『馬の耳に念仏』/フェイセズ

『馬の耳に念仏』/フェイセズ

愛すべき飲んだくれR&Rバンド、
フェイセズの魅力が詰まった
『馬の耳に念仏』

愛すべき鍵盤プレイヤー、イアン・マクレガン。早すぎるその死を悼んで、彼がかつて参加していたフェイセズの代表作『馬の耳に念仏(原題:A Nod Is As Good As a Wink... to a Blind Horse)』を取り上げる。ジャケットからライヴ盤と勘違いされがちだけど、もちろんスタジオ・アルバムだ。

愛すべき鍵盤プレイヤー、
イアン・マクレガン

なんだか、いつも以上に物故者が多かったように思える今年(14年)のロック界。中でも12月3日、脳卒中の合併症で亡くなったイアン・マクレガンの訃報は世界中にいる多くのロック・ファンをより一層、悲しませたんじゃないか。69歳だった。
イアン・マクレガンと言えば、ブリティッシュロックを代表するバンド、スモール・フェイセズ/フェイセズのキーボード奏者、あるいはローリング・ストーンズのサポートメンバーとしてその名を知られているが、フェイセズ解散後、多くのセッションに参加してきたから、フェイセズやストーンズのファンではないというリスナーもどこかでマクレガンが奏でるゴキゲンなフレーズを耳にしているかもしれない。
セッションに参加してきたバンド/アーティストはボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、ストレイ・キャッツ、ポール・ウェラー、ジョン・メイヤーなどなど、実に幅広い。ベテランのみならず、声が掛かれば、どんな新人でも知る人ぞ知るアーティストでも演奏できる機会があるなら喜んで駆けつける――そんなイメージがある。フェイセズ解散後、マクレガンはセックス・ピストルズを抜けたグレン・マトロックが新たに結成したリッチ・キッズのデビューアルバム『Ghosts of Princes in Towers』とアルバムリリース後のツアーに(たぶんスモール・フェイセズの大ファンだったマトロックに乞われ)参加しているが、それがストーンズとほぼ同じ時期というところが面白い(ちなみにマトロックはそれから32年後、再結成したフェイセズにベーシストとして参加した。嬉しかったにちがいない)。マクレガンの死後、かつての盟友のみならず、共演を含め、彼と何らかの関わりがあった少なくない数のミュージシャンが哀悼の意を表した。きっと彼はロックンロールにゴキゲンな鍵盤のフレーズを加える腕前に加え、誰からも愛されるキャラクターの持ち主だったと言える。
看板シンガーを失ったスモール・フェイセズがジェフ・ベック・グループにいたロッド・スチュアート(Vo)とロン・ウッド(Gu)を迎え入れ、フェイセズとして再出発したのはご存知の通りだが、ふたりが加入するにあたっては、ロッドがフェイセズ加入前に作ったソロアルバムにマクレガンが参加していたこともきっと決め手のひとつになったにちがいない。

OKMusic編集部

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