スターの座を捨て、
自分の愛する音楽を追い求めた
英ロック界の永遠のヒーロー、
ロニー・レーン。
“スリム・チャンス”時代の名盤と
貴重音源をたっぷり網羅した
ボックスセット

病に蝕まれ、
身体の自由がきかなくなっても諦めない

本盤『エニィモア・フォー・エニィモア』、そしてよりルーツ色を強めた2nd作『スリム・チャンス(原題:Ronnie Lane's Slim Chance)』、3rd作『ワン・フォー・ザ・ロード(原題:One For The Road)』と、どれも甲乙付けがたい好盤を出していて、本当にどれを聴いていてもいい曲ばかりだし、温かな気持ちにさせられる。やりくりは火の車で、自分は安アパート暮らしであっても、自分のやりたい音楽を追求し、それを信念を持って長く続けていくこと。成功するって何なのか。好きな音楽を目指した先に、一体どんな夢が叶うというのか。ロニーや彼がスリム・チャンスの仲間たちと作ったアルバムを聴いていると、そんなことを思ってしまうのだ。

スリム・チャンスでの活動の後も、ロニーの人柄を慕ってか、友人たちは彼を見捨てない。旧友のロニー・ウッドやザ・フーのピート・タウンゼントらとコラボ作を制作したり、エリック・クラプトンとツアー(身分を隠し、ふたりでギターケースを開けて駅前でバスキングをしたこともあったらしい)をしたり。マイペースな活動を続けていたが、この頃に病を発症する。後には彼の命を奪うこの病は、じわじわと彼の体の自由を奪い、しゃべることにも支障をきたすようになるのだが、気丈に彼は振る舞い、晩年は念願の米テキサス州オースティンに移住して、恵まれた環境で気の合う仲間と音楽を続けたのだ。そして、ロニーは1997年6月4日に51歳の若さで帰らぬ人となる。多発性脳脊髄硬化症という今でも治療の困難な難病だった。晩年、奇跡的に実現した日本公演で病をおして車椅子でステージに出て、それでも精いっぱい歌い、ロック魂を示してくれた姿を思い出す。それは彼の最後になったツアーでもあった。

OKMusic編集部

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