哀感が染み渡る
エリック・アンダースンの
傑作中の傑作『ブルー・リバー』
シンガーソングライターのこと
と言いつつ、実はSSWマニアの間で語られるSSW系の音楽(日本に限ってであるが)が、そこそこジャンル化されているというのも事実である。筆者もSSWファン(マニアではないが)のひとりだから、そのあたり気になっているので、SSW系と呼ばれるジャンルの特徴を少し挙げてみる。「そんなに売れていないこと」「流行に左右されていないこと」「ブルースやカントリーなど、ルーツ系の音楽に影響されていること」など、このあたりがジャンルとしてのSSW系の定義になるだろうか。
そういう観点で、ニール・ヤングを例にすると、デビューから『ハーヴェスト』(’72)あたりまでは確実にSSW系の作品になるのだが、『アメリカン・スターズン・バーズ』(’77)以降になると、ドル箱スター的な扱いになっているので、もはやSSW系とは呼べないのではないか。ビリー・ジョエルやポール・サイモンは音楽性がポップス寄りなのでSSWではあってもSSW系ではない。同じような理由で、イギリスのエルトン・ジョンやキャット・スティーブンスもポップス感が強いので、どちらも除外。では、ジャクソン・ブラウンはどうだろう。彼の場合は初期の5枚はSSW系のど真ん中だが、初の全米1位となった『ホールド・アウト』(’80)からは音作りが売れ線になっているので対象を外れる。ボニー・レイットは初期のアルバムは完全にSSW系であるが、小原礼がサポートメンバーになる前の『ザ・グロウ』(’79)までがギリギリ許せる範囲か。
では、賛否はあるだろうが典型的なSSW系のアーティストを挙げてみよう。アメリカのアーティストでは、ロッド・テイラー、ロジャー・ティリスン、ボビー・チャールズ、ボブ・ニューワース、マーク・ベノ、ジム・パルト、エリック・カズ、ジェシ・デイビス、マイク・フィニガン(1枚目)、ドニー・フリッツ、デビッド・ブロンバーグなど。ここにガイ・クラークやジェリー・ジェフ・ウォーカー、タウンズ・ヴァン・ザント、テリー・アレンらのテキサス勢を加えてもOKだ。
カナダでは、ブルース・コバーン、マーレイ・マクロークラン、クリストファー・キーニー、イアン・タンブリン、トニー・コジネック、デビッド・ウィフェンらがSSW系アーティスト。イギリス勢では、ニック・ドレイク、ロジャー・モリス、マーク・エリントン、アーニー・グレアム、リチャード・トンプソン、チャス&デイブ、ブリン・ハワースなどが該当する。
マイク・フィニガンについては、1枚目の『マイク・フィニガン』(’76)はSSW系だが、2枚目の『ブラック&ホワイト』(’77)は完璧なAORである。このマイク・フィニガンや、そしてジャクソン・ブラウン、ニール・ヤングらの例でも分かるように、SSW系というジャンルは流動的(SSW系→AORに)になることが多いのも特徴と言えるかもしれない。例外はあるものの、70年代中期(パンクやAORの出現した頃)以降、SSW系はその多くがAORに吸収され激減する。その後、マリア・マッキー、ピーター・ケイス、シド・ストロー、ジョー・ヘンリーら、新世代のSSWたちが登場する80年代後半までSSW系は壊滅状態となるのである。