ロバート・プラント&
アリソン・クラウスの
『レイジング・サンド』は、
スーパースターふたりによる
アメリカーナの傑作盤

『Raising Sand』(’07)/Robert Plant & Alison Krauss

『Raising Sand』(’07)/Robert Plant & Alison Krauss

グラミー賞の現役最多受賞者としてアメリカ音楽界に君臨するアリソン・クラウスと、レッド・ツェッペリンのリードヴォーカリストでブリティッシュロック界最高のシンガー、ロバート・プラントの共演した作品が今回紹介する『レイジング・サンド』である。クラウスが出ているからというわけではないが、このアルバムも第51回グラミー賞で5部門を受賞するという快挙を成し遂げた。
プロデュースを担当したのはT・ボーン・バーネット。アメリカのポピュラー音楽界において、ドン・ウォズと双璧を成すアメリカーナ音楽の超大物プロデューサーである。

ブルーグラス音楽のニューヒロイン

アメリカでは大物だけれど日本であまり知られていないアーティストと言えば、アリソン・クラウスがその最右翼だろう。その理由は、彼女がブルーグラス音楽のアーティストとしてデビューしたことによる。60年代〜70年代前半にかけて洋楽を聴いていた者にとって、ブルーグラスは身近に思える音楽であった。当時、ブルーグラスのグループが来日すれば大橋巨泉の『11PM』や今も続く『ミュージックフェア』に出演していたし、多くの若者が眠さをこらえながら毎晩聴いていた深夜放送でもよく取り上げられていたからだ。グレイトフル・デッド、イーグルス、ポコ、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドなどの人気グループもしばしばブルーグラス風のロックを演奏していた。

ところが、80年代にシンセポップやテクノが流行して以降、土臭い香りを持つ音楽は一掃されてしまい、日本では都会的なポップスでないと通用しない風潮になった。ブルース、フォーク、カントリー、オールドタイム、ブルーグラス、ジャグバンド音楽などを愛好する一部のアーティストやリスナーは生き残ってはいるが、絶対数が圧倒的に少なくなってしまった。アリソン・クラウスがブルーグラスの新人アーティストとしてデビューするのは1987年で、当時日本の若者で彼女に興味を抱いたのは大学のブルーグラス・サークルとそのOBぐらいかもしれない。僕が彼女のことを知ったのは、初のグラミー賞受賞作品となった『I’ve Got That Old Feeling』(‘90)で、センシティブで透明感あるヴォーカルとスタジオミュージシャンとしても通用するフィドルのテクニックは、ブルーグラスの新たな可能性を明確に感じた作品であった。

OKMusic編集部

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