70’sアメリカンロックに
大きな影響を与えた
オールマン・ブラザーズ・バンドの
『アイドルワイルド・サウス』
本作
『アイドルワイルド・サウス』について
収録曲は7曲。「リバイバル」と「エリザベス・リードの追憶(原題:In Memory of Elizabeth Reed)」はディッキーの書いた曲で「リバイバル」には、途中で後の「ランブリンマン」を思わせるフレーズが登場する。インストの「エリザベス・リードの追憶」はラテンの香りがするオールマンの代表曲のひとつで、デュアンとディッキーの白熱したツインリードの他、全てのプレイが聴きものである。グレッグの書いた「キープ・ミー・ワンダリン(原題:Don’t Keep Me Wonderin’)」は、デュアンの粘っこいスライドとグレッグの黒っぽいヴォーカルが絶品のサザンロックになっている。マウスハープにはベリー・オークリーの友人、トム・ドゥーセットが客演している。
「ミッドナイト・ライダー」も彼らを代表する名曲のひとつで、多くのアーティストによってカバーされている。最も成功したのはカントリーチャートで6位となったウィリー・ネルソンによるものだろう。グレッグのアメリカーナ的なスタンスがよく分かるナンバーである。「フーチー・クーチー・マン」はマディ・ウォーターズのカバーで、ウィリー・ディクソン作。ディッキーとベリーのふたりが在籍したセカンド・カミング時代から演奏している曲で、あまり上手くないリードヴォーカルはベリーによるもの。マディのオリジナルと比べると倍くらいの速度になっているが、『アット・フィルモア・イースト』(’71)の1曲目の「ステイツボロ・ブルース」は「フーチー・クーチー・マン」のアレンジを参考にしていると思われる。
「プリーズ・コール・ホーム」のプロデュースはトム・ダウドではなく、ジャズ系のジョエル・ドーンが担当している。グレッグはジャクソン・ブラウンのセンチメンタルな「ジーズ・デイズ」をよく取り上げているが、グレッグはジャクソンを意識してこの曲を書いたのだろう。グレッグの初ソロアルバム『レイド・バック』(’73)に「ミッドナイト・ライダー」とともに収められている。
アルバムの最後を締め括るグレッグ作「マイ・ブルース・アット・ホーム(原題:Leave My Blues at Home)」はアーシーかつファンキーなナンバーで、よく練られたツイン・リードとグレッグのヴォーカルが素晴らしい。
ブルース色の濃いデビューアルバムと本作はどちらも秀作で、甲乙つけがたい仕上がりであるが、アメリカーナ的な性質をもつ本作のほうが、サザンロックの特徴がよく表れている。73年に1stと本作をカップリングした『ビギニングス』という2枚組アルバムがリリースされたが、単に2枚を合わせたものではなく、1stアルバムはトム・ダウドによるリミックスがなされている。
なお、アイドルワイルド・サウスというアルバムタイトルは、メイコンの人里離れた湖のほとりにあるバンガローの呼び名で、彼らはそこをレンタルし、リハーサルに使っていた。
TEXT:河崎直人