トム・ジョンストンの
パワーが炸裂する
ドゥービーブラザーズの
『キャプテン・アンド・ミー』

『THE CAPTAIN AND ME』(‘73)/The Doobie Brothers

『THE CAPTAIN AND ME』(‘73)/The Doobie Brothers

「ロング・トレイン・ランニング」と「チャイナ・グローブ」の2曲は、ロックファンなら一度は聴いたことがあると思う。この2曲が収録されているのが、ドゥービーブラザーズの3rdアルバムとなる本作『キャプテン・アンド・ミー』である。のちに、健康上の理由で脱退を余儀なくされるトム・ジョンストンだが、この時はまだまだ絶好調だ。パワフルで黒っぽいヴォーカルと荒削りなギターワークは全開で、ウエストコーストロックの雄としてイーグルスと並び世界中を席巻した時期。前作『トゥールーズ・ストリート』からスタートするドゥービーブラザーズの第2期は、ツインギターとツインドラムの編成で、ハードなナンバーからフォーク(カントリー)ロックまでこなす正にウエストコーストを代表するグループであった。

スリーマイル島の原発事故と
ノー・ニュークス
(ミューズ・コンサート)

1979年3月、米ペンシルベニア州にあるスリーマイル島での原発事故は、世界に衝撃を与える重大な事件であった。この原発ではメルトダウンが起こり、放射能が周辺地域に漏れ出す結果を招いた。アメリカではこの事故の直前にメルトダウンの恐ろしさを描いた映画『チャイナ・シンドローム』(79年3月公開(日本では同年9月公開)。ジャック・レモンとジェーン・フォンダ主演)が公開されたばかりで、国民の原発への意識が高まろうとする最中であっただけに、反原発運動はあっと言う間に全米に広がっていく。

中でも、俳優やミュージシャンたちは熱心に反核・反原発運動を展開し、さまざまなイベントを繰り広げていた。アメリカ西海岸を中心に活動するミュージシャンたちが集結した『ノー・ニュークス(ミューズ・コンサート)』は、スリーマイル島の事故からわずか半年後にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催されることになる。1979年9月19日から5日間にわたって行われたこのコンサートは、ドゥービーブラザーズ、ジャクソン・ブラウン、ボニー・レイット、CS&N、ニコレット・ラーソン、ジェシ・コリン・ヤング、ジョン・ホール(オーリアンズ)、ポコといったウエストコーストロックを代表するアーティストのほか、ブルース・スプリングスティーン、ライ・クーダー、ジェームス・テイラー、カーリー・サイモン、チャカ・カーン、ギル・スコット・ヘロン、レイディオ、スイート・ハニー・イン・ザ・ロックなどの大物アーティストが参加した強力なイベントとなり、同年末に早くもリリースされたアルバムは3枚組のボリュームとなった。

余談だが、このレコードについていたブックレットには、原発の危険性についてはもちろん、原発施設の安全規則違反を訴えたカレン・シルクウッドが謎の交通事故死を遂げたシルクウッド事件(83年に映画化されている)にも触れており、当時興味深く読んだものである。

さて、このコンサートでオープニングとエンディングを務めたのがドゥービーブラザーズで、インターネットのない時代の日本人にとって、この時期の彼らがいかにビッグアーティストであったか、このアルバムのおかげで認識できたのだ。この時期のドゥービーブラザーズはマイク・マクドナルドがリーダーであり、いわゆるウエストコーストロックのバンドではなく、AOR寄りのアダルトグループに変わってしまっていただけに、トム・ジョンストンがリーダーシップを発揮していたかつてのドゥービーブラザーズを愛する者にとっては残念に感じたものだ。

では、ウエストコーストロック時代のドゥービーブラザーズとはどんなグループであっただろうか。

OKMusic編集部

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