サイケデリックロックに急接近した
マディ・ウォーターズの
『エレクトリック・マッド』
本作
『エレクトリック・マッド』について
レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズは「ブラック・ドッグ」のリフは本作『エレクトリック・マッド』の数曲から組み立てたとのちに語っているし、ジミヘンが本作でのコージーのギターに大きな影響を受けたことはよく知られており、ロックのアーティストやリスナーにとっては、本作が素晴らしい作品だという認識を持っている人間は多い。
アルバム収録曲は全部で8曲。基本的にハードロックの方法論で本作は組み立てられており、ウォーターズのボーカルはバックのサウンドに負けないぐらいのグルーブ感を醸し出している。アルバムのキモはピート・コージーのノイジーでシャープなギターワークと、サターフィールド&ジェニングスのタイトなリズムセクションにあり、特にコージーの独創性が光る「ハーバート・ハーパーズ・フリー・プレス・ニュース」(この曲はジミヘンのお気に入りのナンバーとしても知られている)や、ピアノとサックスが(もちろんギターも)ウネリまくる「トム・キャット」などはロックの拡張性を予見させる素晴らしい仕上がりとなっている。ストーンズの「夜をぶっとばせ(原題:Let’s Spend The Night Together)」のカバーも収録している。
なお、ウォーターズは本作のあと同じ面子で『アフター・ザ・レイン』(’69)をリリースしており、本作よりは少しおとなしい出来だがこちらも良い作品である。本作ともども世間での評価は二分される結果となったわけだが、この機会に自分の耳で聴いて判断してみてください。
TEXT:河崎直人