数聴き込んだのだが、今やビー・ジーズに対する認識を新たにしている。
これは本当にすごいアルバムだ。今まできちんと向き合わずに来たことを反省している。彼らでしか生み出せないコーラス、個々のヴォーカルの素晴らしさ、メロディーメイカーとしての飛び抜けた能力は、60〜70年代のポピュラー音楽界屈指のものだと思う。バンド形態のロック全盛時代にあって、微妙なタイミングやズレによって、本作は熱烈なファンにのみ愛聴される盤になってしまった感があるのは惜しまれるが、これはまぎれもなく傑作と断言したい。2009年にはオリジナルの17曲にオルタネイトミックス、デモ音源などを加えたCD3枚組からなるデラックスエディションが限定発売されたほか、現在では音源配信でも聴くことができる。“ディスコ”のイメージを払拭するような、英国らしさが薫るこの時代のビー・ジーズをぜひ再評価してみてはいかがだろう。
TEXT:片山 明